保育士の仕事をしている人は何に対してストレスを感じているのでしょうか。
保育士の仕事に限らずストレスを感じてしまうのは仕方がないことです。
しかし「これにストレス感じてるのって自分だけ?」と思うと、それがまた辛い時ってありますよね。
本記事では保育士が感じているストレスランキングやストレス解消法について紹介します。
保育士のストレスに関する論文を紹介
保育士のストレスに関して調査している論文があります。
平成23年11月東京大学准教授神谷哲司、鳥取大学教授杉山隆一、大阪教育大学教授戸田有一、帝京大学教授村山祐一による「保育線のおける雇用環境と保育者のストレス反応」の論文では保育士のストレスについて述べられており、この論文では実際に150保育園、50子育て支援センターのそれぞれの園長や保育者等に調査を依頼したものです。
簡単に論文の内容を説明すると、論文には保育士のストレスに対して以下のような記載があります。
保育士のストレスの原因となる3因子
- 切迫・疲労感
- 評価懸念
- 孤立感
「わかるような、わからないような・・・」という感じですよね。
上記の保育士のストレスの原因となる3因子に関して、論文の中で以下のように触れています。
切迫・疲労感
「忙しく思うような保育ができていない」「体の疲れ」
評価懸念
「親の目が気になる」「同僚や上司の目が気になる」と言った大人の視点
孤立感
「相談できる人が園にいない」「他の保育者に理解されずストレスを感じる」
そして上記のストレス因子は雇用形態からも影響があり、非常勤保育士やパートよりも正社員保育士の方がストレス度が高いと感じているという結果が出ています。
確かに正社員保育士は非常勤保育士よりも責任のある仕事を任されることがありますよね。
逆に本来は正社員保育士であっても人手不足のために非常勤保育士にも関わらず、正社員保育士と同じ仕事をするという状況にある保育園もあります。
ストレスランキング一覧。ストレスの原因とは
上記の論文を更に身近に例えると、自分のストレスの原因が見えてくるかもしれません。
保育士のストレスを感じる原因はどこにあるのでしょうか。
論文の内容を踏まえながら、一般的な保育士が抱えるストレスランキング一覧は以下の通りです。
- 職場が劣悪な労働環境
- 保育士を取り巻く人間関係
- 保育中とにかく余裕がない
- 子どもに対してイライラしてしまう
- 保育士として働くことで身体が疲れてしまう
- 仕事の悩みを抱えること自体がストレス
上記を読んで想像するだけで疲れますよね。
保育士として働いている人は「そうそう」と当てはまる人も多いのではないでしょうか。
以下、それぞれ項目を詳しく紹介します。
職場の劣悪な労働環境が原因
ブラック保育園で働いていたらそりゃストレス溜まる。
たとえば以下に当てはまるブラック保育園があります。
- 給料が低い
- 仕事量が異常
- サービス残業が多い
- 保育士が足りないのに求人を出さない
保育士の仕事は子どもの命を預かる仕事。
一部屋に20人ほどの子どもがいて、それぞれが予測できない動きをしている子ども達の安全に配慮しながら、保育をするのは簡単なことではありません。
そのうえ上記に挙げたような「給料が低い」「サービス残業が多い」となると、ストレスを感じない方が難しいですよね。
他にも明らかに一人に対する仕事量が多いのにも関わらず求人を出さないなど、現場の保育士の負担が一向に減らない状況の保育園もあるでしょう。
劣悪な職場環境にストレスを抱えている保育士も少なくはありません。
【参考】ブラック保育園の特徴や見分け方、残業代はしっかり出てる?有給休暇はとれる?
