保育士の仕事は正社員の保育士、非正規職員、パート職員など様々な保育士で成り立っています。
新人保育士や保育士経験がない人にとっては違いがあまりわかりませんよね。
パっと見ただけではベテランの正社員保育士なのか、パート保育士なのか、見分けもつかないのです。
そして時間帯や雇用形態が違うということはなんとなく分かっても、しっかり説明を受ける場面は現場でもないかもしれません。
正社員保育士とパート職員ではやるべき仕事や役割が違うので、それを踏まえて自分に適した行動ができると保育の現場でも円滑なコミュニケーションができるでしょう。
本記事では正社員保育士とパート職員の違い、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく紹介します。
正社員保育士とパート保育士それぞれの割合はどれくらい?
平成26年東京都保育士実態調査の結果によると、8,214人のうち57.2%が正規職員、10.8%がフルタイム有期契約職員、30.9%がパートタイム有機契約職員です。
もう少し具体的に見ていくと20代の女性は84.4%の人が正規職員で、30代になると正規職員の割合が下がり53.4%になっています。
50代となると、65%を超える人がパート職員として働いています。
結婚や子どもの有無などによって同じ保育士としての働く時に、選ぶ条件が変わってくるようですね。
ちなみに筆者が働いていた元保育園でも、パートさんの中でも20代が1人いましたが結婚して子どもがいる人でした。
その他のパートさんは40代や50代の人が殆どです。
年齢層が違うという他にも正社員保育士とパート保育士では違うのでしょうか。
以下で詳しく紹介します。
正社員保育士とパート職員の違い
40代50代のパートが多いと言っても正社員でもベテランの人ってそれくらの年齢だし。正社員保育士とパートの割合はわかったけど、働く上でなんか変わるのかな。
役割や仕事内容は全然違うよ。
正社員保育士もパート保育士も子どもと遊び、保育士るという意味では変わりありません。
しかし細かく見ていくと雇用形態・仕事内容などの違いもあります。
自分の働きやすい条件に合わせて正社員保育士が良いのか、パート職員が良いのか考えましょう。
雇用形態
正社員保育士には、雇用期間の定めがありません。
正社員である限り、雇用主となる保育園側は正当な理由がなければ解雇することができないのです。
一方パート保育士の雇用形態はアルバイトなどと同様で、雇用期間が半年、1年などあらかじめ決められている有期雇用という場合が多いです。
ただ必ずしも有期雇用とは限らず、保育園によっては正社員同様無期雇用の場合もありますし、有期雇用から無期雇用へと転換ができる場合もあります。
ちなみに労働契約法によって、有期雇用であっても5年たつと労働者の希望によって無期雇用へと転換しなくてはいけないということが決められています。
参考:厚生労働省「労働契約法改正のあらまし」
社会保険や福利厚生
福利厚生というのは、保育園で例えると保育園(事業主)が職員に対して通常の賃金・給与にプラスして支給する給料以外の報酬、サービスのことです。
福利厚生の中には、法定福利と法定外福利というものがあり、法定福利というのは法律で定められています。
法定福利と呼ばれる項目は以下のとおりです。
- 健康保険
- 厚生年金基金
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
以上の法定福利は、義務として正社員保育士、パート保育士に関わらず条件を満たしている者が受けられるものです。
社会保険の加入条件は「1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上である」ことです。
ただし4分の3未満であっても、以下の要件を満たしている場合には社会保険の被加入者となります。
- 1年以上雇用されることが見込まれている
- 週に20時間以上の勤務している
- 年収106万円以上であること
- 従業員が501名以上の勤務先
- 学生でないこと(※学生も加入できる場合有)
そして法定外福利は、退職金制度や旅行時に使える割引サービスなどの保育園が独自で決めているものになります。
法定外福利に関しては「正社員のみ」と決められている場合があり、パートは受けられないことも多いのです。
参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
給料
正社員保育士の給与は基本給が決められており、それにプラス残業手当などがつきます。
パート職員の給与は、雇用形態はアルバイトと同じなので時給制です。
たとえば1日の勤務が9時~15時パート勤務で入ったとします。退勤時間が1時間延びてしまったとしたら残業ではなく、1時間分の時給がプラスして給与に入ります。
1日8時間を超える勤務となれば残業手当として割り増し賃金(1.25倍)以上が入りますが、短時間勤務であるパート保育士にはよっぽどないことでしょう。
時給制なのでパート保育士は働いた分(時間)だけ、給与が入るということですね。
処遇改善手当については正社員保育士やパートに関わらず給与に加算される対象になります。ただし配分や使い道は保育園によって異なるのが実情です。
労働時間や休み
正社員保育士の場合は、保育園(事業主)が決めている週休2日や4週6休に合わせて組まれているシフトで仕事をします。
たとえば完全週休2日制の保育園なら週に2日休みがあったり、4週6休の保育園なら連勤が続く場合もあります。
1日の働く時間は勤務形態によって違いますが、フルタイムで働くので1日7時間半から8時間働くことが一般的です。
正社員保育士の場合、決められている休み以外に休みが欲しい場合は事前に有給を取る必要があります。
