加配保育士とは?資格や配置基準、加配保育士が抱える悩みについて

保育士の悩み

「加配(かはい)保育士」という言葉を聞いた事があるでしょうか。

保育園に必ずいるという訳では無いので、知らないという保育士も多いでしょう。

本記事では、加配保育士について、加配保育士の悩み等について紹介します。

加配保育士とは

加配保育士の読み方「加配(かはい)保育士」です。

加配保育士とは、障害を持っている子どもの担当になって1日保育にあたる保育士を指します。

加配保育士は、特別な資格はいりません。

一般的には、保育補助をする保育士やパート保育士が加配保育士として働く事が多いでしょう。

特別な資格がいらないため、保育士として働いている人は状況が揃えば、誰でも加配保育士として働く可能性はあるのです。

保育士として働ている人は、加配保育士について知っておいた方が良いでしょう。

加配保育士の役割

上記で触れた通り、加配保育士は障害を持っている子どもの担当となり、1日中保育するのが加配保育士の役割です。

加配保育士が担当する子どもと加配保育士は、普段からクラスに入って、担任や他の子ども達と一緒に過ごしますが、子どもが障がいを持っている為、集団行動が上手く出来ない事もあります。

たとえば、保育室で皆で遊んでいたのに、障がいを持つ子どもが一人で部屋を飛び出してしまったり、皆とは違う所に行ってしまう等。

その場合は、加配保育士が子どもを追いかけて、別室で1対1で保育をすることもあるでしょう。

加配保育士と補助保育士の違い

加配保育士の場合、特定の子どもにつきます。

クラス全体の補助ではありません。

加配保育士は、担当する子どもの専属保育士のようなものです。

一方、補助保育士の場合、特定の子どもにつくのではなく、クラス担任の補助なので、クラスの中で出遅れている子どもがいれば声をかけて手伝ってあげたり、クラス担任が子どもを見ている間、設定の準備等をします。

【参考】保育補助の仕事とは?資格が必要な保育士との違いや仕事内容。

加配保育士の配置基準とは

平成29年3月みずほ情報総研株式会社「保育所における障害児に関する研究報告書」を参考にすると、加配保育士の配置基準について、具体的な基準はない」とした市町村が多い(42.5%)です。

子どもの障害の程度問わず、一律の配置基準を設けている市町村が全体の3割弱、子どもの障害の程度によって異なる基準を設けている市町村が2割強。

その中でも「障がいの程度に問わず、基準を設けている市町村」も基準を例に挙げると、以下の通りです。

配置基準の例は以下の通りです。

加配保育士の配置基準例

  1. 障がい児3人に対し加配保育士1人
  2. 障がい児1人に対し加配保育士1人
※加配保育士の配置基準は、自治体によって異なる

小規模な自治体では、半数以上(55.5%)が具体的な基準を設けていませんでした。

「加配」は親からの申請が必要

子どもの「障害」を診断するのは保育園ではなく、医者です。

その為、親は自分の子どもに「加配保育士が必要だろう」と思った時、入園前の段階で保育園に相談し、保育園側が加配保育士の手続きをします。(入園後の場合もある)

たとえば、加配保育士が必要となっても職員の数が足りない場合、新たに人を雇わなければいけない事もあるので、加配が必要な園児がいる保育園が自治体に申請して補助金をもらい、職員の応募をかけるのです。

私立保育園よりも公立保育園の方が障害児を受け入れている

先ほどの「保育所における障害児に関する研究報告書」を参考にすると、私立保育園よりも公立保育園の方が障害児の受け入れる方針を示しています。

公立保育園の場合、人気なので求人が出るとすぐに埋まります。

その為、「保育士が足りない状況」になる事は、あまりありません。

人数的にも余裕があるので、障害児保育を受け入れる事に前向きなのでしょう。

公立保育園に勤めた場合、加配保育士として働く可能性が高いと思っておいた方が良いかもしれませんね。

実際、筆者が子どもの頃に通っていた(学生時代の実習先でもある)公立保育園では、障がい児の受け入れをしており、筆者が子どもの頃、また、筆者の実習中にも障がいを持った子どもがいました。

