保育士の手取りはどれくらい?額面から引かれすぎて13万円しかもらえないなんてことも

保育士の労働条件

最近は処遇改善など国の政策もあり、保育士の給与は徐々に上がっています。

しかし額面上は給与が上がっていても「手取りは全く上がった気がしない」と不満に思う保育士も多いはずです。

では実際、給与から何が引かれていいるのでしょうか。

本記事では保育士の給与から何が引かれているのか、どうして引かれてしまうのかなど詳しく紹介します。

額面上は18万円なのに手取りは13万円しかない、引かれる内訳は?

実際に、筆者も保育士として4年の経験があります。

額面上は17万や18万円程でしたが、実際の手取りは13万円程度でした。

支給合計額が18万5千円から実際に筆者が引かれていた内訳は以下の通りです。

項目 引かれる金額
健康保険料 9,225円
厚生年金 16,470円
雇用保険 554円
所得税 3,270円
住民税 6,500円
昼食代 4,000円
親睦会費 2,500円
合計金額 42,519円

185,000円から42,519円を引くと139,112円、これが手取りになります。

18万円となっていたものがここまで色々引かれると、かなり少なく感じますが、実際にこのような手取りの保育士も多いです。

なんで13万円になっちゃうの?

では給料からはどういったものが引かれてしまうのでしょうか。

答えは、健康保険料や厚生年金でかなりの額が引かれてしまうからです。

しかし、この健康保険や厚生年金などは必ず払わなくてはいけないものです。

むしろフルタイムで働いているのにこれが引かれていないと、保育園は法律違反をしていることになります。

フルタイムで働く場合に、どうしても引かれてしまうお金

上記で紹介触れた項目の中でも必ず支払わなければいけないものは、以下の通りです。

フルタイムで働く場合に必ず引かれるもの

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険
  • 所得税
  • 住民税

上記の項目は保育士だけでなく、どの職種の人でも給与から引かれるお金です。

健康保険料 

病院に行くと、結構お金かかるよね~。5千円とか1万円とかさ。病院にいくときって「いくらかかるんだろ」ってそわそわするよね。

それでも自分が受けた医療費の一部しか支払っていないんだよ~。もし全額ってなったら5万円とか10万円近く払わなきゃいけないの。健康保険って有難いね。

健康保険料を払う理由は、自分が医療にかかるお金の負担を少なくするためです。

会社に雇われていて、定められた時間以上の勤務をする人は必ず加入しなければなりません。

病院に行くときに健康保険証をもっていきますよね。その健康保険証に関わるお金です。

健康保険料とは、健康保険制度というものがあり、国の医療保険に加入し、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することが目的。

この医療保険に加入しているから、病院に行っても一部の負担金※を支払うだけで医療が受けられるのです。

※一部負担金とは・・・かかった費用の原則3割

もし加入していない場合は医療を受けて会計をする時、かなり高いお金を払わなくてはいけません。

正直、健康保険に加入していても病院のお会計時に「高い」と感じることもあります。

もし10割負担になってしまったら・・・怪我や病気をしていても病院に行くことができませんね。

この健康保険制度があるおかげで医療保険に加入することができ、病気や怪我をしても医療機関に行って治療してもらうことができるのです。

標準報酬月額×保険料率=ひと月あたりの健康保険料
※標準報酬月額・・・月給の平均した金額

ちなみに健康保険料は事業との折半なので、保育園(事業)が半分の額を支払ってくれています。

半分支払ってくれているとしても、給料から1万円(一人ひとりの収入に応じて保険料を納める金額が異なる)近くは減ってしまうのでかなり大きいですよね。

厚生年金保険料

厚生年金保険料を払う理由は、65歳以降(原則)に公的年金を受け取るとるためです。

厚生年期保険料とは日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方が払います。

他にも以下の条件に当てはまる人は年金を支払うことが決まっているのです。

厚生年期保険料を支払う条件

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が1年以上の見込みがある
  • 賃金の月額は8,8円以上
  • 学生でないこと
  • 常時501人以上の企業に勤めている

厚生年金保険料の計算は以下の通りです。

標準報酬月額×18.3%=厚生年金保険料
※参考:「厚生年金保険料額表」厚生年金保険料率は18.3%。

若い人達の中には自分達が「年金払いたくない」と思う人も最近では多いですが、年金は法律で加入することが義務づけられているので「支払わない」という選択肢はないのです。

