学童保育施設とは、主に小学校の近くや学校内の空き教室を利用して、小学生の低学年が放課後、遊んだり、おやつを食べたりして過ごす事を目的としている施設です。
実際に、小学生の時に学童保育を利用していたという人もいるかもしれませんね。
保育士資格を持っている人は、この学童保育施設でも働く事が出来るのです。
本記事では、学童保育施設について紹介していきます。
学童保育施設とは
厚生労働省では、学童保育施設を「放課後児童クラブ」と表現しています。(正式には「放課後児童健全育成事業」。)
学童保育施設(放課後児童クラブ)とは、保護者が仕事をしている等の理由から、昼間家庭に親がいない場合に、小学生が遊んだり、宿題をする等、生活の場を提供する施設です。
「小1の壁※」を打破するべく、学童保育施設の需要は、年々、高まっています。
※小1の壁・・・保育所と比べると放課後児童クラブの開所時間が短いため、子供が小学校に入学すると、これまで勤めてきた仕事を辞めざるを得ない状況【参考:内閣府】
以下、平成21年7月厚生労働省「学童保育の目的・役割がしっかりと果たせる制度の確立を」、平成28年厚生労働省「放課後児童クラブ関連資料」の2つを参考にして、学童保育施設についてまとめた表です。
学童保育施設(放課後児童クラブ) | |
定員 | 集団規模おおむね40人程度(最大70人まで) |
時間 | 平日:放課後の時間。地域の実情や保護者の就労時間を考慮して設定
休日等:保護者の就労時間の実態等をふまえて8時間以上 |
開設場所 |
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運営主体 |
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保育内容 | 指導員が行う活動を記載(健康管理・出席確認・自立に向けた手助け等) |
対象年齢 | 留守家庭の小学生 |
開所時間 |
※平成28年5月現在 |
修了時間 |
※平成28年5月現在 |
上記の表から、学童保育施設(放課後児童クラブ、以下省略)は、主に小学校で開設している事が分かります。
他にも、運営によっては「学童クラブ」「放課後子ども教室」等、名称が変わる事もあるでしょう。
学童保育とは
学童保育施設を説明するためには、まず、学童保育について知らなくてはいけません。
以下、先ほどの厚生労働省からの引用です。
【学童保育の目的】
学童保育とは、共働き・一人親の小学生の放課後の生活を継続的に保障する事を通して、親の仕事と子育ての両立支援を保障すること
【学童保育の役割】
学童保育は、年間278日、1650時間にも及ぶ家庭に替わる毎日の「生活の場※」成長期にある子どもたちに安全で安心な生活を保障すること
最近では、共働きの家庭が増えている為、小学生が放課後、親のいない自宅で一人、留守番せざるを得ない状況にある家庭もあります。
しかし、子どもが一人で自宅にいるのは、安全面的にも心配ですよね。
そのため、学校や児童館が子どもが安心して遊べる、大人と関われる環境や場所として学童保育施設があります。
学童保育施設で働く職員の資格有無
学童保育施設で働く際に、資格有無は絶対必要という訳ではありません。
しかし、いくつかの条件があります。
一般財団法人児童健全育成推進財団のサイトを参考にすると、以下の通りです。
学童保育施設の求人の応募資格欄
- 保育士または社会福祉士の有資格者
- 教諭(幼、小、中、高のいずれか)免許保有者
- 大学において社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学、体育学を履修卒業した者
子どもに関わる資格を持っている職員がいると、保護者も安心して預ける事ができますよね。
その為、採用の際も上記の有資格者や免許保有者が優遇されるでしょう。
他にも、平成27年度から、学童保育施設では2名以上の「放課後児童支援員」を配置する事が義務づけられました。
「放課後児童支援員」の資格は、定められた研修を受講することで得る事ができます。
研修を受け、資格を持っている人は「放課後指導支援員」と呼ばれ、資格を持っていない人は「放課後児童支援員」と呼ばれます。
資格を持たずに働く人は、補助員です。
放課後子ども教室
放課後子ども教室は、厚生労働省の「放課後児童クラブ」同様、放課後に子どもが過ごす場所を提供する施設です。
以下、放課後子ども教室の活動例です。
放課後子ども教室の活動例
- 宿題活動(宿題の指導、読み聞かせ)
- 体験活動(工作・実験教室、料理教室、スポーツ・文化活動)