加配保育士が必要とされる子どもについて

平成22年12月内閣府による「障害児に対する支援について」からの引用が以下の通りです。

【身体障がい児】

在宅の身体障害児のうち「未就学」の者は、20.3%。 その日中活動の場を見ると、「自宅」が34.4%と最も多く、次いで「保育所」32.8%、「幼稚園」16.4%となっている。

【知的障がい児】

在宅の知的障害児(者)のうち「就学前」の者は15.0%。 その日中活動の場を見ると、「自分の家」が35.9 %と最も多く、次いで「通園施設」29.8%、 「保育所」16.0%、幼稚園」7.7%となっている。

上記の引用から分かる通り、未就学児の中でも身体に障がいを持つ子どものうち32.8%、知的に障がいを持つ子どものうち16%が保育園に通っています。

加配が必要とされる子ども達の例は、以下の通りです。

自閉症

以下、こころの健康情報局すまいるナビゲーターからの引用です。

自閉症とは、対人関係が苦手・強いこだわりといった特徴をもつ発達障害の一つです。

「自閉症を持つ子どもの特徴」は、以下の通りです。

自閉症を持つ子どもの特徴

  • 表情が乏しい、または不自然
  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 抱っこや触られるのを嫌がる
  • 一人遊びが多い、ごっこ遊びを好まない等

【引用】こころの健康情報局すまいるナビゲーター

自閉症を持つ子どもは、周囲に理解されずらい為、ストレスが溜まりチックなどの身体症状が出たり、興奮や緊張などの精神症状が出る場合があります。

基本集団行動で生活する保育園で、自閉症を持つ子どもが過ごすとなると、ストレスを感じてしまうかもしれませんね。

そのため、加配保育士が1対1でついて保育する事があります。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

以下、日本イーライリリー株式会社ADHD.so.jp「親と子のための」からの引用です。

ADHDとは、「注意欠如・多動症(注意欠陥/ 多動性障害、注意欠如・多動性障害)」と言い、 自分をコントロールする力が弱く、それが行動面の問題となってあらわれる障害です。

ADHDを持つ子どもの特徴は、以下の通りです。

ADHDを持つ子どもの特徴

  • 好きなこと、興味のあることになどは集中しすぎてしまう(切り替え難しい)
  • 集中力が長続きしない
  • 落ち着きがない
  • 約束を忘れる、物をよくなくす等

【引用】日本イーライリリー株式会社ADHD.so.jp

子どもによっても症状がそれぞれですが、ADHDを持つ子どもは「喋っちゃだめだよ」という状況でも話すのを止められない(口の多動)、自分が興味ない事をするのも苦手でどこかへ行ってしまう事がある等、加配保育士の対応が必要となる場面が多いでしょう。

グレーゾーンの子ども(気になる子)への対応に頭を抱える現場の保育士

集団生活をしていると、個性を考慮した上で考えても、他の子との明らかな差がある子どもは目立ちます。

たとえば、みんなが座って保育士の話を聞いている時に、一人だけ部屋を飛び出してしまったり、ひどい時には保育園から脱走しようとしたり・・・。

デリケートな問題なので、保育士から「お子さん、もしかしたら障がいがあるかもしれません」というのはなかなか出来ないのです。

しかし、グレーゾーンの子ども(気になる子以下省略)が登園した時は、子ども同士のトラブルが絶えず、担任1人で対処しきれない事も・・・。

その為、グレーゾーンの子どもに対する対応について、現場で困っている保育士も多いのではないでしょうか。

実際に、保育園内でグレーゾーンの子どもを把握している場合、パートを一人多く配置したり、全体の保育士で気に掛ける事は出来ますが、限界があります。

悩みを抱えている保育士は、園長や主任に相談し、保護者との話合いが必要になるでしょう。

加配保育士の給料・年収は?他の保育士に比べて高い?