雇用保険料

雇用保険とは、被保険者の生活を守るためにある保険

そして会社に雇われている人が加入することになります。

他にも雇用保険に加入していると以下の手当てを受け取ることができます。

雇用保険に加入している受けられる手当

  • 失業保険
  • 育児休業
  • 介護休業
  • 教育訓練

失業保険や育児休業などは身近なものですよね。

賃金の総額×保険料率=雇用保険料
※保険料率・・・保育士の場合は0.3%(事業主は0.6%)

たとえば年間収入が295万円の場合の計算は295×0.3=8,850円、それを12か月で割ると約738円なので毎月738円払います。

所得税

所得税とは、わかりやすく言うと1年間の所得にかけられる税金のことです。

収入が高ければ高いほど、所得税も上がっていきます。

そして、覚えておきたいのは所得と収入の違いです。

収入というのはもらったお金ですが、所得というのは経費を引いて残ったお金が所得になります。

所得税の計算方法は以下の通りです。

(年収-各種控除)×税率-控除額=所得税

たとえば年収300万円、社会保険料50万円とした場合、給与所得控除108万円で基礎控除が38万円となり、課税所得は192万円で税額は以下のとおりになります。

(300万円(年収)-50万円(社会保険料控除)-108万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除))×0.1(10%)-52,000円(控除額)=52,000円

これを12か月で割って毎月払っていくのでということになります。

ちなみにアルバイトやパートの方は収入が給料以外にないので、年間収入が103万円いかなら所得税がかかりません。

住民税

住んでるだけでお金がかかるなんて。なんか悔しい。

住民税を払ってるから古くなった駅舎を直したり、道路を直したりできるんだよ。

住民税は都道府県、市町村に収める地方税です。住民税の中には2種類あり、同府県民税と市町村民税があります。

住民税は都道府県によって、また市町村によって金額が多少異なりますが大体同じくらいです。

東京都と千代田区の場合の税率は東京都に払う税率が4%、千代田区に払う税率6%ということになりますね。

住民税の計算は以下の通りです。

(年収-各種控除)×0.1(10%)+均等割=住民税

均等割りは都道府県及び市区町村によって、およそ5,000円から6,500円です。

では年収300万円、社会保険料が50万円の人で計算してみましょう。

(300万円(年収)-50万円(社会保険料控除)-108万円(給与所得控除)-33万円(基礎控除))×0.1(10%)+5,000円(均等割)=114,000円

※均等割額とは・・・同じ自治体に住む納税者が同額を納税する額

共済掛金

保育士でいう共済掛金とは退職金の共済です。

退職金は義務づけられていないので、保育園によってはこの共済掛金はありません。

退職金の共済に入ると、職員と保育園(事業主)と折半で掛金を支払うことになります。

保育園自体の資金が少ない場合など、退職金制度を導入していないのです。

共済掛金は、保育園によって異なります。

退職金の有無は求人または就業規則に記載されています。

【参考】保育士の退職金の相場は?退職金なしの保育園も多い?

昼食代

昼食代は、その名の通り、自分が昼に食事にかかるお金。

保育園によっても異なりますが、筆者の元職場の保育園の場合は1食分250円と決められており、それを出勤した日数分かかるという形でした。

たとえば筆者のように1日の給食代250円、1か月の出勤日数が20日だった場合の計算は以下の通りです。

250(円)×20(日)=5,000(円)

この計算は自分でも簡単にできるのでわかりやすいですね。毎月5千円近く払うとなると結構大きな出費です。

保育園によってはこの給食費を福利厚生とし、給料からは引かれない形にしている場合もあります。

親睦会費

親睦会費とは、職員同士の親睦を深めるために使われるお金です。

たとえば、職員の誰かが結婚や出産した場合に、親睦会費からお祝い金を出したり、新年会や忘年会などの時に支払う食事代に充てたりするお金になります。

ちなみに、筆者の元職場の保育園は親睦会費として毎月2,500円引かれていました。

親睦会費は保育園によって金額が異なります。

保育園によって対応は異なりますが、年度末に親睦会費の残高が余っていたら返金してくれる場合もあります。
しかし大抵の場合は翌年に繰り上げられます。

「親睦会費を払いたくない」と思ったときに親睦会からの脱会は可能ですが、現実的ではありません。

年齢別手取り計算早見表

上記で給与から引かれる内訳について紹介しましたが、もっと気になるのは実際に自分の手元に入ってくる手取りが知りたいですよね。

厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査から算出した保育士の年齢別平均月収から手取りを計算すると以下の通りになります。

