設定保育と自由保育の違い、自分の性格に合わせて保育計画を立てよう

保育士の豆知識

「保育士と子どもが遊んでいる様子」を保護者や外部の人が見た時、保育士と子どもはその時々を自由に遊んでいるように見えるかもしれません。

しかし、実際は一つ一つの遊びの中で子ども達に何を学んでもらいたいのか、どんな心や体の成長を促したいのか等、保育士はねらいや目的を持って日々保育をしています。

その日々の保育を大まかに指す言葉が「自由保育」「設定保育」です。

保育士として働いていると毎日のように考えたり、耳にする「設定保育」「自由保育」という言葉。

たとえば新人保育士なら「何が違うのかよくわからない」と思っている人もいるかもしれませんね。

本記事では「設定保育と自由保育」について詳しく紹介します。

設定保育(一斉保育)とは

設定保育とは、保育士が目的やねらいを持って、1日の遊ぶ内容を事前に考え、保育士が中心となって遊びを展開する保育です。

保育士は担任を持った時、「年間指導計画・月案・週案・日案・個人記録※」等、クラスの子ども達とどのようにして過ごすのか一通りの計画を立てます。

  • 「年間指導計画」1年間どのような保育をしていきたいか
  • 「月案」1か月間どのような保育を行うか、ねらいや目標
  • 「週案」1週間どのような保育を行うか、ねらいや目標、保育内容
  • 「日案」1日どのような保育を行うのか、保育内容やそのねらい、目標、流れ
  • 「個人記録」クラスの子ども達の成長の記録

多くの認可外保育園では、保育士がクラスごとに保育方針や厚生労働省の保育所保育指針に沿って、「1年間・1か月・1週間・1日」単位の計画書を作成します。

保育士は担当する子どもの年齢や月齢に応じた成長の段階、発達と照らし合わせて、事前に月案や指導案を作成するのです。

日案の中にあるのが、設定保育。

設定保育では日常の保育を更に細かく表すもので、簡単に言うと「子ども達と何をして遊ぶのか」を事前に内容や流れを決めて行う保育です。

自由保育とは

自由保育とは、子どもの自発的な活動や興味を尊重し、その時の子ども達の活動や興味に応じて自由な保育をしながら、保育士が指導する保育です。

自由保育を取り入れている保育園の場合、遊びを提案したり、展開するのは保育士ではありません。

「何をして遊びたいのか」「次は何して遊ぶか」等、子どもが主体となって自由に遊びを決めます。

自由保育は子どもの自由な発想力、考える力、主体性を育てるために有効です。

たとえば自由保育を代表する保育として「モンテッソーリ教育」があります。

【参考】モンテッソーリ教育の基本的な知識について。保育士なら知っておこう

設定保育のメリット・デメリット

設定保育は、担任が主体となって遊びを展開していくので、子ども達の前に立ち、楽しそうに遊びを提案、ルール説明をすることで子ども達の興味を示すキッカケにも有効です。

設定保育のメリット

以下、設定保育を行うメリットです。

  • 時間を計画的、有効的に使うことができる
  • 保育士の意図に沿った保育を展開できる
  • 保育の準備がしやすい(保育がしやすい)
  • 集団行動のルールが身につく(子ども)
  • 集団行動をすることで集中力や忍耐力が身につく(子ども)

たとえばクラス全員で制作を行う時間。

子ども達は周りの様子を見て「今はこれに絵を描く時間なんだ」「周りの子はもう先に進んでいる」「終わったら手を膝に置いて待つんだ」・・・など考え、集団に合わせるようになります。

それに応じて育つ力が集中力や忍耐力です。

設定保育を取り入れいる保育園の子ども達は、集団で行動することルールが自然と身につきます。

設定保育のデメリット

以下、設定保育を行うデメリットです。

  • 保育内容のアイデアを考えるのが大変
  • ワンパターンになり、アイデアが尽きる
  • 子どもの様子がしっかり予測できていないと計画通りに進まず保育自体が崩れてしまう
  • 子どもが満足するまで探索行為や活動する時間を挙げられないことがある
  • 常に次の保育、時間を気にしていしまい保育に集中できないことがある
  • 子どもの主体性や自発性が育たず、指示がないと動ない子になる

クラスを任されてる担任保育士は「何をして遊んだら子ども達がイキイキするのか、楽しいのか」と毎日、考えています。

保育士から子ども達の成長・関心にピッタリな保育を提案することで、子ども達は更に意欲的に活動し、成長するからです。

しかし、子ども達の関心に目を向け、無理なく狙いや目標を達成し、子ども達に飽きさせない保育を提案するのは簡単ではありません。

「保育のネタが尽きた」とアイデア不足で頭を悩ませる保育士も多いでしょう。

他にも子ども達は、保育士から提案や指示ばかりされる保育に慣れてしまうと「〇〇はこうするんだ」と保育士から与えられた考え方以外のことを自由に想像することが難しくなってしまうこともあります。

保育士の役割

設定保育を行う上で保育士の役割は以下の通りです。

  • クラスの子ども達の様子を予想し、ねらいに応じた内容を考える
  • 子どもの興味や発達に応じて保育計画を立てる
  • 子どもの人数や体調に応じて行う時間や場所等決める
  • 時間配分や遊びの内容がどのように発展するのか考え、保育によっては事前にそれに使えそうな物を用意する

