保育園の園長の給料・年収はいくら?園長の役割や仕事内容までを詳しく紹介

保育士の労働条件

保育士として働き続けることを考えた時「自分も長く勤めたら、主任や園長の役職になれるのかな」「園長ってどうやったらなれるんだろう」と気になっている保育士もいるでしょう。

しかし、園長の仕事内容や年収などについては、一緒に働いている保育士でさえ把握することはできません。

本記事では、園長の年収相場や「どうやったら園長になれるか」など、園長について紹介します。

園長の給料の相場はいくら?

厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査によると、平均年齢の36.8歳の保育士、平均勤続年数8.1年とすると平均年収は約357万9千円という結果があります。

他業種と比較すると「給料が低い」と言われている保育業界ですが、園長の給料はどれくらいなのでしょうか。

運営主体別から見る園長の給料

平成29年6月全国保育協議会会員の実態調査報告書を参考にして園長も給料を紹介していきます。

上記でも公設公営、民設民営については触れましたが、全国保育協議会の実態調査による、運営主体別、園長の給料は以下の図の通りです。

上記の図をまとめると以下の通りです。

運営主体別 園長の平均給与額
公設公営 613,5万円
公設民営 557,8万円
民設民営 597,6万円
全体 599,7万円

【引用】平成29年6月全国保育協議会会員の実態調査報告書

私立に比べると、公設公営つまり公立保育園の場合の方が平均年収は高くなっており、600万円をこえています。700万円以上という人も約1割、無回を除くと23%、約4人に1人もいるという結果です。

一方で私立(公設民営、民設民営)は公立ほど高くはなく、平均550万円から600万円程度。

無回答を除いた年収600万円超えの割合は公設民営が約35%、民設民営が約46%と半数以下です(公立の場合の600万超えの割合は43%)。

ただ一般的な保育士の平均年収は前述した通りおよそ358万円(平均年齢36.8歳、平均勤続年数8.1年)ですから、それに比べれば1.5倍以上とかなり高い年収。

初任給から比べると倍以上にもなりますね。

参考:保育士の年収はいくら?平均年収・月収・ボーナスまとめ

保育施設によって園長の給料も変わる

保育施設別、給料は以下の図の通りです。

上記の図をまとめると以下の通りです。

施設種類 園長の平均給与額
認可保育所 599,2万円
幼保連携型認定こども園 614,9万円
保育所認定こども園 573,9万円
小規模保育園 474,4万円
全体 599,7万円

実態調査を参考にすると、保育施設の種類では全体のうち88.4%が認可保育所となっています。

認可保育所、幼保連携型認定こども園、保育所型認定こども園に関してはそこまで大きな差がみられないものの、小規模保育事業のみ年収500万円未満の割合が高く(無回答を除くと67%)なっています。

大型の保育園でも小規模の保育園でも基本的に園長は一人。当然負担が少ないのは小規模保育園であり、その分年収も低めになっています。

他業種との比較すると園長の年収ってどうなの?

平成30年国税庁の民間給与実態統計調査によると、給与所得者全体の年齢別平均年収は以下の通りになります。

年齢 平均年収
35~39歳 448万円
40~44歳 476万円
45~49歳 502万円
50~54歳 529万円
55~59歳 520万円
60~64歳 416万円
65~69歳 326万円

園長の平均年収はおよそ600万円です。

上記の図を参考にすると、どの年齢でも平均を超えていますから特別低いというわけではありません。

しかし、園長というのは誰もがなれる役職ではありませんよね。

世襲でない限り、なるためにはそれなりの難易度があります。

そこで他業種の園長クラスの役職についている人と比較してみることにしましょう。

平成30年厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると「男女合計・役職が部長」の場合の年齢別年収は以下の通りです。

年齢 平均年収
45~49歳 838万8千円
50~54歳 913万8千円
55~59歳 908万5千円
60~64歳  835万円
65~69歳 819万6千円
70歳~ 1053万5千円

一般企業で働く「45~49歳部長」の時点で年収は約839万円です。

他業種と言っても様々な業界があるので差はありますが、役職がある人と比べると他業種と比較した場合は「保育園の園長の年収は低い」ということになります。

どれくらい勤めれば園長になれる?

