「お泊り保育で何をしようか」と年長の担任になったとき、まずお泊り会のことを考える保育士の方も多いでしょう。
子ども達はお泊り保育に対して期待をしていたり、不安を感じていたり様々な心境でいます。
そんな子ども達にとって楽しい思い出を作ってあげたいですよね。
本記事ではお泊り会のねらいや1日の流れ、お泊り会のレクレーションアイデアなど紹介します。
お泊り保育の概要
子どもや保護者、そして保育士にとっても大きなイベントとなるのがお泊り保育です。
運動会や卒園式と同様、保育士は緊張を感じるイベントですよね。
保育園のお泊り会にはどのようなねらいがあるのか以下、紹介します。
お泊り保育のねらい
お泊り会を通して子ども達にどんな体験をしてもらうのか、どんな心の成長を期待するのかなど、お泊り会は子どもの成長に繋がります。
ねらいの例を挙げると以下の通りです。
- 保護者のもとを離れて過ごし、自立心を育て、自信をもつ。
- 共同生活の中で友達と仲間意識を深め、協調性を身に付ける。
- 集団生活の中で規則正しい生活をおくる。
基本的には上記のねらいをもって、お泊り保育の設定を考えている保育園や保育士が多いです。
さらに具体的な取り組みについて説明します。
食育
お泊り会は食育をする良い機会になります。
たとえばお泊り保育の夕食や朝食をクラスの皆で考えるところから取り組むと、子ども達にとっても思い出に残るお泊り会になります。
お泊り会の時に子ども達に買い出し体験をしてもらったり、実際に夕食作りをする保育園は多いです。
子どもが自分達で「からあげ」「わかめのサラダ」などいつもの給食から好きなメニューを挙げ、多数決で選びます。
そしてお泊り保育の前日や当日に、保育士と子ども達で実際に買い出しに行くのです。
そこで「お母さんやお父さんはいつもこうしてメニューを決めて、買い物に行ってくれてるんだ」ということに改めて気づく子もいます。
他にも「買ったものってこんなに重いんだ」と感じてくれることでお泊り会以降、お手伝いに積極的になる子もいるので良い経験になりますね。
協調性
お泊り会には皆で力を合わせてやる場面が、いくつもあるのでそこで協調性が身につくでしょう。
そして一緒にご飯を作るグループ、布団を敷く時にも皆で協力します。
他にも普段あまり話したことがない友達とお泊り保育を通して仲良くなったり、グループ意識をもって協力するようになる子がいます。
自立・自信
子ども達の中には、親から離れてどこかに泊まる体験が初めての子もいます。
夕ご飯を食べる時に「隣にお母さんがいない」「寝る時にも親がいない」と考えるだけで寂しいく思い、不安に感じる子もいるでしょう。
しかし担任や友達に励ましてもらいながら、楽しい気持ちでお泊り会の1泊2日を過ごすことで「自分は親がいなくても保育園に泊まれた」ということが大きな自信になるのです。
そして普段は甘えていても、自分の身支度を自分でやっている友達の姿を見習ってやってみたりと、自然に自立心も育ちます。
開催時期
保育園によって開催時期も異なるようですが、6月~8月が多いです。
新しいクラスになって数か月経っていること、行事が落ち着いている時期に行います。
場所
お泊り保育は、主に保育園で行われます。
他には宿泊施設を借り、お泊り会をする保育園もあります。
年齢
基本的には5歳児、年長を対象にした行事です。
保育園によっては年長になると行事等で忙しくなることもあり、年中の4歳に行うこともあります。
持ち物一覧表
お泊り会で子どもが用意する物は以下の通りです。
- リュック
- お泊り会のしおり
- 帽子
- ハンカチ
- 着替え
- パジャマ
- 歯ブラシ
- 下着
- 洗面用具
- タオル
- エプロンと三角巾
- 常備薬
- 健康調査票(保育園による配布)
以上の物がお泊り会で必要な物です。
※保育園によってお泊り会のレクレーションの内容が違うため、持ち物が異なる場合がある
そして、保育士は「持ち物には必ず名前を書いてください」と伝えましょう。
何度もしつこく言っていても名前を忘れてしまう保護者がいますが、そういった保護者には前日にもう一度伝えておくと良いですね。
子どもと保護者への働きかけ
保育士はお泊り保育のために、何か月も前から保育内容や1日の流れについて考えて準備します。
子ども達に「楽しみ」と思わせられるのも、「お泊り会嫌だ」と思わせるのも保育士の働きかけ次第。
