保育士のお仕事は子どもの食事や睡眠、一緒に遊ぶなど体力を使いますよね。
家庭以外でこのように密に子どもと接する仕事は他にないでしょう。
もしかしたら家族以外に初めて出会う大人、という大きな存在になるかもしれません。
これからの社会を担う子ども達を育てるやりがいのあるお仕事です。
子育ても経験していない新卒の保育士として働く人は学んできた事と実際の現場とのギャップを感じてしまいますよね。
出産を機に退職して再就職を考えているけど、定員がいっぱいで自分の子どもを保育園に入れることができないなどの様々な理由で保育という仕事から離れてしまいます。
この記事では実際に保育士の仕事をなぜ辞めたいのか、筆者の実体験を交えながらどうなったらもっと保育士の仕事がやりやすくなるのか考えてみましょう。
保育士の離職率の実態
経験年数が低い層の保育者が多く、7年以下の保育士が約半分が辞めてしまいます。
勤務者 | 採用者数 | 採用率 | 退職者数 | 離職率 | |
全体 | 320.196人 | 48.733人 | 15.2% | 32.823人 | 10.3% |
うち公営 | 116.862人 | 11.904人 | 10.2% | 8.330人 | 7.1% |
うち私営 | 203.334人 | 36.829人 | 18.1% | 24.493人 | 12.0% |
表【引用】厚生労働省「保育士等に関する関係資料の保育所保育士採用者と離職者」
離職率10.3%ということは10人に1人は辞めてしまうの!?
せっかく資格をとったのになぜ辞めてしまうんだろう…。
保育士が仕事を辞める理由として上位に挙げられているものには、以下のものがあります。
保育士が仕事を辞める理由
平成26年3月東京都保育士実態調査では保育士を辞めた人にアンケート調査をして、退職理由が挙げられています。
保育士が仕事を辞める理由の調査結果は以下の通りです。
※多い順
- 妊娠・出産
- 給料が安い
- 職場の人間関係
- 結婚
- 仕事の量が多い
- 労働時間が長い
一方では他業種の辞める理由を見てみると以下の通りです。
- 給料や福利厚生が良くない
- やりがい、達成感を感じない
- 企業の将来性に疑問を感じた
- 人間関係が悪かった
- 残業や休日出勤など拘束時間が長かった
だいたいどの職種も大きく内容は変わらないと思いますが、保育士の仕事を辞める理由には女性特有の結婚や出産が上位にきています。
保育士のお仕事をしていると自分が頑張った分だけとは言いませんが、用意した保育で子ども達からの反応が良いとやりがいを肌で感じることができますよね。
その為「やりがいや達成感を感じない」という理由は他業種に比べると少ないです。
妊娠、出産
保育士を辞める理由としては「妊娠・出産」が最も多いようです。
これは保育士という仕事自体、女性が多くを占めていることもあり、退職理由として上位にきたということなのでしょう。
保育士の仕事はどうしても年度単位で仕事を組んでいるため中途半端な時期に退職するのは他の職員にも迷惑になってしまいます。
しかし妊娠や出産が理由だと身体の健康面の問題もあるため、退職の理由を周りも理解してくれる可能性が高いです。
そして産休や育休をとれたとしても近年は待機児童の問題があるため子どもを保育園に預ける事が難しいです。
保育園の空きがなく、また近くに見てもらえるような存在がいない場合は退職を考えてしまいますよね。
給料が安い
現在保育士の平均年収は342万円です。
若い人だと年収300万円以下で働く人も少なくはなく、他業種に比べると少ないです。そして職場での改善希望としては「給料・賞与等の改善」を希望する割合が最も多いとのことです。
生活するうえでお金は大事だよね。
長く勤めても給料があまり上がらないと言う保育士も多いって聞くよね・・・。
保育士の求人を見ると総支給16万円~20万円のところが多いです。
各都道府県や地域によりますが「一人暮らしするには実際のところ厳しいよね」とよく保育士の友人と話したものでした。
職場の人間関係
こちらの理由は保育士に限らず誰でも、どの職種でも悩むものですね。
また職場の雰囲気が自分に合っているかどうかで仕事のしやすさが変わってきます。
そして保育の中では他の職員との連携をとらなくていけない場面が必ずあるので、人間関係が悪いと仕事にも支障が出てきてしまいます。
特に目の前には子どもという存在があるので大人だけの問題に収まらないかもしれません。
保育室で保育に関係ないおしゃべり
元保育士の筆者の場合、人間関係は良好でしたが複数担任のため互いの保育感や考え方などで苦労することはありました。
乳児を受け持っていたのですが、まだ何も話せないのでこちらが一方的に話かけることが主となります。
