保育士は有給休暇が取れなくて当たり前?みんなどれくらいとっている?

保育士の労働条件

保育園は基本的に仕事をしている保護者が子どもを預けるところです。そのため幼稚園のように「夏休みに有給休暇をとる」といったタイミングがなかなかありません。

そして保護者の中でも様々な仕事をしている方がいるので、世間的には大型連休でも保護者から保育の希望が沢山あれば保育園をあけて保育することもあります。

それでは保育士は有給休暇をとれているのでしょうか。

有給休暇を取れない保育園で働いた場合のデメリット「そもそも有給休暇の法律ではどうなっているのか」など本記事では詳しく紹介していきます。

保育士の有給取得。取れない、取りにくいのが当たり前?

体調不良による有給取得は比較的に言いやすいのですが「旅行に行きたいので一週間ほど有給休暇ください」というのは保育園の雰囲気のよっては言いにくいかもしれません。

とはいえ体調不良以外でも、リフレッシュのために心置きなく有給休暇とりたいですよね。

人手が足りない保育園の場合は、誰かが休むとその分を誰かがそれを補うことになります。そのため有給休暇をとる時にはどうしても周りの先生を気にしてしまいます。

以下では保育士の有休取得日数を他業種と比較し、さらに詳しく紹介していきます。

保育士の有給休暇取得日数

まずは正規職員の有給休暇の平均取得日数です。

平成29年6月に公表された全国保育協議会員の実態調査報告書2016年の資料によると、保育の全体では「3日~6日」の有休取得日数の割合が最も高い結果になっています。

有給休暇

データからわかるように、公営の保育園に比べて民間が運営している保育園の有給休暇取得日数はより少なくなっているのもわかります。

※公設公営保育園とは国や市区町村、自治体が設置し設置者が運営する保育園

※公設民営保育園とは国や市区町村、自治体が設置し民間企業が運営する保育園

民間になるほど有給はとりにくく約5割は9日未満、4人に1人は7日以下という結果がでてるね~。

なんでだろう?

公立であれば保育士が足りなくなる場合は、求人を出してその都度適性な人数を確保するため、人数が安定しているので有給取得もしやすい環境があるのでしょう。

公務員保育士になりたい人なら沢山いるでしょうから、すぐに規定の人数は集まりますよね。

次に施設職種別の正規職員の有給休暇の最も高い割合を占めている平均取得日数は下記の通りです。

有給休暇2

たとえば小規模保育事業だと確かに10~15日の人の割合が多いですが、2日以内という人も多く格差が大きいですね。また小規模保育事業を除くと施設による差はそこまでないのです。

他業種の平均有給取得日数との比較

そもそも他業種の平均有給取得日数が、どれくらいなのかを知らないと保育士の有休休暇取得日数が多いのか少ないのかわかりません。

平成31年厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、他業種の平均有給取得日数は9.4日となっています。

では保育士の有給休暇取得日数はどの程度でしょうか。上記で紹介したデータを元に算出すると8.7日程度です。

最も日数が低い業種が宿泊業・飲食サービス業で5.2日であり、それに比べると多い状況ではありますが、他業種に比べると若干低い傾向にあることがわかります。

ただ有給休暇がとりやすいかどうかは保育園次第。取りやすいところであれば100%取得できるというところも少なくありません。

有給休暇が取れるかどうかは働きやすさに直結しますから、取りやすい保育園で働くことはとても大切なことでしょう。

ただし1年で数日しか取れない人も多い

データで見ると6日以内という人が多く3日、4日しかとれない人も少なくない割合でいます。

記事の冒頭でも述べましたが、保育園には夏休みや冬休みなどの大型連休がありません。主に仕事をしていて家庭での保育が十分にできない保護者の方が預ける施設です。

ある意味では仕方のないことですが、そもそも保育士には休みが少ないのに有給も取りにくいとなると体と気持ちの面でもかなり厳しいですよね。

主任などだんだん上の役職になると全体への指示があるので休むと皆に迷惑がかかってしまう…と思う方や一人担任だと休むタイミングが無いと感じる方もいます。

他にも保育園の雰囲気や暗黙のルールがあり、1年のうちに数日しか取れないなんていう人は多いです。

ちなみに私が働いていた園では

筆者も以前保育士として働いていました。

例えばお盆休みの話です。連休があると一人暮らしの方は地方に帰省して家族で過ごしたいですよね。

筆者の元職場のお盆については園長から有給として休みをとるなら良いと言われ、中には有給を使って休みをとる人もいました。

私の元職場はフルタイムで働く職員の数が足りなくてもベテランのパートの方が職場に沢山在職し、現場の人手不足を補ってくださっていたから有給を好きなときに取れたのです。

しかし、有給を取りやすい職場内であっても筆者の同期は複数担任で「組んでる他の先輩の先生が有給を全くとらないから自分だけだと休みづらい」と言っていました。

保育園の勤務形態だけの問題ではなく、職員の中でも有給をとりやすい雰囲気は大事です。

つまり有給取得の取りやすさの鍵となるのは「人数」と「雰囲気」ということですね。

そもそも有給休暇とは?

