保育士を悩ませる保育園のお昼寝事情。お昼寝で寝かしつけるコツってあるの?

保育士の豆知識

日中の元気な子ども達も可愛いですが、昼寝中の子ども達もとても可愛いですよね。

しかし、昼寝中に「可愛い」と思えるのは、それぞれの保育士の寝かしつけの努力があってこそです。

同じ寝かしつけでも「乳児の難しさ」「幼児の難しさ」を感じている保育士も多いでしょう。

本記事では、保育士を悩ませる「お昼寝」について紹介します。

保育園でお昼寝が必要な理由やお昼寝の時間

保育園の管轄は、厚生労働省。

保育園は、児童福祉法をもとに保育園を運営し、認可保育園では保育所保育指針に沿って保育方針を決めたり、保育園のプログラムを考えているのです。

そして、昼寝(午睡)が必要な理由について、保育所保育指針の中で触れています。

保育園でお昼寝が必要な理由について

保育園の昼寝に関する厚生労働省の保育所保育指針の記述が、以下の通りです。

食事や午睡、遊びと休息など、保育所における生活のリズムが形成される。

【引用】厚生労働省保育所保育指針

  • 一日の生活のリズムや在園時間が異なる子どもが共に過ごすことを踏まえ、活動と休息、緊張感と解放感等の調和を図るよう配慮すること。
  • 午睡は生活のリズムを構成する重要な要素であり、安心して眠ることのできる安全な睡眠環境を確保するとともに、在園時間が異なることや、睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差があることから、一律とならないよう配慮すること。

【引用】厚生労働省保育所保育指針

つまり、子どもの休息の為、緊張感から解放するために午睡が必要という事ですね。

他にも昼寝時間は、休憩時間・連絡帳記入・事務時間など、保育士にとっても必要な時間でもあります。

保育園の昼寝時間はどれくらい?

保育園によって若干異なりますがお昼寝時間は、大体1時間30分睡眠が基本です。

乳児の場合は、2時間程たっぷり睡眠時間を取る保育園もあります。

2時間の中でたっぷり寝られる子、途中起きてまた寝る子、1時間半ほど寝たら起きてしまう子。

子どもによって睡眠時間は異なりますが、起きてしまった子ども達は別室で遊んで過ごします。

知っておくべき乳幼児突然死症候群(SIDS)

 

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る病気。

窒息などの事故とは異なり、現時点では原因が湧わかっていません。

厚生労働省「~睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう~」によると、平成29年には77人の赤ちゃんがSIDSで亡くなっています。(平成9年は538人)

厚生労働省のサイトが挙げている乳乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症リスクを低くするための3つのポイントが以下の通りです。

  1. 寝かせる時、子どもが1歳になるまでは仰向けに寝かせましょう
  2. できるだけ母乳で育てましょう
  3. たばこをやめましょう

上記の「1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけで寝かせましょう」というところは保育園でも実践できますね。

また、睡眠中の赤ちゃんが寝がえりをうって仰向けからうつ伏せになってしまう事がありますが、これは自然な発達過程。

「睡眠中に寝がえりをうって、うつぶせになってしまう赤ちゃんを仰向けに戻した方が良いのか?」という質問の答えは以下の通りです。(厚生労働省)

米国国立衛生研究所(および米国小児科学会)によると、赤ちゃんがあおむけからうつぶせと、うつぶせからあおむけのどちら側からでも自分で寝返りができるようになったら、あおむけ寝の姿勢に戻す必要はないとされています。 SIDS のリスクを減らすために重要なのは、眠り始めるときにあおむけ寝の姿勢にしてあげることと、寝返りをした時に備えて赤ちゃんの周囲に柔らかな寝具を置かないようにすることです。

実際に乳児の昼寝時間の間、SIDSや窒息死などを避ける為に「入眠時、うつ伏せでは寝かさない」「15分に1回は呼吸確認する」など、子どもの昼寝を見守る保育士は気をつけていますよね。

幼児(3歳~6歳)の昼寝は必要ないと思っている人も多い

上記でも触れた通り、保育所保育指針には、お昼寝の必要性について記述があります。

しかし、保育所に子どもを通わせている保護者の中には、以下のような意見を持つ人もいます。

  • 昼寝をしたくないと言っているのに、子どもに昼寝をさせるのは可哀相・・・。
  • 大人の都合(保育士の連絡帳や休憩)で無理やり午睡させている。
  • お昼寝のせいで家庭で夜寝る時間が遅くなってしまう。