- 交流活動(自由遊び・昔遊び・地域の行への参加)
- その他(職場体験・見学など)
放課後児童クラブと放課後子ども教室は、地域の状況に合わせて、連携をとりながら子どもや保護者を支えています。
先ほどの厚生労働省の資料によると、放課後子ども教室は、平成24年時点で全国実施個所数10,098か所。
地域住民や児童生徒の保護者、学生、社会教育団体、NPO法人、企業等に参加・協力してもらいながら、子どもたちに学習や様々な体験、交流の機関を提供します。
学童保育施設を利用する子ども達
平成30年度5月時点で、学童保育登録児童数は1,23万4,366人です。
平成29年と比較した場合、6万3,204人増えています。
冒頭でも触れた通り、これからも学童保育の需要は高まるでしょう。
厚生労働省「放課後児童クラブ関連資料」を参考にすると、学童保育児童として登録しているのは低学年が殆どです。
児童福祉法の改正前は「おおむね10歳までの児童」となっていたのですが、現在は「留守家庭の小学生」となりました。
その為、高学年の利用も増えています。
他にも、学童保育施設を利用する子ども中には、障害をもつ子どもの利用率も年々上がってきており、障害をもつ子が利用する場合は、専門的な知識を有する指導員が担当し、一緒に過ごします。
学童保育施設で働く保育士の1日の流れ
先ほどの厚生労働省の資料によると、放課後クラブで子ども達は以下のように過ごしてします。
東京都横浜市の例 | |
流れ | 子どもの過ごし方 |
放課後子ども教室(学習・体験活動の場) | |
13:00~ |
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【体育館での活動】
【室内での活動】
【校庭での活動】
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|
17:00 | 子ども教室の子どもは随時帰宅 |
放課後子どもクラブ(生活の場) | |
17:00~ | 【おやつの時間】
【活動時間】
|
19:00 | 帰宅 |
上記の横浜市の例は、すべての子ども達を対象とし、小学校施設を活用して「遊びの場」と「生活の場」を兼ね備えた、安全で快適な放課後の居場所を提供しています。
東京都府中市の例 | ||
流れ | 子どもの過ごし方 | |
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放課後児童クラブ(生活の場) | 放課後こども教室(学習・体験活動の場) |
13:00 |
|
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13:00~ |
|
【室内での活動】
【校庭での活動】
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16:00~ | 【おやつの時間】
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18:00 |
帰宅 |
放課後子ども教室を利用する児童も放課後児童クラブを利用する児童も同じ小学校の児童だった為、生活の場と活動の場を分けているパターンです。
学童保育施設で働く保育士の仕事の特徴
学童保育施設で働く保育士の事を「学童保育士」と呼ぶ事もありますが、正式的には存在しない言葉です。
保育士資格を持っている人が学童保育で働くので、そう呼びたくなる気持ちも分かりますよね。
厚生労働省「放課後児童クラブ関連資料」を参考にすると、平成28年5月時点で学童保育支援員の保育士資格保有者の割合は、26.4%。
幼稚園教諭などの教諭になる免許を持っている人も割合は、28.8%です。
保育士資格保有者と幼稚園教諭免許保有者を合わせると55.2%なので、保育士資格や幼稚園教諭の免許を持ちながら、学童保育支援員として働く人も多いということになりますね。
そう考えると、保育士の転職先にとって学童保育支援員の存在は近いのかもしれません。
学童保育士(放課後指導員)の仕事内容
学童保育施設で働く放課後指導員や職員の仕事内容は、子どもの学習サポートや子どもの話相手になる事、子どもの活動の見守りです。
時には、子どもと一緒に遊ぶ事、イベント等を開催することもあるでしょう。
他にも、施設によっては連携している地域の住民との連絡事項のやり取りや保護者との連絡などがあります。
子ども達は帰宅時、保護者のお迎えや集団下校をする事もありますが、子どもの安全のため、自宅まで送るにも仕事です。
学童保育士(放課後指導員)の勤務時間や休みはどんな感じ?