一般的に、加配保育士だからといって特別な手当がでることはありません。

たとえば、パート勤務なら時給、臨時職員や契約職員なら勤続年数に応じた月収。

給料は、雇用形態通りでしょう。

その為、他の保育士と比べて高いという事もありません。

ただし各保育園によっては、手当がつく場合もあるので確認してみてください。

【参考】保育士の給料はいくらくらい?平均年収や月収、ボーナスまとめ

加配保育士は辛い。悩みを抱える事も・・・

加配保育士は、障がいを持つ子どもと1対1で過ごす事が多くなります。

「障害児保育をしたくてここ(保育園)に就職した訳じゃないのに・・・」と、自分が加配保育士になる事に対して、切ない思いをする保育士もいるでしょう。

保育士資格を取得する際「障害児保育」について学びますが、専門的な知識がある訳ではないので、対応について悩んでしまいますよね。

子どもと信頼関係が築けず拒絶されてしまう

子どもの中には、人に対する「好き、嫌い」をハッキリ示す子もいます。

自分の顔を見ると、泣き出してパニックになり、騒がれたり・・・。

懐くのであればまだ頑張れますが、子どもから拒絶されてしまうと心が折れますよね。

信頼関係を築くには、他の子どもよりも時間がかかってしまうことも珍しくはありません。

いけない事を注意した時に、子どもが癇癪を起す、保育士を叩く

障がいを持つ子の特徴として、「癇癪やパニックを起こす」事があります。

癇癪を起した時に、保育士を叩く場面も多々ありますよね。

年齢に関係なく、かなりの強さで叩くので、正直しんどいと感じる事もあるのではないでしょうか。

子どもが加配保育士を叩く理由として、考えられるのは3つ。

考えられる理由

  1. 加配保育士の事は叩いても良い
  2. 加配保育士に構ってほしい
  3. 加配保育士の事が嫌い

子どもにとって常に一緒にいる相手となるのが、加配保育士。

なんでも「良いよ」としてしまうと、今度は「叩いてもこの人は大丈夫」という認識になってしまったり、「自分だけを見て欲しい、構って欲しい」という気持ちや叩いた後の反応が好きで叩いてしまったり・・・。

単純に「嫌いだから叩く」事もあるので、なかなか難しいですよね。

担当する子どもが登園してこないで欲しいと思ってしまう

たとえば加配が必要な子は、他の子どもとのトラブルが多く、怪我をさせてしまったり、むしろ自分自身が怪我をしてしまったり、絶えずヒヤヒヤしながら、行動を見張らなくてはいけない状況。(見張るという言葉は悲しいですが、そうなってしまう)

予測できない動きをする子どもを常に見て、「子どもに怪我をさせてはいけない」というプレッシャーが常に、加配保育士1人にある為「登園してこないで」と願ってしまったり・・・。

これは、「日頃の苦労」のせいでしょう。

普段、あなたが真面目に頑張っている証拠ですね。

担当する子どもに対して「登園してこないで・・・」と思ってしまう自分に罪悪感を感じてしまう事があるかもしれませんが、罪悪感を感じる事はありません。

悩みを抱えている場合は、問題が大きくなる前に周囲に相談する事が大切です。

加配保育士のやりがい

「加配保育士として働く人って大変」と感じてしまいますが、加配保育士として働く人だからこそ、感じられるやりがいもあるのです。

加配保育士は、仕事中常に障害を持つ子どもと一緒に過ごす為、担当する子どもの心の変化や成長に敏感になります。

「前まではこんなことできなかったのに」「今日は機嫌が良いんだ」等、加配保育士だからこそ分かること、気づけること沢山あるでしょう。

他にも、加配保育士として働く事で障害への理解が深まったり、知識が増える為、保育士のスキルも上がります。

たとえば転職する場合も、加配保育士として働いたスキルや経験を自己アピールとして使う事ができますよね。

ちなみに、筆者の実習先では、ダウン症の子ども(4歳児)に加配保育士がついていたのですが、マット運動の前に「子どもが自分の名前を上手に言えて、前転が出来た」様子を見て、その子どもと加配保育士が「やったー!すごい!」と、凄く嬉しそうに抱き合っていました。

そんな瞬間に「加配保育士としてのやりがいを感じるのだろうな」「素敵な保育士だな~と」実習生ながら感じた事を覚えています。

加配保育士で悩んでいる人は、まずは園長や周りの職員に相談しよう

加配保育士の仕事は「1人・3人の子どもを見てるだけ」の仕事ではありません。

様々な配慮をして、子どもの保育にあたる仕事のため辛く、大変と感じる事も多いですよね。

あなたの苦労を保育園内にいる園長や保育士達は見てくれているはずです。

「一人では、対応しきれない」と感じている場合は、園長や主任に相談しましょう。

コメント