以前から英語の習得は早い時期に行ったほうが良いと言われており、幼児向けの英語教室に期待を寄せている方もいるでしょう。
その一方で、幼児期からの英語教育に疑問を抱く方もいるはずです。
そこで、本記事では幼児の英語教育の必要性とメリット・デメリットについてまとめてみました。
英語力を伸ばす重要性
以下、英語を伸ばす重要性を説明します。
英語が日常的に使われる、グローバル社会への対応
近年、日本では(特に東京)外国人観光客が増え、海外から移住してくる外国人も増え、学校や会社に外国人がいることも珍しくはありません。(移住は沢山という程ではないですが)
「外国人は珍しい」という日本の環境が、ここ最近では「外国人が国内に当たり前」という環境が変わりつつあると言えるでしょう。
他にも、日本の企業の中には、英語を共通語としているところもあります。
しかし、社会人の中でも「日常英会話すら出来ない」という人は沢山いるのです。
その中で、英語の話せる人は言語という障壁を感じることなく、外国人と関わることが出来ます。
それは、これからの社会を生きていく上であらゆる場面で役に立つでしょう。
今後の日本はグローバル化がますます進むと予想される為、英語が幼児期の頃から身につけておくと、どこへ行っても重宝される存在となり得ます。
少子化による日本の衰退
少子高齢化社会は今後も進んでいき、働く人口の減少が懸念されているのです。
近年では、会社の不足する働き手を海外の方に求めており、彼らとの共通言語として英語が使われる為、必然的に英語が必要になります。
さらに、上記でも触れた通り、海外との事業を展開する日本の企業では、共通語である英語を話せる人材が求められます。
このような理由から、英語が話せることは強みになるため、子どものうちに英語力を伸ばすことが重要になるのです。
幼児教育で身についた英語力は小学校、中学校、大学へと続いていく
英語は幼児教育だけにはとどまらず、子どもが大きくなればなる程、英語の習得は必要になるでしょう。
以下、子どもが小学校、中学校、大学へ進学した場合、英語がどのように関わってくるのかを紹介します。
小学校でも英語教育が開始
文部科学省「中学校・高等学校における英語教育の在り方に関する論点」を参考にすると、
2020年度から新しい「学習指導要領」が実施され、小学校の3・4年生は外国語活動が必修となります。
歌やゲームで英語の音声に慣れることが主な目的で、成績として評価されません。
しかし、5・6年生は英語が教科として扱われるため、成績となって残ります。
英語の授業の内容も、今までは「聞く」「話す」が中心でしたが、段階的に「読む」「書く」の指導が追加され、中学からの英語の授業に繋げてくのです。
中学校・高等学校でも英語は必須
中学校でも英語は、以前よりも重要視されており、当然必須科目となっています。
中学校・高等学校における英語今後の方向性に関する記述の引用が、以下の通りです。
中学校の英語教育の今後の方向性・・・
- 身近な話題についての理解や簡単な情報交換、表現ができるコミュニケーション能力を養う(例:短い新聞記事を読んだり、テレビのニュースを見たりして、その概要を伝えることができる。)
- 授業を英語で行うことを基本とし、内容に踏み込んだ言語活動を重視。
- 小学校高学年の教科型導入を踏まえ、中学校ではより多くの英語に触れることにより、学習内容の着実な定着を図る。
- コミュニケーションを円滑に図るために必要とされる基本的な文法事項については中学校で一通り活用できるようにする。
【引用】文部科学省「中学校・高等学校における英語教育の在り方に関する論点」
上記を簡単に説明すると、英語の一通りの基礎を中学校で習得し、身近な話題について簡単に英語で話せるようになるのが目標ということです。
たとえば、中学生卒業の頃には、街中で外国人に話しかけられ、道を説明したり、海外で話題になっているニュース程度の話なら出来るというレベルの英語を習得するという事。
高等学校の英語教育の今後の方向性・・・
- 幅広い話題について抽象的な内容を理解できる、英語話者とある程度流暢(りゅうちょう)にやりとりができる能力を養う。
- 授業を英語で行うとともに、言語活動の高度化(発達段階や、生徒の英語力等の状況に応じた発表、討論、交渉等)を図る(例:ある程度の長さの新聞記事を速読して必要な情報を取り出したり、社会的な問題や時事問題について課題研究したことを発表したりすることができる。)
- 中学校で学習した語彙・表現・文法事項等に意味のある文脈の中でコミュニケーションを通して繰り返し触れることができるよう、様々な言語活動を工夫し、言語の運用能力を高める。
【引用】文部科学省「中学校・高等学校における英語教育の在り方に関する論点」
上記を簡単に説明すると、英語で話す相手の内容を大部分を理解し、スムーズに会話が出来る、英語を使って発表・交渉が出来るようになることが目標ということです。