勿論、保育園によって異なりますが「保育士としてどれくらい働いたら園長になれるのか」気になっている保育士も多いでしょう。

以下、先ほどの全国保育協議会会員の実態調査から引用した、保育施設別園長の勤続年数に関する図です。

上記の図をまとめると以下の通りです。

施設種類 園長の平均勤続年数
認可保育所 24.9年
幼保連携型認定こども園 22.8年
保育所認定こども園 23.1年
小規模保育園 12.6年
全体 24.7年

上記の表からも分かる通り、保育施設全体から見る園長の平均勤続年数は約24年。

小規模保育園に勤めた場合12.6年と他の保育施設よりも短めですが、基本的には20年以上は勤めていないと園長にはなれないという事ですね。

保育園の園長の役割

保育園の顔となる園長は責任重大です。

園長は、子どもを預ける保護者や働く保育士の信頼してもらえるような存在でなければいけません。

たとえば保護者が子どもを保育園に預けようとした時、初めて見学する時や入園する際も園長とのやり取りがあるので、園長の人柄が保育園の印象を決めてしまうといっても過言ではありません。

保護者の場合、保育サービスの充実は勿論、他にも「どんな園長なのか」ということを重要視しています。

具体的には「信頼して子どもを預けられる園長かどうか」「保育園をしっかり管理しているのかどうか」気になるでしょう。

次に保育士の場合は働く上で「園長と保育方針が合うかどうか」で働きやすさは変わりますし、生活がかかっているのでいい加減な園長の元で働くのは嫌ですよね。

園長は、保育園に通う子どもや保護者、職員の全体のことを考えなければいけないのです。

そして園長は保育園全体の代表、責任者です。

たとえば保育園で不祥事が起きた時は、保育園の職員を代表して園長が保護者に説明会を開いて説明しなくてはいけません。

最近保育園の事故等が起きた際に大勢の記者の前で、保育園の園長が会見を開いているニュースがいくつかありました。

他にも災害や不審者の侵入など、緊急事態が起こった場合には、全体へ指示をするのも園長の役割ですから、園長には判断力や行動力が求められます。

保育園の園長の仕事内容

それでは具体的に園長はどんな仕事をしているのでしょうか。

園長の仕事内容は以下の通りです。

園長の仕事内容

  1. 行政・地域・他園等の外部とのやり取り
  2. 園の予算計画や事業計画
  3. 人事・採用活動
  4. 行事・保護者会・会議の出席
  5. 保育士の指導やシフト管理
  6. 書類の確認(最終チェック)
  7. 保護者対応(クレームや相談)
  8. 安全管理
  9. 給食や検食の衛生管理
  10. クラスの子どもの把握

保育士として働いたことがある人は「確かに園長先生してるな~」という内容だったでしょう。

他にも平成27年に処遇改善加算がありましたよね。

処遇改善のような保育士業界で新しい政策等があると、園長として当然把握しておかなければならなりません。

園長は理解するために沢山の資料を読んだり、行政とやり取りをして手続きをします。

園長に求められる能力とは

園長に求められる能力は大きく3つあります。

園長にもとめられる能力

  1. コミュニケーション
  2. リーダーシップ
  3. 保育に対する知識

以下それぞれの能力について紹介していきます。

コミュニケーション

まず園長に求められるのは「コミュニケーション能力です。

園長は先ほども紹介した通り保護者と直接やり取りをしたり、行事では大勢の前で挨拶をすることがあります。

「人見知りで話すの苦手だからパス・・・」と言って行事で挨拶しないなんてことはできませんよね。

また保護者以外にも保育園に勤める保育士1人ひとりと面談や指導するのも園長の仕事なので、園長にはコミュニケーション能力が必要でしょう。

リーダーシップ

次に「リーダシップ」です。

リーダシップとは、園長は指導者として職員全体の統率力、保育士のモチベーションを維持できるように励ます、問題があった場合は解決に努めるなど行動力を持って「全体を引っ張っていく・全体をまとめる力」のことを言います。