乳児の部屋だと自分対赤ちゃんで1時間、2時間ずっと間がもつ訳もなく職員同士で話して過ごすことも多かったです。
またそうなると保育の話から脱線し、プライベートな話題に話が盛り上がることもありましたが実際は嫌だったんです。
他の先生と仲良くしたい気持ちはありますが、子どもを目の前してその場には関係ない話をする事自体、どうなんだろうと思ってしまいました。
そして赤ちゃんともなると帰ってその内容を親に話す事もないので、どこか安心してしまう雰囲気があるんですよね。
子どもに怒るポイントがそれぞれ違う
先輩保育士の子どもとの向き合い方を見て勉強になったり、例えば先生によって怒りのポイントが違ったとしても、子どもに社会性を教える経験になるので一概に悪いとは言えません。
しかし自分は怒らなくてもいいか、見守っていたらいい、など思うことも複数担任のうち誰かがひとつの事柄(食べ物を残す、片付けや全体の遊び、踊りを強制する雰囲気など)にこだわりを持っていること場合があります。
そして自分がそれを子どもに対して注意しないとサボっていると思われないか、また組んだ先生の怒りのポイントはどこなんだろう、とそんなことを考えて労力を使います。
結婚
結婚かぁ。「子どもができたら」「親の世話があったら」って考えると自分の時間や休む暇がないことを想像しちゃうなぁ。
ベテランの先生の中には、そういった状況の中で仕事している方もいるよね。積み重ねた経験からこなせることだけどきっと負担はあるんだろうなぁ。
こちらも妊娠・出産などに並び、女性ならではの退職理由ですね。
しかし現代社会で専業主婦をするのは、家計的に難しいという実情があると思います。
近年では夫婦共働きも珍しくはないと思うのですがなぜ結婚を機に辞めてしまうのか、少し考察してみましょう。
私の元職場の主婦の方も早番や遅番などもあるため旦那さんのお弁当作りや夕飯作り、その他の家事との両立はかなりハードだと言っていました。
遅番でも買い物をして帰ったあとは家で夕飯作り、さらには洗い物や洗濯など想像しただけでも大変なことが分かります。
ひとり担任だった場合、ひとクラス20人程の連絡帳の内容確認・記入、日々の保育内容を考えます。
制作や保育の準備も一人でこなさなくてはいけません。それを考えると保育士の仕事自体が負担になってしまいます。
仕事量の多さ
現在保育士として働いている人の職場での改善希望点について上位にあるのが「事務・雑務の軽減」です。
また保育に入っていない時間は事務仕事として保護者との連絡帳を記入したり、季節ごとや月ごとの保育室の壁面作りなどもしなければなりません。
日々の保育の記録や導入に使う絵本を考えたり保育の準備など、休憩時間を割いて仕事をしなければいけない場合も多いですよね。
その他にも個人記録や日誌、連絡帳記入や作り物などの事務仕事が沢山あります。
また記録類がパソコン入力ならまだいいですが、筆記だと時間がかかって指も痛くて大変です。
そして勤務時間は保育に入っていることが殆どです。
毎日一定の事務時間を与えられるわけではないので家に持ち帰って仕事することもあり、仕事の多さは感じてしまいますよね。
労働時間の長さ
仕事の量が多いということはその分、時間もかかるということですよね。
勤務時間外で職場に残って仕事する場合もあるでしょう。また保育士として働く人は休憩時間がないと感じている方は多いです。
例えば時期によって差はありますが入園時期を例にします。
子どもは生まれて初めて長い時間お母さんと離れるわけですから、泣いている子が殆どです。
泣き止ますのに手が足りなくて休憩をまともに取れない時期が続きますよね。
そして保育士は休憩もとれず、食事もゆっくりとれずにぐったりと疲れてしまいます。
子どもについていて忙しい時はトイレにいくタイミングさえ無いです。
他にも運動会や発表会の時期や年度末は1年の総まとめをしたり、申し送りの資料など作成します。
1日でできる仕事の量ではないため毎日残業することが続くと労働時間の長さを感じてしまいますよね。
最後に
近年少子高齢化とはいえ保育士の人手不足も大きな問題になっています。
事故やケガなど子ども達の命に係わる事も起こりうる緊張感のある仕事です。
仕事が合わないのではなく、職場が合わないでやめてしまった人がいるかもしれません。
現場が安全で質の高い保育をするため、保育士として働いている人が抱えている問題を改善し、離職を防ごうという取り組みもあるようです。
実際に職場によって雰囲気は様々です。
保育の仕事をしたいけどブランクがあり復帰を躊躇している人などは自分らしく保育士として働ける職場を見つけてみてはいかがでしょうか。
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