幼児にお昼寝は必要ないという声もあるのです。

東京都品川区、幼児の午睡の有無について考えている

東京都品川区にある特定非営利活動法人子育て品川の平成22年8月「保育における乳幼児のお昼寝と生活習慣を考える」報告には、以下のような記述があります。

1 歳で1日2回の昼寝をする子どもは全体の75%、2歳になるとほとんどの子どもが1日1回昼寝をしているが、その後は昼寝をしない子どもの割合が増えていく。3歳で40%、4歳で70%、5歳で 80%、小学校に入る6歳になるとほぼ100%お昼寝をとらない。

幼稚園児と保育園児の就床時刻を見ると、平日も週末も保育園児の方が遅い。それに加えて、朝園に行きたがらないいわゆる「行き渋り」は、どの年齢でも保育園児の方が多い。また、「朝の機嫌の悪さ」も幼稚園児よりも保育園児の方がどの年齢でも多い。

昼寝をしなくなった子どもは保育園でも昼寝をとらない方が良い。眠りは、短期的には日中の心身の健康状態や脳の活動に影響し、長期的には生存率に影響する可能性もあるといわれている。夜は眠り、日中は活動するという、生物としての24 時間のリズムにどれだけメリハリがあるかということにむしろ気をつけて生活することをすることが大切。

上記を参考にすると、保育園に通う5歳児の8割はもしかしたら「眠たくないのに寝なくてはいけいない」環境にストレスを感じているかもしれませんね。

とはいえ、保育園と幼稚園では保育時間が異なる部分もあるため、上記の引用文全てが子ども達に当てはまる訳ではないでしょう。

東京都品川区にある保育園が実際に午睡を辞めた結果

品川区西五反田保育園(認可保育園)では、実際に昼寝を辞めて取りやめてみたところ、以下のような効果を感じています。

  • 起床時間は 7 時が飛躍的に多くなっていた(以前までは7時半が最も多かった)
  • 夜 10 時以降に寝る子どもがいなくなった

平成 22 年 2 月に保護者を対象としたアンケート調査

現場でも「幼児には昼寝は必要ない」と感じている人も多いのではないでしょうか。

寝かしつけられる子どもからすると「眠たくないのに寝なきゃいけない」というストレス、寝かしつける保育士にとっても「なかなか寝てくれない」というイライラやしんどさがありますよね。

たとえば、保育園に通う子どもの年齢と同じ3歳~6歳でも、幼稚園では昼寝をしません。

 

お昼寝で子どもが寝ない時に試したい、寝かしつけるコツ

乳児の場合の「寝かしつけるコツ」は以下の通りです。

  1. トントンと優しく触れてあげる
  2. 静かなうたを歌ってあげる(オルゴール等も可)
  3. できるだけいつも同じ布団の位置で寝かしてあげる
  4. 音ですぐ起きる子には防音の壁を検討する(段ボールで代用可)

子どもによって「頭をなでなでされる方が落ち着く」「耳を触られると落ち着く」「背中をさすってもらうと落ち着く」等、安心できるスキンシップは様々。

家庭でどのように入眠しているか聞くのも良いでしょう。

また、保育園では「いつも同じ布団の位置で寝かせてあげる」ことが難しいかもしれません。

しかし、たとえば大人であっても布団の向きや枕の位置が変わるとなかなか寝付けないという経験がありますよね。

子どもも同様、いつも同じ午睡部屋であっても布団の位置が毎日違うと不安要素になる場合があるのです。

そのため、出来るだけ同じ位置で寝かせてあげると良いです。

他にも、保育士の昼寝に対する考え方について少し触れておきましょう。

「昼寝時間は必ず寝なければならない」という固定概念でいると、寝かしつけをする保育士自体がイライラしたり「上手くいかない(自分に技術がない)」と辛くなってしまいます。

昼寝時間は必ず寝なければならないとは決まっておらず、本来、昼寝時間は子どもの休息です。

幼児の場合は「休息である」という感覚を持っておいた方が良いでしょう。

上記の保育所保育指針の内容で触れた通り「子ども達の身体、緊張感が休まれば良い」「在園時間が異なることや、睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差がある」という点を心の中に留めておくと良いですね。

子どもがお昼寝してくれないとノートが書けない・・保育士のお昼寝に関する悩みと解決法

保育園の1日の中で最も静かな時間ですが、子どもが勝手に一人で寝てくれる訳ではありません。

午睡時間、子ども達の天使の寝顔を見るまでの間、「この子が寝てくれないとノートが書けないし」「休憩時間が減る・・・」「子どもが一人泣くと、子ども達が起きてしまう」等、保育士は様々な葛藤があります。

そのため日々、寝かしつけに対して悩みをもつ保育士もいるのです。

以下、保育士のお昼寝時間に関する悩みと解決法を紹介します。

とにかく寝てくれない子どもがいます

幼児が寝てくれない場合は、単に眠たくないか興奮状態にある場合が主な要因です。(体調不良の場合を除く)