こないだ「フェスに行きたいので有給使いたいです」って言ったら、

「人が少ないし緊急を要しないなら有給をあげるの難しい」って主任に言われちゃった…いつもそう言われて全然有給とれないよ~。

え~有給って労働者の権利だよね!?有給1回も取らせてくれないの?

ブラックな保育園なのかな…でもそもそも私もどんな法律なのかよくわからない…。

有給休暇の法律について何も知らないと職場の上司が間違っていても、何を主張して良いのかわかりません。

だからこそまずは自分自身が有給休暇とはそもそもどういう制度なのかをしっかり知っておく必要があります。下記でさらに詳しい法律の内容を紹介します。

有給休暇について定めている法律

有給休暇とは労働者が申請して取得する休暇日で、使用者から賃金が支払われる休暇日のことです。労働基準法第39条でも以下のように表記されています。

業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法第39条)。

使用者は有給休暇を与えるのは義務であり、権利なのです。

また前項目で有給休暇は賃金が支払われる休暇日と述べましたが、有給休暇に対して支払われる賃金は決まっています。下記の3パターンがあります。

  1. 労働基準法で定める平均賃金
  2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法の定める標準報酬日額に相当する金額

※ただし就業規則などに明確に規定しておく必要があり、上記の3番に関しては労使協定を締結する必要があります。

殆どの場合は2番で有給を使った月でも「欠勤していない月」と同じ基本給が支払われます。

また「うちの会社は皆有給休暇とってないから有給とるのは無理」なんてことを言うとんでもないブラック企業があるみたいですが、それは完全にこの法律を違反しています。しかし法律で定めさらえていても、有給を取らせてくれないブラック企業もあるのが実情です。

有給休暇の付与日数

では有給休暇は勤続年数に応じてどれくらい増えていくのでしょうか。

ちなみに有給休暇はその最低付与日数まで、法律で定められています。一般の労働者(フルタイム勤務)の付与日数は以下の通りです。

継続勤務年数 0.5 1.5 2.5 3.5
付与日数 10 11 12 14

以上のように勤務年数を重ねると増えていきます。

なお入社半年以内では付与が義務付けられておらず、多くの保育園では半年たったタイミングで初めて付与されることになります。

えー知らなかった…私も一応10日あるんだね。1日くらい、いや3日くらいは使いたいなぁ。

「3日くらいは…」なんて言ってると勿体ないよ!10日分取得できる権利があるってことなんだから、有給休暇使わないと

しかし、実際には取得できる有給全てを使いきるのは難しいかもしれません。

とはいえやはり忙しい時期が済んだら「土日と有給を使って連日ゆっくり休みたい」と誰でも思いますよね。

勤務日数の少ないパートにも付与される

先ほど紹介した法律でも定められているように、正職や臨職に関わらず、パートの場合にもこの年次有給休暇は適応されます。

先ほどの厚生労働省からの引用文にも「パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して」と明記されています。

先ほどの労働基準法39条で週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の付与とあるように、例えば同じ職場に3.5年勤めていて週3回、1日4時間勤務で働いている場合、169日~216日の間に10日の有給休暇を取得できます。

ちなみに以下の厚生労働省の表から見ると約半年の中でも8日は有給休暇を取得できるのです。

【引用】厚生労働省 週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数 表

さらに補足すると週に30時間未満かつ、週に4日以下または1年のうち48日~216日働いてる人なら有給休暇をとる権利があります。

へぇ~!私のお母さんパートで働いてるんだけど「休みとったらお給料減るから」って言ってたけど一応有給とれるんだ!いつも一生懸命働いてるんだし、教えてあげないと~!

このパートでも有給がとれるってことを知らない人も多いんじゃ!?