高校生の時点でかなり高いレベルの英語力が必要になり、当然、それがテストなどの成績にも関わってきます。
しかし、上記のレベルまでいくためには、かなりの英語力を身に付けなければいけません。
ますます幼児期の頃から英語に触れておくべき、英語を習得しておいた方が良いということが分かるでしょう。
センター試験は廃止。読む・聞くだけではなく話す・書くことも評価される
これまでの大学入試センター試験では「聞く」「読む」能力が主に問われていました。
しかし、センター試験に代わり2020年度より実施される大学共通テストでは、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能が評価されるようになります。
そして、大学入試の内容が変わることで、現在の高校・中学で実施されている英語教育も徐々に変更されています。
たとえば、文部科学省では、2021年からの中学では「授業を英語で行うことを基本とする」としており、子ども達の英語力の向上が期待されているのです。
幼児期から英語教育をするメリット・デメリット
小学校の英語の授業などに備えて、幼児期から教育を始めたほうがいいと考える親がいる一方で、反対の意見もあります。
例えば、以下の通りです。
- 母国語である日本語を覚えてから
- 早期に英語教育を行っても、すぐに忘れて効果がない
- 幼児期には他にも教えなければならないことがある等
幼児期の英語教育については賛否両論あり、各家庭の判断によると言っていいでしょう。
幼児期に英語教育を行うメリット
幼児期に英語教育を行うメリットが以下の通りです。
- 臨界期までの修得が期待できる
- 難しい発音も聞き取れる
- 学校の英語に抵抗感がない
- 異文化を知ることが出来る
以下、それぞれの項目について詳しく説明します。
「臨界期」までの習得が期待できる
人間の学習能力には「臨界期」があり、この時期を過ぎると衰えるという有名な説があります。
この説によると、言語の能力の「臨界期」は9歳前後で、この年齢までなら言語の習得が期待できるとしているのです。
ただし、9歳前後という年齢には諸説あるため、確実だとは断定できません。
しかし、大人になってから英語を学習するよりも、脳の発達が著しい幼児期に英語を学ぶことは意義のあるものだと言えるでしょう。
難しい発音も聞き取とれる
日本人は英語のLとRの聞き取りや発音が苦手だと言われています。
しかし、生後6ヶ月の赤ちゃんはLとRを聞き分けるという研究結果が報告されており、幼児期から英語の音声に慣れていれば、LやRを含む聞き取りや発音もできるようになります。
学校の英語の授業に抵抗感がない
小学校入学前に全く英語に触れていなかった子どもの脳は、日本語で占められているため、英語を受け入れにくい状態になっています。
また、もともと英語に興味のない子どもが「勉強する」と強く意識すると、反って苦手意識を生む場合もあります。
そのため、勉強の意識が強くなる前の幼児期から英語に触れておいたほうが、英語の授業も受け入れやすいと言えるでしょう。
異文化を知ることができる
英語圏の人々の生活や習慣を通して、日本とは異なる文化に触れることができます。さらに、世界には様々な国や考え方があることを理解することで子どもの視野も広くなります。
幼児期に英語教育を行うデメリット
幼児期に英語教育を行うメリットは以下の通りです。
- 日本語と英語で混乱する
- お金や送迎する時間が必要
- 親からのプレッシャーでストレスを感じる
- 日本独自の文化や習慣が理解できない
以下、それぞれの項目について詳しく説明します。
日本語と英語で混乱する
幼児期は、母国語である日本語を覚えようとしている段階。
まだ、日本語の使い方や表現力が身についていない未熟な時期に英語教育を行うと、2つの言語で混乱してしまう場合があります。
さらに、日本語と英語のどちらも一定のレベルに到達しない恐れもあるのです。
費用と送迎する時間が必要
英語に限らず、子どもが教室に通う場合は、費用と送迎する時間が必要になります。
共働きの家庭が増え、夫婦ともに仕事をしている場合、「送迎が難しい」「ストレスを感じる」ことも・・・。
この点については家族で話し合う必要があるでしょう。
送迎に関する悩みだけであれば、ベビーシッターを利用すると良いかもしれませんね。
ベビーシッターは1時間~2時間、もしくは3時間など時間単位で利用でき、保護者の要望に沿ったサービスをする仕事です。
勿論、習い事の送迎や保育なども頼むことが出来ますよ。
以下の参考リンク先の記事では、保護者がどのような内容でサービスを頼むか、どれくらいの間(時間)利用するのか、金額や利用頻度についても紹介しています。
【参考】保育士とベビーシッターの違い。給料や業務内容、働くメリットは?