【参考】保育士の手取りはどれくらい?額面から引かれすぎて13万円しかもらえないなんてことも
保育士を取り巻く人間関係にストレスを感じる
保育士って常に評価される立場にあって気が抜けない。
人間関係に対してストレスを感じている人も多いですよね。
筆者の保育士友達の多くも仕事に対してというよりは人間関係で悩む人の方が多かったかもしれません。
実際に平成26年3月東京都保育士実態調査のアンケート調査によると、保育士の退職理由の中でも上位に挙がっているのが人間関係です。
保育士を取り巻く人間関係は以下の通りです。
- 上司や主任保育士
- 一緒に働く保育士(同僚)
- 保護者
子どもだけを相手に遊んでいるだけなら頑張れますが、そうではありません。
以下、それぞれの項目ごとにストレスを紹介します。
保育観の合わない園長や主任保育士
職場内の上下関係にもストレスを感じている保育士もいるかもしれませんね。
また園長や主任保育士は主に保育園運営のための事務仕事をしていたり、他の仕事があるため保育に入ることがあまりありません。
園長に関しては保育に入るのはかなり珍しく、殆どいないのではないでしょうか。
普段保育に入らない人にぐちぐちと保育に関してケチをつけられると正直ストレスが溜まりますよね。
「現場への指示出し」は上司の仕事でもありますが、そこで働く保育士の声も聞いてほしいです。
そして世の中には悪い園長だけではなく子どものため、そして働く保育士を気遣ってくれる素敵な園長もいます。
それを知っているからこそ「私の園長はなんなの?」とむかつきますよね。
複数担任になると気を使う・・・
複数担任は何をするにも、まずは皆で「話合い」「決定」「役割分担」をしないと実行に移せません。
また冒頭で紹介した保育士のストレスに関しての論文中にもありましたが、勤務時間中複数担任間や保育士不同視でクラスの状況、子ども達の様子についてゆっくり話合う時間がないですよね。
「〇〇ちゃんはもっとこうしたら上手く対応できるかも」「あれ試してみる?」などの改善点を話し合う時間があれば日々の保育ももっと円滑になるはずです。
当然、保育中に話す機会はなく、休憩時間であっても「連絡帳が書き終えることができない」「事務仕事が終わらない」と思い、休憩時間でさえも話す時間は取れません。
そして相談できる機会もないまま現場の状況が改善されないので、それがストレスになりますよね。
【参考】保育士の職場は悪口の絶えない?悪口だらけの職場で人間関係に疲れた時の対処法
【参考】保育士の人間関係はめんどくさい?最悪で辞めたいと思うほど辛い時の対処法は?
保護者からの評価を気にしてしまう
最近は「保育士が子どもに対する虐待」のニュースも話題になりました。
保育士は「園長や上司、同僚からの評価」の他にも「保護者からの目」があります。
私自分の保育について親達はどう見ているんだろう」と気になってしまうことありませんか。
たとえば最近は、保護者が家庭で子どもをみる感覚で保育園に対してクレームをいったり、無理難題な要求をしてくることも珍しくはありません。
最近ではSNSでも「保育士の子どもの扱い」等について敏感になっていますよね。
家庭環境における保育と集団生活という場における保育は異なるのに対し、家庭同等の対応を求められるのは保育士も辛いのです。
保育園でも一人ひとりの子どもに対して丁寧に愛情を持って接することが勿論良いとされていますが、人手不足な保育園、決められた時間内に子どもに食事や遊び・睡眠を働きかけること、また集団生活それらの保育士を取り巻く環境からそこまで手が回らない現状も多々あります。
たとえば保育中疲れて集中力が切れてしまった瞬間、子どもに少しきつく叱ってしまった時・・・丁度のタイミングで保護者がお迎えに来てそんな場面を見られてしまうこともありますよね。