まぁいくら法律でもうちの職場の雰囲気では切り出しづらいか…。

フルタイム勤務をしている人よりは減りますが、パートでも有給が取得できるのです。とはいえ職場の体制や雰囲気によっては結局有給を取りづらい、という実情があります。

有給休暇の時効、取らなければ2年で消滅する

有給休暇は2年以内なら繰り越しができます。

しかし時効があり、有給休暇が付与されてから2年が経つと消滅してしまいます(ただし企業によってはその時効を伸ばしているところもあります)。

たとえば2019年4月1日に入社した場合で考えてみましょう。

有給休暇はまず2019年10月1日に10日間付与されます。その有給休暇を使わずにとっておいた場合、そのの10日分は2021年9月30日消滅してしまうのです。

有給休暇取得の拒否はできない

私の保育園の同期が「有給使いたい」って主任に言ったら「どうしてか説明して」って言われて「頭痛いんで」って言ったら「診断書をもってきて」って言われてんだって。

本来であれば理由はなんでもいいはずなのに!

先ほども述べましたが使用者は労働者に対して有給休暇を取らせる義務、取らせる権利があるのです。

有給休暇を取得する際に理由を必要以上に求められたり、理由によって判断されることがあってはいけません、またそれは違法なのです。

また「有給を取ったことで園長や主任から責められる」「有給をとったんだからこの仕事しといてね」というようなことがあった場合、労働基準法附則第136条「年次有給休暇の取得に対する不利益尚取扱いの禁止」とあるため、それも違法なので許されません。

時季変更権について

有給休暇は法律上、労働者が自由に取ることができますが例外もあります。

例えば同一時期に多数の労働者が休暇を希望し、事業の正常な運営を妨げる場合は使用者に時季変更権があります。

以下は厚生労働省の「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」からの引用です。

使用者は、時季指定に当たっては労働者の意見を聴取しなければなりませんし、労働者の希望に沿った取得時期になるよう、聴取した意見を尊重するように努めなければいけません。

時季指定を行う場合は就業規則に記載しないと違法です。使用者は決して時季指定権があるからといって権利を濫用はしてはいけません。

あくまで違う日に変更、時効によって消滅させるようなことは認められないのです。

有給休暇が取りにくい保育園で働くことによるデメリット

有給休暇がとりにくい保育園で働くと友人と旅行に行くこともできませんし、そもそも休んでも給料が支払われるのであれば休みたいですよね。

また休みの日も壁面制作をしていたり、翌週の保育に使うための保育材料の買い出しをしていませんか。

有給休暇が取りづらい上に休みも少ない環境に「保育士が有給とれないのは当然」と諦めてしまったり、考えることを辞めて現状に流されていても誰も解決してくれません。

実際に有給が取れない保育園で働いているとどのようなデメリットがあるのかを以下の項目で挙げていきます。

あなたが被る損害額

たとえば1年で10日分消滅すると、いくら損することになるのでしょうか。

あなたが日給1万円なら1年間10万円分ただ働きしたことになり、さらに10年経ってしまうと100万円分もただ働きするということになってしまうのです。

悲しすぎる…休めないうえに1年間で10万の損って…このままだったら10年後の私、なんであの時思い切って転職しなかったんだろうって後悔しそう。

そうだね…もはや「うちの園は仕方ない」じゃすまされない話だね。もっと友達と旅行も行きたいし、それにただ働きなんてしてられないよ!危なかった~、気づいてよかったね。

長い目で考えると大きな額になっていく上に、過ぎ去ったあなたの時間はもう二度と戻ってきません。

心身ともにリフレッシュできない

ただでさえ休みが少ない保育士というお仕事です。保育園によっては土曜日は隔週出勤で、週に1日しか休みが場合もあります。

平日できなかった家事をこなしていたらあっという間の日が暮れてしまった…なんてこと皆さんも経験したことがあると思います。

休みがないと身体が疲れてしまうのは勿論のこと、休みがあるから「目の前の仕事を終わらせよう!」と思えたり、充実したプライベートの時間を過ごしたからこそ「よしっ仕事頑張ろう!」と思えますよね。

心身ともにリフレッシュしてまた仕事をすると意欲も効率も上がって保育園側にとっても良いことなはずです。

5日取得の義務化、少しは改善される?