学童保育施設で働く職員の勤務体制は、「週5出勤」「休みは変則的」な場合が多いでしょう。
その為、土日祝日が必ず休みとは限りません。
勤務時間は固定制で「12:00~20:00」「13:00~20:00」など、午後出勤です。
学童保育施設は、平日休日関係なく営業している場合が多いです。
学童保育士(放課後指導員)の給料や年収はどれくらい?
学童保育施設で働く職員の給料は、一般財団法人児童健全育成推進財団のサイトで紹介している求人を見てみると、月給15万3,600円~155,900円程。
東京都内であれば、月給209,400円程の給料の場合もあります。
時給の場合、1,040円~(保育士資格取得者1,100円~)と記載がある求人もあり、保育士と比較するとあまり給料面では変わらないでしょう。
場合によっては「保育士時代よりも給料が下がった」という場合もあります。
【参考】保育士の給料はいくらくらい?平均年収や月収、ボーナスまとめ
保育士が学童保育施設で働くメリット・デメリット
「保育士から学童保育士に転職したい」と考えいている人は、まずは保育士が学童保育施設で働くメリット・デメリットを確認してみましょう。
保育士が学童保育施設で働くメリット
保育士が学童保育施設で働くメリットは、以下の通りです。
- サービス残業や持ち帰りの仕事が少ない
- 施設によっては子どもの活動を見守る事がメインなので、体力的に楽と感じる事もある
- 子どもの自由時間が多い為、子どものありのままの姿に寄り添える
- 社会貢献ができる
- 自分の得意な事を活かして働ける(運動・音楽・図工・勉強等)
保育園の場合は、「保育園の決められた時間や大人の都合に、子どもを合わせてしまっている」と感じる事も多いですよね。
学童保育施設で過ごす子ども達は、殆ど自由に過ごします。
その為、自由時間の中である程度子どもに合わせながら、遊んだり、話したりすることができます。
その自由時間の中で、自分の得意分野を活かした活動が出来る点も放課後児童員の魅力です。
保育士が学童保育施設で働くデメリット
保育士が学童保育施設で働くデメリットは、以下の通りです。
- 正社員の求人が少ない
- 子どもの面倒が見たいという人にとっては、物足りなさを感じる
- 小学生の関わり方が難しいと感じる事もある
- 保育士の給料とあまり変わらない
学童保育施設の求人を見ると、正社員の求人が少ないです。
募集しているのはパートやアルバイトが多いので、正社員の求人を見つけた場合はラッキーですね。
他にも、保育士とは保育対象となる子どもの年齢が違うので、小学生ならではの成長に応じた関わり方が難しいと感じたり、悩む事もあるでしょう。
放課後指導員と保育士の違い
保育士も放課後指導員の仕事も、子どもに関わる仕事です。
そして、どちらの仕事も子どもにとって、親と離れて過ごす間「親の代わり」のような存在になります。
その点では同じですが、子どもの年齢が違うので、保育士と放課後指導員では子どもとの関わり方が大きく異なるのです。
保育士の場合は、子どもの食事や着替え、排泄など、子どもの基本的な生活面をサポートします。
一方、放課後指導員の場合は、保育する子どもの年齢が小学生なので、基本的な生活面でのサポートというよりは、「子どもにとっての心の支え」になる要素が強いです。(勿論、学習を見てあげる事や一緒に遊ぶ事も仕事です)
子どもの遊びや学習を支援しながら、相談に乗ったり事もあるので、やりがいを感じます。
「先生!」というよりは、子どもにとっては「身近な〇〇さん」のような存在になるかもしれませんね。
保育士資格を活かして学童保育施設で働こう
保育士資格を活かして働く事が出来る、放課後指導員の仕事。
もし転職を考えいている場合、給料面では、保育士とあまり変わらない、もしくは下がってしまう可能性も高いです。
とはいえ、給料には変えられない魅力もあるので、「正社員雇用」や労働条件を確認して自分の条件を満たしている場合はチャレンジしてみるのも良いでしょう。
他にも、たとえば結婚、出産を終え、育児が落ち着いた頃に「保育士は体力的に無理だけど、子どもに関わる仕事がしたい」と思った時には、ピッタリな仕事ですね。
保育士とはまた違う子どもとの関わり方なので、楽しいと感じられるかもしれません。
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