「保護者に誤解されたのではないか」「いつもああやっている訳ではないのに・・・」と保護者からの目を気にしてしまうのです。
保育園で対応できることには限界があると伝わらない時、また常に保護者の目が自分に向けられていることに対してストレスを感じてしまいます。
保育中とにかく余裕がない
集中力がずっと続くわけないんだから、保育士も昼休憩までにそれぞれ10分休憩くれればいいよね。2時間に1回とか。
確かに。保育中余裕が欲しいよね。常に時間に追われ、目の前の子どもの対応に追われている・・・。
冒頭で紹介した保育士のストレスに対する論文の中にも以下のような記載があります。
労働環境が悪化していく中で、「もっとゆとりをもって保育にあたりたい」と思うことが「よくある」「ときどきある」とする保育者が全体の9割を超えている
殆どの保育士が「保育中、余裕がない」と感じているのではないでしょうか。
実際に論文中の調査を受けた9割の保育士が「もっとゆとりを持って保育にあたりたい」と回答しています。
そして現場の保育士は「保育中追い立てられるようにして仕事をしている」という感覚を感じているのです。
余裕がなく切迫感や疲労感を感じながら「忙しくて思うような保育ができない」「もっと本当はこうしてあげたいけど」という気持ちで保育をするのはとても辛く、ストレスを感じます。
子どもに対してイライラしてしまう
1人の子どもならまだいける気がする。でもクラスに20人近くいる子どもを一人、子どもの年齢によっては複数だったとしても辛い。見きれない。
現場の保育士はそれが普通だけど実際、無理だよね。
子どもに対してイライラしてしまい、ストレスを感じることも多いです。
しかし仕事として子どもと関わっているので、適当に関わることはできません。
また最近では虐待のニュース等があるので、さらに気持ちを引き締めて仕事をしている保育士の人も多いでしょう。
たとえば以下のようなことで悩み、ストレスを感じています。
- 気になる子どもに上手く対応できない
- 子どもに必要な援助が分からない
- 自分の知識が不足していること
本やネットで調べても、自分が悩んでいる子どもの対応に対してのベストな答えを見つけることが難しいですよね。
「いつも落ち着きがない子に対してどのように接したら良いのか」とネットで調べて試してみても事例が実際とは異なるので「上手くいかない」と悩み、解決しないことに対するイライラ。
「解決したい」と思っていても気軽に専門的に指導してくれる人がいない現場。
また上記で説明したように余裕がなく、子どもに対して自分のベストが尽くせない若手保育士も多いです。
8時間の勤務のうち、全て保育に入るのではなく1時間や2時間だけでも事務に充てることができたら子どもとの関わりにも余裕がうまれる気がします。
保育士として働くことで身体が疲れてしまう
保育士は休憩時間以外の勤務中、座る機会がありません。
常に動いています。
他にも重たいものを持つことも多く、肉体的に疲れを感じてしまう時、ありませんか。
筆者も保育士の頃は毎日子どもの食事部屋のテーブルを運んで移動するたびに「他の仕事ならこんな重たい物持たなくて済むのに」と思っていました。
乳児クラスを担当した時は散歩カーに子どもを入れる時は他にも2歳児の18人の乳児クラスを担当した時は、毎日の散歩が辛かったです。
その年の2歳児は良く食べる体格の良い子が揃い、「1人あたり平均12キロある子どもを何人も持ち上げて散歩カーの中へおろす」という一時的な仕事でありながら、腰への負担が最悪な仕事をする時は毎日「今日も散歩嫌だな」と考えるだけでストレスでした。
そして保育士の職業病ともいえる慢性的な腰痛や肩こりを抱えながら、動いたり重たい物を持つ保育士の仕事に身体が疲れてストレスが溜まるのです。
【参考】保育士あるある、もはや職業病ということも多いのでは?
