保育士が人手不足になってしまっている理由・原因。このせいで辞めたくても辞められなずにいる人も。

保育士の悩み

保育士として働いている人は、現場で「人が足りていない」と感じている人も多いのではないでしょうか。

「保育士が人手不足」という言葉を聞いて思わず、頷いてしまいますよね。

本記事ではなぜ、保育士の人手不足が深刻化していまうのか、厚生労働省が保育士の人手不足を改善する為にしていること等について紹介します。

保育士の人手不足が深刻に!?

保育士は仕事をしていると「もう少し余裕に保育士がいれば・・・」と感じる瞬間がありますよね。

待機児童の問題から、ニュース等でも話題となっていますが保育士の現場が人手不足が深刻です。

有効求人倍率から見る保育士不足の現状

現代、一般的な会社においても人手不足と言われていますが、保育士の人手不足は更に深刻。

厚生労働省平成29年度保育士の有効求人倍率の推移を参考すると、保育士の有効求人倍率が最も高い時期は2.76倍となっています。

全職種では高くても1.85倍。

そして、最新の保育士の有効求人倍率は、平成31年1月厚生労働省の「保育士確保集中取組キャンペーン」によると、平成30年11月時点で全国的には3.20倍。(東京都では6.44倍)

保育士の有効求人倍率と比較すると、保育士の人手不足が深刻さが分かります。

【参考】転職したい保育士に朗報。有効求人倍率から見る保育士の転職しやすさ

高い離職率と潜在保育士の増加

厚生労働省「保育士等に関する関係資料の保育所保育士採用者と離職者」によると、保育士の離職率は10.3%。

保育士になっても10人に1人は辞めてしまう

離職率が高いという事は、現場の保育士不足にも繋がります。

10人に1人は辞めてしまうという計算になりますが、実際はもっといるのではないでしょうか。

「なぜ離職率が高いのか」については以下の参考リンク記事で詳しく紹介しています。

【参考】保育士の離職率や仕事を辞める理由。

潜在保育士がかなり多い

他にも潜在保育士の問題です。

たとえば、保育士資格を取得する事ができる養成学校を卒業した人達の就職先。

【引用】厚生労働省「保育分野における人材不足の現状」

上記の図から分かる通り、半数近くの人が保育園以外に就職しています。

在学中に、保育士の仕事について学んだり、実習先で辛い思いをした人は保育士になりません。

そのため、現場にも新しい人材が入ってこないのです。

【参考】潜在保育士とは?復帰しない理由や、現状や復帰する不安要素、行われている研修などについて

保育士不足による待機児童問題や労働条件の悪化

保育士以外でも保育士不足が理由で、待機児童が増えて働きたくても働けない人が増加。

保育士は一人当たりの仕事量が増える、残業が増えるなどの問題が発生しています。

ただでさえ大変な保育士の仕事ですが、仕事が増えたり、残業が増えてしまうと「ここまでして保育士の仕事を続けたくない」と思ってしまう保育士もいるのです。

保育士不足のせいで、現場で働く保育士の負担も増え、更に保育士の働く環境は悪化しています。

保育士の人手不足はなぜ起こる?主な原因

保育士の現場で人手不足が起こる原因は、以下の通りです。

保育士の人手不足の原因(理由)

  1. 仕事量や仕事内容に対して給料が低い
  2. 子どもの命を預かる仕事という責任の重さや仕事内容の辛さ
  3. 長く勤めたとしても役職をもらう事が出来ない
  4. 出産後も働き続けることが困難な仕事
  5. 保護者とのトラブルによるストレスが大きい

以下、それぞれの項目について紹介します。

仕事量や仕事内容に対して給料が低い

保育士は、保育以外の事務仕事の量もかなり多いですよね。

たとえば、月案や1か月の計画や反省、行事の計画、そしてまた反省・・・。(園長は軽く目を通してハンコを押すだけ)

また、未だに「手書きの方が温かみがあって良い」としている保育園もあり、おたより制作や記録するのが本当に大変です。(パソコン記入であっても大変)