親からのプレッシャーでストレスを感じる
幼児を英語教室に通わせる方の中には、バイリンガルになって欲しいという期待を持つ親もいるでしょう。
しかし、過度な期待は子どもにプレッシャーを与えてしまいます。
ストレスを感じた子どもは、英語に苦手意識を持ったり嫌いになったりする可能性があるので、プレッシャーをかけすぎないようにしましょう。
日本独自の文化や慣習が理解できない
これは親の教育方針にもよります。
日本独特の「協調性が大事」「自己主張をあまりしない」という性格ではなく、海外の子どものように自分の考えや主張があり、行動力のある子に育てたい場合。
英語を身に付けることでそういった文化を受け入れ、英語圏の考え方を好み、性格として馴染んでいくかもしれません。
しかし、英語を身に着けて欲しいからといって英語圏の文化を優先すると、日本独自の文化や慣習、考え方が理解できなくなる可能性があります。
日本人としてのアイデンティティを忘れないように、家庭できちんと教えてあげましょう。
【参考】モンテッソーリ教育の基本的な知識について。保育士なら知っておこう
英語教育を行っている場所
英語教育を行っている場所は以下の3つです。
- 英語教室
- プレスクール
- オンラインの英語教室
大人の場合は、更に気軽に英語習得のためのツールがありますが、幼児となると限られています。
英語教室
年齢に合わせたカリキュラムが組まれており、歌やダンス、読み聞かせを通して英語の発音やリズムに親しんでいきます。
ちなみに、筆者の元職場の保育園で2歳児が英語教室に行った時のことを保護者から聞きましたが、外国人の体の大きさや見慣れない顔立ちに号泣してしまい、すぐに帰ることになったと話していました。
普段は明るく、ひょうきんな女の子だった為、話を聞いた時は驚きましたが、2歳の年齢を考えるとトラウマにもなりかねません。
見学ができる教室もあるので、その英語教室が子どもに合うかどうかを判断してから決めるのも良いでしょう。
プレスクール
プレスクールとは幼稚園や保育園と同様の施設の事。
日常生活は全て英語が使われており、英語を母国語とする外国人講師とバイリンガルの日本人講師と触れ合うことで、自然と英語力が身につきます。
子ども同士の関わりから、自然と英語力がつき、子どもにとってより身近に感じるでしょう。
「友達と仲良くなりたい」「なんて言ってるの?」と興味がわくと、英語がメインではないと感じて、プレッシャーを感じないかもしれません。
オンラインの英語教室
Skype(スカイプ)などを通して、マンツーマンで英語を学ぶ勉強法です。
しかし、子どもの年齢によっては、画面越しの英会話に飽きてしまったり「知らない言葉で話しかける知らない人」と感じて興味が湧かないという反応を見せる子もいます。
オンラインの講師がどんな人なのか情報が公開されていることが多いので、事前に情報を集めることで自分の子どもに合っているか判断できます。
英語教室やプレスクールよりも費用がかからない点や送迎などが必要ない為、家庭によっては「オンラインの英語教室の方が取り組みやすい」と感じるでしょう。
幼児期からの英語教育は子どもの様子を見ながら行う
これまでの学校の英語の授業は、単語の暗記と文法を理解させることに重点が置かれていました。
しかし、今後は英語を聞き取って理解する、英語でコミュニケーションが取れることも重要視されます。
聞き取り能力が高い幼児期に、英語の音声に慣れさせておけば、学校の英語の授業にもスムーズに入っていけそうですね。
そして、子どもが楽しみながら英語に取り組める環境を作ることが、親の役割ではないでしょうか。
コメント