【参考】保育士の職業病「腰痛」の対策や予防法、労災への適用条件等を解説
仕事の悩みを抱えること自体が・・・
いつどこにいても仕事のことが頭から離れない。買い物する時も親とか子どもいないかヒヤヒヤするし、家に帰っても仕事だし。
仕事のこと忘れられないの辛い。
保育士は毎日勤務時間が変わるので、家でも勤務表を確認したり、自宅で持ち帰った仕事をしたり、1日中仕事のことを考えてしまいがちですよね。
仕事中も家に帰ってきてからも仕事について考えて、悩んでいる保育士は多いです。
「他の仕事なら家に帰ってきたら仕事のこと忘れられるのかも~」と思うと「なんでこんなに仕事のことで悩まないといけないんだ」と仕事のことを考えているだけでストレスを感じる時ってありますよね。
ストレスは上手に発散しよう。ストレス対策方法とは
たとえば「仕事がストレスだからニートになる」というのはストレス発散というよりは現実逃避ですよね。
「仕事はストレスだけど、ストレス発散してまた仕事頑張れる状態にする」というのが上手なストレス発散です。
ストレスを上手に発散できていない人は、ストレスを上手に発散する方法を見つけて取り組んでみましょう。
頑張りすぎなくて良い、無理しないで仕事をする
頑張りすぎ、良くない。ほどほどで良し。
自分のことは自分で守る。
「自分で自分にストレスを与えている」という場合はあります。
たとえば「保育士は〇〇でなければいけない」「私は〇〇すべき」など自分に対して要求の難易度が高い人です。
また向上心がある・責任感がある・完璧主義などの性格の人は「最近自分頑張りすぎかも」「無理してるかも」と自分の状態を確認しましょう。
大事な仕事はいくつかあるので、それは優先的に終わらせながら「手を抜く日を作る」「仕事は来週に後回しにする」など自分の状態に合わせながら仕事をした方が良いです。
たとえば壁面制作の力の入れ具合を加減したり、常識の範囲以内であれば子ども達の制作も「前の月は手の込んだもの作ったから今月はちょっとすみません」というのもたまにあっても良いのではないでしょうか。
保育中は余裕がないことは仕方ないですが、普段は心に余裕を持っていないと辛くなります。
周りからの要求が多すぎる場合も、周りが求めている自分になろうとせず「自分は自分のベストを尽くすのみ」とマイペースにいくことも時には必要です。
好きなことをする、自分のために時間を使う
体を動かすか、心を満たすか。
皆いいな。自分にピッタリなストレス解消法見つけたいわ。
たとえばを動かすのが好きな人は「山登り」「ジョギング」「スポーツ」をして、心のストレス発散をします。
他にも皆がよくするストレス発散方法は以下の通りです。
- ひたすら家にこもって読みたい漫画をいっきに読む
- 1日中部屋、布団から出ずに過ごす
- 普段は我慢している高くて美味しい物を食べる
- 小旅行で他県に行ってみる
- 友達と女子会を開いてひたすらグダグダする
- 映画館で映画を観る
- カラオケに行って大声で歌う
- ご褒美に美容院やマツエクに行く
自分の好きなことをする時間を作ってストレス発散しましょう。
ただし人にストレス発散方法を聞いても自分に適応されるかはわかりません。
自分の好きなことがわからない時は、人の言うストレス発散方法を試しながら自分の好きなことを探してみてくださいね。
友達や家族に相談し、話を聞いてもらう
女性は特に話すことでストレス発散ができると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
「話すことでもやもやしていた気持ちがスッキリする」「話しているうちにどうでも良くなってきた」ということもあります。
信頼できる人に相談して話を聞いてもらい、どうしたら状態が良くなるかアドバイスをもらいましょう。
深刻な場合を除いて話を聞いてもらうだけでもある程度はスッキリします。
また自分とは違った視点からストレスを感じている事に対して意見をもらうと「そういう捉え方もあるのか」と気にならなくなることもあるので、自分だけで溜め込まず人に話を聞いてもらってくださいね。
ストレスが体調に現れたら早めに医療機関で診断をもらう
自分では感じていなくても、体はストレスを感じているということもあります。
あなたが自分のストレスや心の状態を敏感に察知して、ストレスを上手く発散させていれば問題ないのですが、それができなかった場合は身体にストレスの症状がでることがあるのです。
仕事のことを考えると吐き気やめまいがするなど「最近身体の調子おかしいかも」という時は早めに医療機関に行って診断をもらいましょう。
職場がブラック保育園で労働環境が最悪なら転職しよう
いくらあなたが努力してストレス発散を心がけていても根本的な問題が解決しない限り、ストレスはなくなりません。
たとえば労働条件が最悪な場合です。
あなたを取り巻く環境が既にストレス要因だったとしたら、そこに勤め続ける限り上記のストレス解消法でストレスを解消していても意味がありません。
保育士の求人は沢山ありますから、そこの保育園に縛られることはありません。
「このままいたら自分やばいかもしれない」と思った時は、思いきって転職することを早めに考えた方が良いです。
ブラック保育園であなたの大切な時間をストレスを感じて過ごすのではなく、少し勇気を出して時間をかけて転職することで悩みが解決するならそっちの方が良いですよね。
「楽しく働けているか」「成長のための良いストレスかどうか」自分のストレスを見極めながら働きましょう。
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