そして、問題なのは給料。

平成30年国税庁の民間給与実態統計調査によると、他業種女性正社員の平均年収は386万円。

厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は約357万9千円。

日々、保育という肉体労働に加え、膨大な記録の仕事をこなしているにも関わらず、一般的な女性の平均年収よりも給料が低いのです。

「子どもと遊んでいるだけに見えても実はかなり辛いんだから!」「こんな給料じゃ保育士なんてやりたいくない!」と保育士が仕事を辞めてしまってもおかしくありません。

これは、保育士の人手不足の原因の中でも最も大きな要因です。

【参考】保育士の手取りはどれくらい?額面から引かれすぎて13万円しかもらえないなんてことも

【参考】保育士の給料はいくらくらい?平均年収や月収、ボーナスまとめ

子どもの命を預かる仕事という責任の重さや仕事内容の辛さ

他人の子どもの命を預かり、集団生活の中で、怪我をさせないように気を配る精神力。

そして、8時間複数の子どもを相手にする労力(体力)。これらの2つが保育士へ与える負担はかなり大きいです。

保育園は家庭と違って大人の数が多いとはいえ、現場にいる職員には様々な人がいて、全員が100%の力で保育をしているとは限りません。

たとえ保育士全員が100%の力を出したとしても、保育士の仕事は「子どもの命を預かる仕事」だという事実や責任の重さは変わらないのです。

更に現場の人手不足も重なり、子ども一人一人の安全を守る為、保育士一人の負担が大きくなっています。

長く勤めたとしても役職をもらう事が出来ない

保育園の役職と言えば「園長」(副園長)(理事)「主任」。

上記の中で、現実的に保育士が役職を貰えるのは「主任」くらいです。

その主任の役職でさえ、長く勤めれば誰もが貰える役職ではありません。

長く勤めていても、どれだけ頑張っていても評価をされない可能性も高いので、段々、モチベーションも下がっていきます。

その為、「しっかり自分を役職や給料面で評価してくれる仕事をしたい」と思う人は、保育士を辞めてしまうのです。

【参考】主任保育士の役割とは。給料や手当、主任保育士の平均年齢はどれくらい?

出産後も続けていくことが困難

保育士のほとんどが女性。(男性は1割程度)

保育園の中には、先輩から順に「結婚・産休・育休をとる」という暗黙の了解が存在している保育園もあると聞きます。

特に、保育士の人数が少ない・ギリギリでやっている保育園は、1人が産休・育休に入る事で残された保育士の負担が増えてしまうので「産休・育休がとりにくい」環境です。(職員が産休中に新しい職員を入れる事も経営的にも厳しい、指導する人材や時間等環境的にも難しい)

たとえ産休・育休が取れたとしても、保育士の勤務はシフト制。

シフト制は、突発的な休みがとりにくいです。

保育士は「一人担任」や「早番のみが行う業務」など、特殊な業務形態なので、急な早退や休みに対応することが難しい仕事。

しかし、子どもは急に体調を崩してしまう事もあります。

たとえば、出勤の朝に子どもが急に熱を出してしまった場合。しかも運が悪く早番の日。

朝早くに主任に連絡をし、他の職員に早番を変わってもらうのは、かなり申し訳ない事なのです。(精神的にストレス)

仕方がないことだとは言え、変わった職員も「ほんとは10時出勤だったのに、いきなり7時出勤になったら迷惑」と思ってしまいます。

上記の事から、幼い子どもを育てる女性にとっては、働きづらい環境とも言えます。

実際に、保育士が離職する理由で最も多い理由は「結婚・出産」です。

【参考】保育士が産休・育休をとるために知っておきたいこと。取りにくい保育園も正直あるの?

保護者とのトラブルなどストレスが大きい

保育園に子どもを通わせる保護者の中には、様々な保護者がいます。

時には「モンスターペアレント」が紛れている事も・・・。

筆者の保育士友達は、一生懸命真面目に仕事をしていましたが、クラス担任を持つ保護者の中にモンスターペアレントがいた時は、精神的に辛かったようで、その時期はかなり痩せてしまい、トラブル対応に悩んでいました。

保護者とのトラブルにならないように、言葉の使い方や表情。

細心の注意が必要なので、ストレスが大きいです。

「先生」と呼ばれる仕事はどうしても、保護者とのトラブルを避ける為に精神を擦り減らしてしまいます。

そういうストレスが限界で次々と保育士が辞めてしまい、保育園が人手不足になるケースも多いです。

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実際に人手不足が原因で現場で働く保育士はストレスを感じている

上記でも触れた通り、「人手不足=1人あたりの仕事の負担が増える」ので、人手不足により現場で働く保育士のストレスを増大させます。

たとえば、人手不足によって現場の保育士がストレスとなる例が、以下の通りです。

人手不足のために現場の保育士が抱えるストレス

  • 保育中にトイレ休憩さえ行けない(認可保育園では子どもに対する保育士の配置基準を常に守らなければならない)
  • 大勢の子どもを一人で見なければいけない場面が多々ある・・・
  • 一人あたりの事務仕事の量が増える
  • 有給が使えない、自分に代わって保育に充てる保育士がいない状態
  • 病気で休んでしまう場合、人が足りない状態で保育しなくてはならないなど