一方でパート保育士の場合は、仕事したい時間・自分の都合が合う時間に合わせて比較的柔軟に働く時間を決めてられるのです。
先ほども触れましたがパートとして働いている人の多くは結婚して旦那さんがいたり、子育てをしています。
自分が主となって家計を支えているというわけではなく、旦那さんにプラスして余っている時間を利用して働くという形で働いている人が多いでしょう。
正社員保育士が足りていないところ、人手が足りない時間帯を補うのがパートです。
そもそも雇用形態が違うため、働く時間や日数も融通を利かせてもらえます。そのためパートは1か月に働く日数や休みの回数が決められていません。
働き方に関しては、正社員より自分の都合に合わせて働けるので自由度が高いですよね。
仕事内容
正社員保育士の仕事内容は、まずは1年通して決められている一つのクラスに入って保育をします。
クラスの子ども達全体の監督をしたり、クラスの主となって子ども達の健康状態や様子に合わせて遊びの内容を変えるのです。
そして保育園の方針や保育指針を毎日の保育に卸して日々の保育を考え、子ども達の成長の記録を記入し、月案・週案・日案・設定保育などの記録を決められた期日までに園長と主任に提出する事務仕事があります。
その他にも保護者懇談などの保護者の対応をするのも正社員の仕事です。
正社員保育士は保育園の子どもを把握するべく家庭の状況や住所、電話番号など個人情報を扱うこともあるので個人情報の取り扱いには注意しなければなりません。
パート保育士の仕事内容は、クラスの主となる保育士を支えるのが仕事です。
保育園によってパート保育士でもクラス担当を決めることもありますが、毎日違うクラスにいわゆるフリーのパート場合など、パートが入るクラスの決定は保育園によって異なります。
パート保育士はサブとなり、影でクラスを支えるという形で働くことが多いです。
クラス担任が「今日は散歩に行きます」と決めればクラス担任が保育に入り、パート職員が散歩カーを準備し、子ども達の靴を並べたりします。
ちなみに筆者も元職場の保育園では、保育士は1日中バタバタして忙しそうでした。
たとえば朝の時間帯です。
正社員保育士や契約社員の保育士がメインで保育に入るので子どもと遊んだり、子どもを全員集めて絵本の読み聞かせをしています。
その時にうんちをした子がいたら、正社員保育士は保育から抜けられないのでパートさんに入ってもらいます。
他にも正社員が子どもと遊んでいる間、パート保育士は洗濯物を干したり、ご飯の片付けをしたり、布団を引いたりしていました。
おそらくどこの保育園でもパートは子どもと接する時間より、雑務をしている時間の方が多いです。
基本的に正社員や契約社員の保育士が保育メインで、パート保育士はその他の雑務をこなさなければなりません。
毎日決められた仕事をするというよりもその時々に応じた仕事を任せられることも多いでしょう。
責任の重さ
正社員保育士は、契約職員やパート職員に比べて責任のある仕事を任されます。
たとえば先ほど触れた通り、毎日設定保育を考えるのは正社員保育士の仕事です。
散歩に行くにしても子ども達の健康状況に応じて遊びを考え、成長の様子からどれくらいの距離を歩かせるのが適しているのか、公園はどこなら安全に遊べるのかなどを考えて決定します。
そして実際に散歩に行った時に迷子になってしまったなどのトラブルがあった時にはどちらに責任があるのでしょうか。
確かに保育士2人の子どもの監督不足ということになりますが、それは正社員保育士の責任になるのです。
正社員保育士が主となって子どもを保育する責任があり、あくまでもパートは補助なのです。
行き場所を決めるときに、パートが「今の子ども達には無理だと思いますが」と意見を言うことも勿論許されますし、そういう空気であるべきですよね。
しかし断固として正社員保育士が譲らなかった場合は、やはり合わせるのはパート職員でしょう。
そのため責任が重いのは正社員保育士ですね。
ただパートだからと言って責任がないわけではありません。仕事として行う以上、そして子供を扱う仕事である以上、たとえパートであっても責任は重いということを忘れてはいけません。
有給休暇
有給休暇は正社員はもちろんですが、パート保育士にもあります。ただし付与される日数が異なります。
まず正社員の有給休暇付与日数は以下の通りです。
勤続年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5~ |
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
半年後に10日付与され、1年たつごとに付与日数は徐々に増え、1年につき最大20日まで付与されるようになります。
一方でパート保育士のように、働く日数が少ない人の付与日数は以下の通りになります。
【週所定労働日数が4日または1年間の所定日数が169日から216日】
勤続年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5~ |
付与日数 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
【週所定労働日数が3日または1年間の所定日数が121日から168日】
勤続年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5~ |
付与日数 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
【週所定労働日数が2日または1年間の所定日数が73日から120日】
勤続年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5~ |
付与日数 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
