「チャイルドマインダー」という名前を聞いたことがあるでしょうか。
チャイルドマインダー子どもの保育に関わる仕事の名称。
保育士をや幼稚園教諭、保育ママなど、子どもに関わる仕事をしている人は、チャイルドマインダーについても知っておいた方が良いでしょう。
本記事では、チャイルドマインダーについて詳しく紹介します。
チャイルドマインダーとは
チャイルドマインダーの発祥はイギリス。
イギリスでは100年以上前から歴史があり、保育に関する知識が豊富で、専門性が高く質の高い保育を行う人をチャイルドマインダーと言われています。
チャイルドマインダーとして働くには資格が必要ですが、受ける条件として特別な学歴は必要ありません。
通信講座で勉強し、検定試験をうけ、合格すると資格が貰えるという流れです。
また、講座では、実技講習やスクーリングで「年齢別子どもの発達」について学ぶことが出来ます。
チャイルドマインダーの仕事内容
チャイルドマインダーの仕事を簡単に言うと、少人数で家庭的、専門性の高い保育サービスを提供する人ことを言います。
チャイルドマインダーの資格を取得後、保育ママのように自宅で保育ルームを開設したり、ベビーシッターのように利用する家庭に訪問して保育をするのが主な仕事内容になるでしょう。
個人で開設する、もしくは、企業などに所属して働くことも可能です。
チャイルドマインダーの役割
チャイルドマインダーは「少人数保育のスペシャリスト」とも言われる存在。
以下、チャイルドマインダーの資格を取得できる養成講座ヒューマンアカデミーのサイトの引用です。
こどもを主体とした「質の高いかかわり方」を追求しながら、一人ひとりの「個」を尊重し、自立心を育成します。ありのままの姿を深い愛情でうけとめながら、自ら考える思考力を育て、自立心を育む環境を親とともにつくりあげていく。それがチャイルドマインダーの役目です。
【引用】ヒューマンアカデミー
たとえば、保育園の場合。
保育園が円滑に進むように、1日の流れが決められています。
保育園では、保育士も時間に追われて保育をすることも珍しくはないため、時には子どもとゆっくり関われない場面や家庭支援を充分に行えないということも・・・。
しかし、チャイルドマインダーの場合。
少人数保育、家庭的保育という特徴を活かして、子ども一人ひとりに丁寧な関わりが出来ます。
また、自分で保育ルームを開設できるという点から、保護者の教育方針やチャイルドマインダーの教育方針に沿った保育することができるでしょう。
保育ママとチャイルドマインダーの違い
保育ママとチャイルドマインダーの共通点は、少人数保育という点といわゆる「自営で保育ルームを開設する」という点です。
似ている仕事のようですが、実際に比較してみると、労働時間や給料形態、保育する子どもの年齢等、沢山の違いがあります。
チャイルドマインダーと保育ママの違いについて、以下、比較してみましょう。
チャイルドマインダー | 保育ママ | |
仕事をする場所 | 自宅・近隣のビルの一室・利用者の家に訪問 | 自宅・近隣のビルの一室 |
労働時間 | 自分で決める(※短時間可) | 原則8時間 |
給料形態 | 自分で決める |
|
保育する人数 | 自分で決める(最大4人) | 事業主1人の場合3人まで
(補助者2人をつけた場合、最大5人) |
子どもの対象年齢 | 0歳~12歳 | 0~3歳未満 |
上記の他にも、たとえば、資格の有無に関しても違いがあります。
保育ママとして保育ルームを開設する場合、特別な資格は必要ありません。(とはいえ保護者からの信頼を得るため保育士資格を取得して保育ママとして働く人が多い)
また、いくつかの条件を満たし、研修を受ける事で「保育ママ」として開業することが出来ます。
一方、チャイルドマインダーとして保育ルームを開設する場合、先ほど触れた通り、チャイルドマインダーの資格が必要です。
同じ「少人数保育」「家庭的保育」ですが、チャイルドマインダーは「保育」「子育て」「家庭支援」など専門的な知識を勉強した人に与えられる資格ですから、近年、注目されている「質の高い保育を求めている保護者、保育者」向けと言えるでしょう。
【参考】保育ママ制度とは?仕事内容や必要な資格、給料などの条件、メリット・デメリット
保育士、ベビーシッターとチャイルドマインダーの違い
先ほど触れた通り、チャイルドマインダーは、自宅で保育ルームを開設することも出来ますが、訪問して保育するという働き方も出来ます。
保育士、ベビーシッター、チャイルドマインダーの違いは以下の通りです。
チャイルドマインダー | ベビーシッター | 保育士 | |
仕事をする場所 | 家庭的保育もしくは利用者の家に訪問 | 指定された利用者の自宅で訪問保育 | 保育施設(保育園) |
労働時間 | 自分で決める(※短時間可) | 登録している会社による | 原則1日8時間 |
給料形態 | 自分で決める | 登録している会社による(一般的には時給) | 保育園から月収で支払われる |
保育する人数 | 自分で決める(最大4人) | 1~3人 | 0歳:3人
1歳:6人 2歳:6人 3歳:20人 4歳以上:30人 |
子どもの対象年齢 | 0歳~12歳 | 0歳~12歳 | 保育園の場合
0歳~未就学児 |
上記の表から分かる通り、チャイルドマインダーは、仕事をする場所や労働時間、給料形態までも自分で決めることができるため、保育士やベビーシッターよりも自由度が高いということになります。
また、チャイルドマインダーの場合、保育園や会社に雇われる必要はありません。
しかし、保育園や幼稚園とは違い、資格者の個の働きであるため、経営方法や保育の仕方など、全責任も自分にあるという点で、責任重大な仕事です。
【参考】保育士とベビーシッターの違い。給料や業務内容、働くメリットは?