クラスの子ども達をよく観察し、日々の保育で子ども達と関わる中で「どんな遊びを設定したら良いか」「子ども達の心や体の発達を促すためには、どのような保育を行うと良いか」を考えます。

自由保育のメリット・デメリット

上記でも触れましたが、設定保育と異なり、自由保育は子どもが主体です。

子どもの自立心や考える力を育てたいと思っている保育園では、自由保育の取り入れています。

自由保育の場合、子ども達の前に立って働きかけるというよりも、保育士は子ども達の活動を見守ることが多くなります。

とはいえ「保育士が一切関わらない・見守るだけ」ではありません。

保育士は子どもの意見や気持ちを尊重しながらも、ある程度計画を持って自由保育を行います。

自由保育のメリット

以下、自由保育のメリットです。

  • 一人ひとりの子どもの興味・関心のある物が把握でき、より子どもを理解できる
  • 自由保育によって子どもの主体性・自発性、考える力が育つ
  • 子ども達は満足するまで、好きなことができるため充実感が得られる
  • 興味のある遊びを通して、友達関係が広がることもある

先ほど設定保育のデメリットにも挙げた通り、設定保育の場合は子どもが受動的の場合が殆どです。

自分で何かを考える機会はありますが、「遊びは保育士が提案してくれるもの」と思って集団で生活しています。

一方、自由保育で育った子どもは「自分が今何をしたいのか」明確です。

そして自分で考えることが自然と身につき、行動することができます。

自由保育のデメリット

以下、自由保育のデメリットです。

  • 保育の加減(援助や声掛け)が難しい可能性がある
  • 子どもの自由な活動を見守るためには保育士の人数も必要(個々の活動を見守るため)
  • 子ども同士のトラブルが多くなる
  • 子どもが集団行動をすることで苦痛を感じることがある

20人以上がいるクラスの中で自由保育をすると、たとえば同じ室内でも「塗り絵をする子」「おままごとをする子」「積み木をする子」・・・それらを1人で把握し、安全に保育するのは難しいです。

そして上記のような玩具が沢山出ている状況だと、必然的に子ども同士の玩具の取り合い等のトラブルも増えます。

そのため保育士の人数を確保する必要があります。

人が少ない保育園の場合、理想の形で自由保育を行うことが難しいかもしれませんね。

保育士の役割

自由保育を行う上で保育士の役割は以下の通りです。

  • 「子どもが主体」ということを意識する
  • 子どもの興味や関心に応じて環境設定や声掛けを行う
  • 自発性があまりない子に対して遊べるように働きかける
  • 遊びが楽しくなるように時には保育士から1つの意見として遊びの提案をする
  • 子ども同士のトラブルにならないように配慮する

子どもの主体性、自発性を意識しながらも保育士が適切な保育を行うことで、自由保育はさらに子ども達にとって、良い経験になります。

設定保育と自由保育、それぞれの魅力とは

「設定保育を行うのか」「自由保育を行うのか」どちらの保育もメリットがあるので、「どちらを取り入れるか」は、基本的にはクラス担任に委ねられている場合が多いかもしれません。

設定保育を取り入れるのか、自由保育を取り入れるのか、その時々に担任が適格な判断をすることによって、子ども達が保育で体験する内容は更に充実します。

設定保育は事前準備ができる、保育の流れを計画的に考えられる

保育士は設定保育の方が、保育準備がしやすいでしょう。

なぜなら、保育士が考えた保育内容で保育を展開していくからです。

そして設定保育の場合は、「〇〇する時間は何分設ける」「準備する材料や玩具」など、保育士は計画を立て実行することができます。

「こんな体験をして欲しい」「こんな風に感じて欲しい」と保育士のねらいと子どもの反応が合致した時は保育士のやりがいを感じられるので、それが設定保育の魅力です。

事前に子ども達の予測が上手にできる人ほど、充実した設定保育ができるでしょう。

自由保育はその場のひらめき、子どもの反応に合わせて保育ができる

乳児であっても、幼児であっても自由保育を適度に取り入れることで子ども達は日々の保育園生活に満足するでしょう。

集団生活を主とする保育園の中では、子ども達の個の意見や気持ちが尊重されて、好きなように探索できる、興味のままに一つのことに熱中できる機会や時間があまりありません。

そのため「保育園では自由がない」「家のようにゆっくり好きなもので遊べない」と感じてしまう子どもは多いのです。

そのため日中の活動時間に、自分の好きなものや関心があるもの(玩具等)を細かな制限なく遊んでいられる、自由に考え、選択できるのは、子どもにとっては嬉しい時間ですよね。

その時々の子どものひらめきや興味によって保育内容が変わるので、子ども達からしてもわくわくする時間になるでしょう。

それが自由保育の魅力とも言えます。

室内遊びや公園等の探索時間であっても、子ども達の思いのままにできる時間が少しでもあると良いですよね。

自分の性格に合わせた保育園を選ぼう

本記事の内容をまとめると、設定保育と自由保育の違いは「保育士主体」か「子どもが主体」かの違いです。

設定保育の場合は、事前に準備し、保育士が主体となって保育を展開するので保育がしやすいと感じる人が多いでしょう。

自由保育の場合は、「子どもが主体」ということを意識しながらも「遊ばせっぱなし」という状況にならないように、適切な指導をすることが難しいのです。

とはいえ、子どもの面白い発想が好きで、臨機応変に対応できる保育士なら自由保育を楽しいと思えるかもしれません。

自分に合った保育方法で保育することで、保育士の仕事へのやりがいを感じることができます。

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