【週所定労働日数が1日または1年間の所定日数が48日から72日】
勤続年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 |
付与日数 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 |
パートだからと言って有給休暇がないと勘違いしている人もいますがそれは間違いです。
たとえ週1日しか働かなくても、有給休暇は使えるのです。
参考:厚生労働省「有給休暇ハンドブック」
保育士それぞれのメリットとデメリット
先ほども触れたように正社員保育士とパート保育士、人によってどちらの働き方が敵しているのかというのは異なります。
これから保育士として働く人は自分の仕事に対する思いや仕事に充てられる時間に応じて、どちらかを選択する必要がありますね。
先ほどのそれぞれの働き方の特徴を踏まえて、メリットとデメリットに分けて紹介します。
正社員保育士のメリット
正社員保育士として働く上でのメリットを挙げると以下の通りです。
- 雇用や給与が安定している
- 経験年数に応じて昇給がある
- スキルアップのための研修に行くことができる
- 法定外福利が充実している保育園に勤めれば得する
- 1つのクラスに1年通して入ることができるので保育しやすい
- 毎日同じクラスに入るので子ども達との信頼関係も築きやすい
- 自分が主となって保育の設定を決めることができるので楽しい
- 保育士としてのやりがいを感じることができる
子ども達と密に関わることができるのは最大のメリットかもしれませんね。
他にも室内装飾やクラスで取り組むこと、育てる野菜など自分がやってみたいことを自由に保育することができる面白みがあります。
子どもの反応が良いとやりがいを感じ、「次はこれやってみよう」とアイデアが沸いて楽しく仕事をすることができます。
20代や30代など保育士としての経験を積み、保育の専門性を高めたい、知識を身に着けたいという場合は正社員保育士を選ぶと良いですね。
正社員保育士のデメリット
正社員保育士として働く上でのデメリットを挙げると以下の通りです。
- 子どもたちの安全や保育の質など責任を感じる
- 設定保育の準備や記録などをする必要がある
- 保護者の対応もしなければならない
- 運動会や入園式など行事の前日に残業することはほぼ義務
- 自分の事務仕事が終わらなければ残業することもある
- 働く時間は決めることができず、自分の都合より仕事を優先にしなければならない
子どもと関わるのは好きだけど設定保育を考えることが面倒で負担と思う人もいるでしょう。
そういった人にとっては正社員保育士は荷が重いかもしれませんね。
働く時間帯の融通も利かないので、旦那さんや子育てしながら正社員保育士として働いている人もいますが、結構大変そうです。
パートのメリット
パート保育士として働く上でのメリットを挙げると以下の通りです。
- 自由に働く時間や曜日を決められので私生活を犠牲せずに済む
- 設定保育など責任ある仕事はせずに済む
- 基本的に残業はない
パートとして最大のメリットは自分の希望通りの勤務時間や曜日指定ができるという点ですね。
※1の責任ある仕事を任されないから気が楽というのは一部の保育園では、適応されないので注意が必要です。
認可保育園ではあまりまいですが、無認可保育園ではパートでもクラス担任をもったり、設定保育を考えなければならないことがあります。
近年保育士不足で正社員保育士や契約社員の保育士の求人を出しても保育士が集まらず、パートは足りているというような保育園も多いです。
そのためパートを担任にしなければならないという状況にある保育園も中にはあります。
たとえば「勤務時間の他にも、設定やクラス担任など責任のある仕事はしないからパートを選んだ」人も実際に働いていたら、クラス担任や設定保育を頼まれるということもあるのです。
パートのデメリット
パート保育士として働く上でのデメリットを挙げると以下の通りです。
- 時給制なので働く時間が少ないと給料も減る
- 自分で保育を設定するわけではないから物足りなさを感じる
- 雑務ばかりで子どもと関わる時間が少なく感じてしまう
- 研修などは自分で調べて自己負担で受けなくてはならない
自分がメインで保育に入るより影で支えたい、その方が楽という保育士も意外といます。
そういった人にとってはパートというのは良いでしょう。
色々なクラスに入ることによって沢山の子どもと関わることができるので、あらゆる年齢の子ども達と遊ぶことができて楽しいと感じる人もいるはずです。
しかしそれが逆に一つのクラスで密に関わりたい、名前をいちいち覚えるのが大変という人にとっては苦痛に感じるかもしれませんね。
まとめ
実際には保育園の独自のルールによって働き方が異なるかもしれませんが、本記事では一般的な目線でそれぞれの条件やメリットなどをまとめました。
先ほども触れた通り保育士は離職率も高く、せっかく若手の保育士が入ってきてもすぐに辞めてしまします。
正社員保育士や契約社員の保育士も足りていないということもあり、やむを得なずパートが設定保育を考えたり、クラス担任をすることも珍しくはないようです。
ネットでもそういった声があり、実際筆者の保育士友達もパートとして働いているはずなのに3歳児のクラス担任をし、毎週5勤務で働いています。
筆者の友人は子どももおらず、それが楽しいようなので良いですが、自分の働きたい条件に合っていない保育園に勤めてしまった場合、自分の負担が増えてしまうのです。
そのためあらかじめ求人や面接の時に正社員保育士の人数が少ない無認可保育園の場合、そういうことがある可能性も考えて選んだ方が良いでしょう。
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