園長は保育園全体のリーダーであり「保育園に関わる人達をそれぞれまとめる役割」を担うので、当然リーダーシップの能力も必要なのです。

保育に関するの知識

最後に「保育に関する知識」です。

保育の知識がないからといって園長になれないわけではありません。

しかしある程度保育の知識がないと、保育士や保護者からも信頼を得られない可能性があるのです。

たとえば先ほども触れた通り、園長は保育士に指導します。

現場で働く保育士に何か指導した時「園長は〇〇って言ってるけど保育のこと何も知らないくせに」など不満に思う保育士がでてくるかもしれません。

保育士は指導受ける際に現場経験もなく、専門的な知識もない人から指導や助言をされても心から素直に意見を受け入れようという気持ちにはなれないですよね。

上記のようなことを避けるためにも園長として最低限の「保育の知識」はあった方が良いでしょう。

園長になる上で必要な資格や保育士としての経験年数

公立保育園と私立の保育園によって園長になる方法が少し違います。

公立保育園の園長になる場合は、公立保育園に就職する時点で「保育士資格」が必要です。

他にも公立保育園で働く保育士は地方公務員(公務員保育士)なので、公務員試験を受けます。

一方、私立保育園の場合は保育士資格や実務経験がなくても、園長になることができます。

ただし誰でも園長になれる訳ではありません。

私立保育園の場合は、運営側の団体法人から配属された人が園長になることもあるので、上記のケースに当てはまります。

上記の場合以外は公立・私立も同様、経験年数が上がり、主任などの役職に就いた後に園長になる昇格試験を受け、自治体から承認を得てようやく園長になります。

そして園長になるためには資格だけでなく経験年数も必要で、一般的には「実務経験が10年以上あること」が園長の条件です。

しかし、長く勤めているだけでは園長になれないこともあります。

たとえば私立保育園で家族経営の場合(園長や主任が家族関係にあるなど)、後継ぎとして園長の役職を継ぐのは親族や子どもです。

他にも上位で触れた通り、現場で長く働く保育士には関係なく、運営側の団体法人から配属された人が園長になるこ場合もあります。

園長によって保育園の雰囲気が決まる

先ほど触れた通り、保育園の信頼性を得る上でも重要な役割がありますが、保育園の雰囲気を左右するのも園長です。

園長が「どんな雰囲気の保育園を望んでいるのか」によって、保育園での過ごし方、保護者や子どもへの接し方などを指導するので、保育士の意識も園長に寄っていきます。

たとえば「和気あいあいとした話しやすい、アットホームな保育園」を作りたいと思ったら、それに合わせた指導をしますよね。

園長の表情や雰囲気、発言は働く保育士や子ども達を通わせている保護者にとっても影響が大きいのです。

以下の参考記事は保育士目線から見た嫌われる園長についてまとめた記事です。

もしこの記事を読んでいるあなたが園長なら、園長を目指している保育士なら「自分が保育士だったらどんな園長の元で働きたいか」と考えるだけでも大分違うでしょう。

「保育士側の気持ちを想像するのが難しい」と感じる場合に参考にしてみてくださいね。

【参考】保育士から嫌われる園長の特徴とむかつく時の対処法

保育士として長く働くなら園長を目指そう

本記事の内容をざっくりまとめると以下の通りです。

本記事のまとめ

  • 公立保育園の常勤園長の年収が713万円(公立の園長が最も収入が高い)
  • 保育園の園長の収入は他業種に比べて低い
  • 公立保育園の園長になるには保育士資格取得・公務員試験を受ける必要がある
  • 私立保育園の園長は例外的に無資格・現場経験なしでもOK
  • 園長になるなら一般的には10年の現場経験と昇格試験を受け、自治体に承認してもらう

他にも「今の保育園で園長になりたい」と思っている人は、本記事を踏まえて、需要ポイントが2つあります。

  1. 公立なのか・私立なのかという
  2. 私立の場合は「自園長が園長になるまでの経緯や歴史」を知る

上記で判断して「このままでは園長にはなれないな」と分かった場合は、公務員保育士になる場合は年齢制限等があるので、早めに決断することをおすすめします。

「公立保育園に勤める」「保育士から園長になった経緯のある私立保育園に勤める」など次のステップを考えましょう。

【参考】保育士が初めて転職する際に知っておくべき転職の流れ・期間・心構え・準備

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