労働基準法が改正し、2019年4月から年10日以上有給休暇の権利がある従業員は5日の取得が義務化されました。

正式名所は「年次有給休暇の時季指定義務」です。(参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

例を挙げると、入社日2019年4月1日入社と仮定すると2019年10月1日に10日の有給休暇を付与され、2019年10月1日から2020年9月30日までに使用者は5日年休を労働者に取得させなくてはいけないのです。(労働基準法第120条)

時期指定についてもし違反した場合は雇用者は30万以下の罰金があります。(労働基準法第39条第7項)

使用者による時季指定を行う場合(労働基準法第120条)には就業規則に記載していないと30万以下の罰金になります。(労働基準法89条)

そして労働者が請求する時季に所定の有給休暇を与えなかった場合(労働基準法第119条)は、6か月以下の懲役または30万以下の罰金があります。(労働基準法39条第7項を除く)

上記のように使用者に対して罰則が科せられることがあるため、少しは取れる日数が増える可能性があります。

「年5日の有給休暇の確実な取得」と法律改正が取り上げられても、ブラック企業は色々な手で潜り抜けようとしてしまうかもしれません。

ただし、お盆等を有給で取得するような保育園の場合は、すでに5日の有給休暇の取得がお盆休みでできているのでこれ以上とれない場合もでてきます。

有給休暇が取りにくい保育園で働いているなら転職を検討しよう

「保育士という仕事を選んだ以上仕方がない」そう思って保育園に勤められている方も多いです。

しかし有給休暇をとれない原因は保育士という仕事ではなく、職場なのです。

実際に、環境が違うだけで有給を使って有意義な休暇を過ごしている保育士もいます。

「有給はとれないものだ」と諦める前にまずは転職して自分の理想の働き方を探してみてはいかがでしょうか。

有給が取りやすい保育園はたくさんある

先ほどのデータからわかるように4割は10日以上取れているということは、保育士の有給休暇取得状況はそこまで悪くはないのです。保育園の中には全消化できる保育園もあります。

保育士1年目や2年目の人は「保育士って有給がとれないものなんだ」と決めつけて諦めてしまう人もいますが、有給を取りやすい保育園は意外と沢山あるのです。

取りにくい保育園で主任や園長、周りの先生に気まずい思いをして有給とるなら転職した方がいいね、だって我慢している時間がもったいない!

仕事を変えないで職場を変えるだけで有給が取りやすくなります。

保育士は超売り手市場

記事内でも何度も述べていますが保育士はかなり不足しており、有効求人倍率も高いのでかなり転職しやすい状況です。

有給以外でも条件が良くなってきている、例えば以下のような好条件があります。

  • 年間休日125日以上
  • 福利厚生が充実
  • 家賃補助や賞与の待遇が充実

上記で述べた以外でも保育士確保競争率が激戦している東京などでは、さらに良い好条件の保育園もあります。

有給休暇が取りやすい保育園の特徴

まずは就職する前に求人票を見ていると「有給消化率100%」など有給消化率の記載がある保育園があります。

求人票に記載できるくらいですから、有給が取りやすい環境なんだな、ということが読み取れると思います。

他にも有給が取りやすい保育園には以下のような特徴が挙げられます。

  • 職場の人数が十分に足りている
  • 園長先生の考え方自体が「有休は使いましょう」という方針
  • 職場内の雰囲気

「職場の人数が十分に足りている」ということは、働きやすい職場だから職員が辞めないからとも捉えることができますね。

そういった場合、働きやす職場というのは週休2日制、給料が高いなどその他の労働条件も良いということが考えれます。

実際有給休暇を使う上で1番大切なのは「職場内の雰囲気」です。

有給休暇の申請をすると上司が嫌な顔をしたり、同僚に謝ったりしないとけないというような気持ちの面での負担が多いと有給休暇を取ることに躊躇してしまいます。

それは保育園に限らず、他の職種でも言えることですよね。特に上司や先輩が取っていると安心して取りやすいです。

ちなみに先ほども触れましたが、筆者の元職場のベテラン保育士の人達は好きな歌手のライブ、一週間の家族旅行など有給休暇を使って皆がそれぞれ休んでいました。

また時には職場の仲良し3人で同じ日にライブ行こうと打ち合わせをしていたりと、自由に有給を使っていたんです。

しかも理由は参観日や家族のことでもなくリフレッシュのための休暇です。

仕事のためにプライベートを諦めなくていいんだと思い、若手の人達も安心して有給休暇を取得できました。

【参考】初めての転職は不安。保育士の転職の流れや注意点を事前に確認しよう

最後に

「保育士になったんだから有給は諦めよう」と当然のように考えていた人もいると思います。

しかし実際は有給を取りやすい保育園も沢山あります。同じ保育士として働いていても有給休暇をもらえているのです。

また環境を変えただけで有給休暇をとって旅行も実現できるのですから、簡単に諦めてしまったらもったいないですよ。

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