チャイルドマインダーの資格取得に関する注意点・資格取得する方法
資格を取得する前に、注意しておきたいことは以下の2点。
- チャイルドマインダーの資格を取得しても保育園で正社員として働くことは出来ない※
- チャイルドマインダーの資格を持っているからといって特別な手当は出ない
チャイルドマインダーの資格は民間資格です。(保育士資格は国家資格)
保育ルームを開業できるという点では、保育士よりも特別な印象を受けますが、現時点保育業界で特別に何か手当が出る等の仕組みはありません。
とはいえ、チャイルドマインダーは専門性があり、保育に関する知識を持っている人なので、雇用先の信頼や子どもを預ける保護者からの信頼を得ることに役立つでしょう。
チャイルドマインダーの資格取得にかかる費用
チャイルドマインダーの資格を取得するためには、チャイルドマインダーの養成講座を受ける必要があります。
チャイルドマインダーの養成講座が受けられる資格認定団体、以下の通りです。
3つの養成講座の講座受講料を比較してみます。
NCMA,japan | チャイルドマインダージャパン | ヒューマンアカデミー | |
受講料 | 506,000円 | 154,000円 | 412,760円 |
※入会金、入学金込み
※金額はコースによって異なる
通信の場合は以下の通りです。
NCMA,japan | チャイルドマインダージャパン | ヒューマンアカデミー | |
受講料 | \390,500 | なし | なし |
※入会金、入学金込み
チャイルドマインダージャパンとヒューマンアカデミーは、通信講座に対応していません。
NCMA,japanの場合、通信講座の方が費用が安く済みますね。(115,500円の差)
チャイルドマインダーの資格取得にかかる費用に対して、正直、筆者は「資格取得に約40~50万円は高すぎるのではないか」と感じています。
保育士資格を取得する方が安い?
実際に、保育士資格取得にかかる費用と比較してみましょう。
保育士養成学校に通わず、独学で勉強した場合。
保育士試験の受験料(12,905円)と保育士登録料(4,200円)、合わせて17,105円。(+テキスト代)
保育士試験は科目数が多いため、1回で合格するのは難しいと言われていますが、資格取得にかかる費用を比較した場合、保育士よりもチャイルドマインダーの方が資格取得のためにかかる費用は高いですね。
【参考】保育士資格取得までの流れ。保育士試験の難易度や合格率、試験内容ってどんな感じ?
【参考】主婦が無資格から保育士になるのは?保育士資格取得方法や働き方を紹介。
チャイルドマインダーの資格取得に向けて、どれくらいの期間勉強するの?
上記で触れた3つの資格認定団体の受講期間の比較は、以下の通りです。
NCMA,japan | チャイルドマインダージャパン | ヒューマンアカデミー | |
受講期間 | 本科コースの場合の平均受講期間:6か月 | 標準講習日数:6日間
講習時間:36時間 |
6か月(150分×20回+180分×4回⇒62時間) |
講座を受ける場合、スクーリングの開催場所や地域の確認をしましょう。(通信の場合は不要)
NCMA,japanの場合、令和元年10月末日時点スクーリング場所は「札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡」の全国6ヶ所。
チャイルドマインダージャパンの場合、東京都千代田区で講習が受けられます。
ヒューマンアカデミーの場合、札幌から沖縄までの全国29教室。(関東・中部・近畿・中四国・九州)
また、通信の場合であっても、スキルに差が出ないように「実践的受講カリキュラムのみスクーリング開講」などとしている養成講座もあります。(NCMA,japan)
チャイルドマインダーの試験は難易度が高い?