年齢 額面給与額 社会保険料等引いた額 毎月手取り額
20~24歳 20万6千円 165,914円 157,914円
25~29歳 22万6千円 181.352円 173,352円
30~34歳 23万7千円 188,724円 180,724円
35~39歳 24万3千円 194,078円 186,078円
※社会保険料等引いた額は、住民税や所得税を差し引いた金額
※毎月手取額は、社会保険料等引いた額から給食費・親睦会費(2,500円)・おやつ代(1,500円)差し引いた額

実際の手取り額の結果を見ると、額面上の数字とのギャップを感じるのは、筆者だけではないはずです。

とはいえ、他業種であっても健康保険や厚生年金などで毎月35,000円は引かれてしまうので、保育士だから沢山引かれているということはありません。

ただ給食費や親睦会費、保育園によっては事務所のおやつ代を毎月払うところもあります。

筆者の元職場でもおやつ代として毎月1,500円徴収されていました。こういったものは保育士特有ですね。

また最近では、二人に一人が奨学金を借りていると言われています。

そのため20代であればまだ奨学金の返済をしている人がいるかもしれませんね。

奨学金の返済を毎月2~3万円していたとしたら約15万円の給与じゃ全然足りない・・・と感じている人も多いのではないでしょうか。

【参考】保育士の給料はいくらくらい?平均年収や月収、ボーナスまとめ

【参考】保育士の平均貯金額、実際どれくらい貯めることができる?

月給別手取り早見表

上記は年齢別ですが、保育士1年目は2年目の人は額面給与20万円もない方もいますよね。

次は給与別の手取りを計算すると以下の通りになります。

額面給与額 社会保険等引いた額 毎月手取り額
18万円 145,202円 137,202円
20万円 160,560円 152,560円
23万円 182,443円 174,443円
25万円 197,881円 189,881円
30万円 237,620円 229,620円
※社会保険料等引いた額は、住民税や所得税を差し引いた金額※毎月手取額は、社会保険料等引いた額から給食費・親睦会費(2,500円)・おやつ代(1,500円)差し引いた額

額面18万円の保育園って地方だと得に多いですが、その場合だと手取りは13万円しかないなんてことになるのです。

手取りがこれしかないのですから「国家資格をとってこれしかもらえないの」「子どもの命を守る責任の重さに対してこの給料ならやってられない」と不満に思い、保育士を辞める人が多いのです。

手取りも少なく生活も厳しい。保育士は一人暮らしはできない?

先ほど触れた通り、何かと引かれてしまうので手取りがかなり寂しい金額になってしまう保育士も多いのではないでしょうか。

たとえば20代なら奨学金も返して実家に生活費を入れたり、高いスマホの料金を払って遊びに行くお金も必要・・・となると一人暮らしなんかできないと思う保育士も多いでしょう。

実際に筆者の職場にいた独身保育士の10人中8人は実家暮らしでした。

20代だけでなく、30代や40代でも独身の人は実家暮らしだったのです。

それは筆者の保育園が珍しいのではなく、保育士の人であれば独身の人は実家暮らしというのはよく耳にする話ですよね。

確かに先ほどの表を見ていたら、ひとり暮らしをすることを考えるとカツカツな生活しかできないことは目に見えています。

13万円や15万円の中から家賃や光熱費、食費を引いてしまったら自由に使えるお金は殆ど残らないでしょう。

それなら実家暮らしでお金の余裕があるながら生活する方が良いですよね。

まとめ

額面上では十分に思えても実際の手取りとはかなりのギャップがあります。

20代ではあまり感じなくても、30代の収入を他業種と比べると圧倒的に少ないですよね。

せっかく大学で学んでも、独学で資格をとっても給与が少なかったら虚しく感じてしまいます。

他にも子どもの命を預かる責任ある仕事、それに加えて毎日残業、精神的にも肉体的にも大変な仕事なのですからもっと給与が上がらないと保育士の離職は止められません。

これからも保育士という仕事はさらに必要性が増していきます。

保育士にとって働きやすい環境、条件が整っていくと良いですね。

 

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