保育の現場では、当然子どもの命を守る事、現場の安全が第一優先。

人手不足の保育園では、なんとか、ギリギリやっている状態なので「仕事中、気兼ねなくトイレに行ったり、ちょっとお茶を飲んで一息つく時間さえない」のです。

実際に筆者が以前勤めていた保育園では、仕事中にトイレ休憩など取れませんでした。

保育士人手不足が原因で、保育士の仕事を辞めずに働き続けている保育士にも、身近なところで影響を与えているのです。

人手不足だから辞めたくても辞められない保育士もいる?

「仕事が辛い、辞めたい」と園長に相談しても「新しい人が入ってくるまでは辞められません」と言われたことがある保育士もいるのではないでしょうか。

実際に筆者の保育士友達も「辞めたいなら、新しい人紹介してから」と無茶な事を言われて悩んでいました。

他にも半年前から「年度末に辞めたい」と相談していて、その時点では了承してもらえたのに、年度末になり「もう一人年配の保育士が辞めるから、あと1年だけ頑張って」と言われて、仕方なく働いている保育士友達もいます。

保育士は、人手不足が原因で辞めたいのに、辞めさせてもらえないことが実際にあるのです。

これは労働基準法に違反していますよね。

しかし、保育士は責任感が強く「困っているなら仕方ない」と保育園の為に働く保育士が多く、悩んでいる人もいます。

【参考】保育士の仕事の辛いことや辞めたいと思った時に考えること。

【参考】保育士1年目で辞めたいと思う理由や対処法。しんどいなら転職したっていい。

保育士の人手不足を改善する為、厚生労働省が施行した対策方法とは?

近年は待機児童の問題を改善するために、保育園施設が沢山建てられました。

しかし、保育園の働き手が不足している場合、保育園は運営出来ません。

そのため、厚生労働省も待機児童の改善の為、保育士不足解消のために様々な政策を打ち出しています。

たとえば、「保育士不足を止める為・これから保育士を増やす為」に、厚生労働省が施行した政策等は、以下の通りです。

厚生労働省が施行した対策方法

  • 保育士の処遇改善制度
  • 保育士の役職を増やすキャリアアップ制度
  • 保育士として働く場合に受けられる宿舎借り上げ制度
  • 保育士資格取得する人に助成金を出す
  • 小規模保育園の受け入れを増やす

上記の他にも、数年前に話題になった「無資格保育士」。

話題になった当時は「資格が無くても保育士出来るなら資格を取った人の立場は?」「専門性のある仕事。知識が無い人が保育士をして子どもの安全は保てる?」等の声もありましたね。

しかし、今では資格なく働く人の存在(保育補助や保育支援員)があるおかげで、現場の保育士の仕事も助かっているでしょう。

上記のそれぞれの項目については、ここで説明しきれません。

気になる方は以下の参考リンク先を読んでみてくださいね。

【参考】保育士の処遇改善手当とはなに?実際にいくら貰えるの?

【参考】保育士がキャリアアップするメリットや、キャリアアップする為に行う具体的なこととは?

【参考】保育士の家賃補助。住宅手当や寮・社宅・宿舎借り上げ制度について詳しく解説

【参考】保育補助の仕事とは?資格が必要な保育士との違いや仕事内容。

【参考】小規模保育園とは?保育士が働くメリットとデメリットや給料など

今後改善するべき問題点

保育士と一般女性との収入差を埋める、事務仕事の軽減、保育士の責任負担を減らす、子育てしている女性が働きやすい環境作り(休みの取りやすさや働く時間帯の自由度高める)等、さらに保育士の働く環境が良くなれば、潜在保育士の現場復帰やこれから保育士として働く人も増えていくでしょう。

保育士の働く環境、問題点もあるけど少しずつ改善している

上記で触れた通り、保育士の働く環境を改善するために、国が動いているのは確かです。

実際に都心の保育園の求人を見ると「宿舎借り上げ制度8万円~」「完全週休2日制」「有給消化率100%」等、かなり好条件の求人が揃っています。

しかし、「保育士の働く環境が良くなっている」のは、待機児童の問題が深刻化している都心部中心の話。

地方で保育士をする人や待機児童の問題が深刻ではない地域の保育士は実感できていません。

これから、地方で働く保育士にとっても働くやすい環境が整っていき、保育士業界全体が働くやすい環境になると良いですね。

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