結論から言うと、チャイルドマインダーの難易度は低めです。
チャイルドマインダーの資格は合格率が高く、比較的にとりやすい資格。
養成講座を受ける資格認定団体によって差はあるものの、チャイルドマインダーの合格率は80~90%です。
毎回の講座をしっかり聞いていれば、落ちるという事はないでしょう。
チャイルドマインダーの試験内容について
各団体によって異なりますが、試験内容は「筆記試験のみ」です。
また、試験内容は、子どものしつけや発達、上層教育、食事と栄養、救護法(病気や怪我の応急処理)など、講座を受けた内容が試験範囲となるでしょう。
試験自体は40~60分程度。
保育士試験は9科目、試験は2日間にわたります。
また、筆記試験後日、二次試験では実技試験もあるため、保育士資格と比較した場合、気持ち的にはチャイルドマインダーの方が気が楽に感じるでしょう。
チャイルドマインダー資格を取得するメリットは?
チャイルドマインダーの資格をどのように活かしたいかによって、資格取得の有無を選択する必要があります。
たとえば、先ほど触れた通り「保育士で正社員として働きたい」という目的がある人は、チャイルドマインダーの資格を取得しても意味がありません。(仕事の役には立ちますが正社員では働けないという意味)
チャイルドマインダーの資格を「保育士資格と同じ効力がある」と勘違いして、資格を取得してしまうと「チャイルドマインダーの資格意味ないじゃん」という状況になってしまうでしょう。
チャイルドマインダーの資格を取得した人は「独立開業」「自宅開業」など自営業をしたり、「保育園経営者」として働いています。
他にも保育士や幼稚園教諭になり、仕事に活かしたり※、保育関係の仕事をしていなくても「子育てに活かしたい」という目的で、資格を取得する人もいるので、人によってチャイルドマインダーの資格を取得する理由は様々です。
開業という選択が持てる、開業時の信用になる
以前まで「子どもと関わる仕事」と言えば、会社や保育園等に所属し、保育する場所も指定されてい職業・仕事がほとんどでした。
しかし、チャイルドマインダーの仕事は「働き方の自由度が高い」という点で、近代的で、新しい保育者の働き方と言えるでしょう。
他にも、都心では小規模保育園や認定こども園の設立の他、保育ママやベビーシッターなど、様々な「子どもを預かるサービス」が展開されており、その中の一つに「チャイルドマインダー」も含まれています。
子どもを預かるサービスの中でも「保育に関する資格を保有していない人がサービスを提供する」という場合もありますが、子どもを預ける保護者からすると「できれば子どもに対する知識がある人が良い」と思うのは当然です。
チャイルドマインダーは「資格保有者」という点で、保護者は信頼し、安心して子どもを預けることが出来るでしょう。
少人数保育に詳しくなれる
最近では、保育士の間だけでなく、子どもを持つ親の中で「幼児期が重要である」ということが浸透してきています。
幼児期をどう過ごすかによって、子どもの将来が決まると言っても過言ではありません。
そのため、少人数保育で家庭的、丁寧な保育や質の高い保育を希望する保護者も増えてきています。
子どもの将来を考え、子どもに初期投資をする保護者などからは、チャイルドマインダーのニーズがある仕事と言えるでしょう。
就職活動でプラスになるケースがある
資格を持っていることは多少であっても有利になる要素。
少なくとも、未経験者よりは評価が高くなる可能性があります。
そのため、就職活動の際に、保育士資格+チャイルドマインダー資格の合わせも強いと言えるでしょう。
たとえば、応募が殺到するような人気園であれば、沢山の求職者の中から、優秀な人を選ぶことが出来ます。
たとえば、保育士資格を持っている人、幼稚園教諭と保育士資格を持っている人は多くても、チャイルドマインダーの資格を持っている人はまだ少ないでしょう。
取得している資格の数も重要ですが、チャイルドマインダーなら子どもの関わる資格の為、更に自分の強みとして生かすことが出来ますし、面接などの自己アピールの場でも活用することが出来るでしょう。
人選する時には「より専門的な知識がある人」を選びますよね。
チャイルドマインダーの働き方及び収入
まずは、チャイルドマインダーの働き方について説明します。
チャイルドマインダーの働き方は、大きく分けて3つあります。
チャイルドマインダーの働き方・・・
- チャイルドマインダーとして自分で開業(在宅保育、訪問保育)
- 保育補助として保育園や幼稚園で働く
- ベビーシッターや幼児教室などで働く
また、働き方によって収入も異なる為、以下働き方に応じたおおよその収入について紹介します。
チャイルドマインダーとして自分で開業(在宅保育、訪問保育)
先ほど触れた通り、チャイルドマインダーは、労働時間や子どもの預かる人数(最大4人)など、働き方を自分で決めることが出来ます。