乳児の場合は様々な原因が考えられます。

乳児が寝てくれない理由・・・

  • 数日、数週間の場合は家での生活リズムの崩れによるもの
  • 日中の活動が足りない(=体力が余っている)
  • 好き嫌いが多く給食が嫌いなものばかりで空腹が満たされない等

子どもによって原因は様々なので、ここで断定は出来ません。

たとえば、午睡をしなくても午後も機嫌よく活動している場合は体力がある可能性が高いので、家庭でもう少し早起きしてもらう(可能な範囲で)、朝寝をしているなら朝寝をやめる等。

解決法は様々です。

こういう場合は、クラス担任の保育士と保護者との情報交換も必要。

そして、乳児の場合は複数担任なので、クラス担任で話し合って対応を決めましょう。

他にも、0歳の場合はさすがに寝た方が良いですが、1歳半頃から体力がつき、寝れなくなってしまうという子が稀にいます。

本来は子どもの生活リズムに合わせてあげたいところですが、保育園の人数の関係などにより対応できない場合がほとんどですよね。

お昼寝時間は無理に寝かせる必要はないので、休憩時間だと思って静かにゴロゴロしてもらうように声をかけましょう。

子ども達が寝るお部屋に行っても騒いで寝ません・・・

お昼寝前の活動に注目してみましょう。

  1. 昼寝まで過ごし方、子どもが興奮するような遊びをしていないか
  2. 「これから寝る」という気持ちが整えられる環境かどうか

たとえば、午睡前に走ったり、リズムをして体を動かしてしまうと、子ども達の気持ちも興奮してしまいます。

午睡前は、興奮させないように、静かな遊びをしましょう。

たとえば「絵本」「積み木」「パズル」。

体を動かさず、座って遊べるものを用意して、気持ちを落ち着かせてあげてください。

赤ちゃんの寝かしつけが大変で、イライラしてしまうんです・・・

乳児を寝かしつけるのは、本当に大変です。

寝られない赤ちゃんを相手にイライラしてしまい、自分のイライラした気持ちの対処や罪悪感への対処の方が大変に感じてしまう事も・・・。

なんとか寝かしつけようとあれこれ試してみても、やっぱりだめ・・・イライラして上手くいかない・・・そんな状況になってしまったら他の保育士に交代してもらうのが1番です。

寝かしつける保育士が変わると、赤ちゃんの気持ちが切り替えられるきっかけにもなり、意外とすんなり寝た・・・という事は結構ありますよ。

たとえば、事前にクラス担任に相談したり、主任に事情を説明すると良いですね。

ちなみに、筆者も新人の頃0歳児クラスの担任になった時に、お昼寝時間が苦痛でした。

お昼寝時間に、上手く入眠できずに泣く赤ちゃんを20分以上相手にしていた時。

「赤ちゃんは話せないから、泣く事で自分の不快感を表現する」という事を分かっていても、イライラしてしんどくなってしまうことが、多々ありました。

それを複数担任の先輩に話すと「絶対に最初についた人が寝かしつけなきゃいけないということではないんだから、そういう時は変わってみよう」と言ってくれ、気持ちが楽になった経験があります。

「赤ちゃんにイライラしてしまう」事は辛く、通常通りの自分ではありません。

余裕がなくなっている時です。

そういう時は、一人で何とかしようとせずに、他の保育士に助けてもらいましょう。

もう赤ちゃんじゃないのに、ひとりで寝てくれない

「もう〇歳だから一人で、上手に寝なければならない」という決まりはありません。

保育園が作りだしたルールや自分の固定概念を様々な家庭、生活リズムの中で育つ子ども全員に当てはめるのは不可能。

赤ちゃんでなくとも、一人で寝れる子もいれば、一人で寝れない子がいて当然なのです。

たとえば、午睡時間に甘えて一人で寝ない子にとって、唯一、保育士と1対1で過ごす時間に居心地の良さを感じているかもしれません。

とはいえ、同じ子に対していつも同じ対応をする余裕や必要性はないでしょう。

午睡は保育士の休憩時間、他の仕事や幼児もありますから、可能な範囲で対応してあげると良いですね。

まとめ

保育士の中には「午睡時間が最も苦痛」と感じてしまう保育士もいます。

なかなか寝ない子どもを相手に寝かしつけるのは大変です。

たとえば「自分的には子どもを無理に寝かさなくても良い」と思っていても、保育園の環境や周りの保育士が「昼寝時間は寝るもの」という考えの場合、個人の意見を通すことは出来ません。

保育園内では、様々な考えをもつ保育士がいるので、合わせなければならない状況も多々あります。

しかし、本来午睡時間は強制的に寝かせる時間ではないので、出来るだけ、子ども優先に日々の保育を行っていける環境作りをしていきたいですね。

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