たとえば、1日8時間働くのがキツイと感じているなら、8時~15時などの時短で働く親に合わせた時間帯。
他にも「午後のみ預かり保育」と決めることも出来ます。
「子どもに関わる仕事がしたい」「でも自分の教育方針に合った保育園や幼稚園を探すことが難しい」「家庭的な環境で子どもと丁寧に関わりたい」と思っている人にとって最適な資格です。
なお収入は個人事業として自分で働き方を調整することになるのでかなりかわってきますが、いくつか例を紹介します。
在宅型の場合
- 1時間あたりの預かり金額:1,200円から1,500円
- 預かり人数:2人
- 1日あたりの預かり時間:9時間
- 稼働日は平日のみ(22日間)
上記の場合だと、月商は47万5,200円~59万4,200円。ここから様々な経費を引いた残りが収入となります。
預かる人数を増やせば当然収入も増えますが、募集をしたからと言ってすぐ預かる子供を確保できるとは限りません。
また個人事業なのでボーナスもなく、平均年収では250万円から300万円となります。
訪問型の場合
- 1時間あたりの預かり金額:1,000円から1,200円
- 預かり人数:1人
- 1日あたりの預かり時間:9時間
- 稼働日は平日のみ(22日間)
訪問型の場合は在宅型の場合に比べて料金相場が低く、また兄弟・姉妹をまとめて預からない限りは基本的に1人のみ預かることになる為、在宅型の場合に比べて収入は少なくなります。
上記のようにフルで働いたとしても、19万8,000円から23万7,600円となります。
ただし在宅型と違い、家賃がかかるわけでもなく、初期費用もほとんどかからないというメリットがあります。
保育補助として保育園や幼稚園で働く
既に保育士資格を持っている人にとってチャイルドマインダーの資格は、スキルアップとして有効な資格です。
保育園で働いている場合、年に数回、キャリアアップ研修がありますが、保育園に所属している人数によっては行ける人、行けない人がいます。
また、自分で研修内容を選ぶことも出来ません。
「自分が知りたい保育の知識」と「研修の内容」が一致しないことも多いですよね。
チャイルドマインダーの資格を取得する際は、子どもの年齢応じた接し方や家庭支援、遊びの環境作りなど、かなり実践的で具体的な保育の仕方について学ぶことが出来ます。
チャイルドマインダーの資格取得は「自分の保育に自信がない」「保育士の知識を深めて、更に専門性を高めてスキルアップしたい」と思う保育士に向いている資格と言えるでしょう。
なお保育補助の時給は900円から1,300円程度。
フルタイムで働いた場合だと、14万円から20万円程度となるのが一般的です。
参考:保育補助の仕事とは?資格が必要な保育士との違いや仕事内容。
ベビーシッターや幼児教室などで働く
ベビーシッターや幼児教室で働く場合、所属する会社によっては「保育士資格」がなくても働くことが出来ます。
とはいえ、子どもに関わる資格を持っていることに越したことはありません。
ベビーシッターや幼児教室は、子どもを預かる仕事・子どもと関わる仕事ですから、チャイルドマインダーの講座で学んだことは必ず活かされるでしょう。
たとえば、自己流で子どもに関わると上手くいかないと悩むことも多いです。
しかし、チャイルドマインダーの養成講座では、子どもとのコミュニケーション方法についても講座で学ぶことが出来るため、知識を活かして「自信」を持って対応できます。
また、子どもに関する知識を学んだ事で達成感を得たり、学んだことを実際に仕事で役立てることが出来るため、充実感を得ることが出来るでしょう。
参考:保育士とベビーシッターの違い。給料や業務内容、働くメリットは?
まとめ
近年、待機児童の問題が深刻化している地域の親は、子どもを預けることが出来ずに悩んでいます。
特に都心では「働きたいけど子どもを預けられる場所が無い」という親が多く、働きたくても働けない状況です。
今、現在は地域によって待機児童の問題もある為、保護者が「質の高い保育を受けさせてあげたい」と思っていても「とりあえず預けられる保育園を探して子どもを(保育園に)入れる」というのが現状です。
しかし、これから待機児童の問題がある程度改善され、保護者が選べるようになった場合「保育の質」を求める保護者は沢山いるでしょう。
現時点では、チャイルドマインダーという名前の認知度は低いですが、既に活躍されているチャイルドマインダーの方達がいるため、将来的に更に認知され、求められる仕事になるかもしれません。
子どもに関する知識を高め、保育の専門性を高めることに興味がある方は、チャイルドマインダーの資格取得を検討してみると良いでしょう。
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