子どもと保護者もお泊り保育が近くなってきたら、保育士とはまた違った視点で期待感や不安な気持ちで過ごすこともあるでしょう。
子どもと保護者の気持ちに寄り添いながら、声掛けや指導ができたらベストですね。
子どもへの対応
子どもって行事の前になると、毎日落ち着きがなくて怒ってしまう・・・。
保育士も行事の前になると、余裕なくなるよね。
お泊り会という行事に対して期待感を持つ子、不安に思ってしまう子など子どもによって反応は様々です。
大体の子どもは楽しみにしてくれますが、親と離れることが初めてな子だとかなり大きな不安に感じています。
お泊り会当日に楽しめるように、数か月前から段取りを決めておくと良いですね。
期待感をもっている子
お泊り保育を楽しみにしている子は、お泊り保育の日が近づいてくるといつもより落ち着きがなくなってしまいます。
それ自体は可愛いらしい子どもの姿ですが、保育士はお泊り会当日、そしてお泊り会に無事に参加できるように子どもが怪我や病気をしないように声をかけてあげましょう。
朝の会や帰りの会で、お泊り保育までは怪我をしないように落ち着いて過ごすと約束事決めても良いかもしれませんね。
不安を感じている子・泣く子
不安に感じている子は、親と離れることや保育園で過ごす夜が怖いと感じていることが多いです。
親と離れることが寂しい、悲しくて泣く子が多いですよね。
そういう時には何が原因で泣いているのか、話を聞いて不安を解消してあげましょう。
たとえば「〇〇ちゃんが眠れるまで先生がずっとついててあげるからね」「起きてトイレに行きたくなったら先生の誰かは必ず起きてるから大丈夫だよ」と安心できる言葉をかけてあげると不安が軽くなるかもしれません。
他にも保育園で過ごす夜が怖い場合は「お泊り会の夜は〇〇もするし、△△もするし、楽しいこと沢山しようね」とお泊り会の夜に対する印象を良いものにしてあげましょう。
日頃から関わっている子の様子から、どのような言葉をかけてあげたら安心するのか考えておくと良いですね。
保護者への対応
子どもより保護者への対応の方が大変って時あるよね。
あるある。
お泊り保育があるからといって事前に友人の家や祖父母の家で、練習する家庭もあります。
それでも「うちの子は大丈夫かな」と不安に思う保護者の方は多いです。
親もとを離れて楽しくお泊り保育をしてほしい反面、その成長が少し寂しいと感じる保護者もいます。
「うちの子が心配で・・・」という保護者
そういった保護者の方には、安心して子どもを1泊2日預けられるように声をかけてあげましょう。
たとえば普段の様子から「〇〇ちゃんはお泊り保育のために、保育園では一人で~することを頑張っているんですよ」と子どもがお泊り保育に向けて取り組んでいることなど、伝えてあげてください。
例年そういった子がいると思うので、その子のお泊り会の前後の様子を例に挙げて話すのも良いでしょう。
子どものいない時間を楽しみにしている保護者
滅多にない子どもがいない時間ということもあり、夫婦揃って久しぶりのデートや友人との飲み会など、親にとっても良い機会ですよね。
しかしそういった保護者、そうでない保護者の方々にも注意しなければいけないことがあります。
保育士から一言、「突然の子どもの高熱や天災などの緊急時にお迎えに来られる範囲で、大人だけの時間を楽しんでください」と伝えましょう。
常識の範囲ですが、やはり念のためにお便りや保護者懇談の時に言っておくと良いですね。
行事になると羽目を外しすぎて大けがや高熱を出す子がいる場合があります。
一日の流れ
お泊り保育は土日に行われることが多いです。
保育士もその日に限っては連勤になる人もいるかもしれません。
1日目の流れは以下の通りです。
時間 | 流れ | |
15:00 | 集合・健康チェック | |
15:30 | 開会式 | |
16:00 | ゲーム・レクレーション | |
17:00 | 夕食作り | |
19:00 | 花火・肝試し | |
20:00 | 歯磨き・寝る準備 | |
21:00 | 就寝 |
家庭の負担は増えますが、怪我の恐れや職員の負担が軽減されるので検討してみると良いでしょう。
お泊り会でお風呂に入る、温泉に行くという保育園もありますが、時間の関係や安全面を考慮し、保育園に集合する前に家庭で入浴を済ましてもらうのも一つの手段としてあります。
お風呂に充てていた時間を、レクレーションの時間に充てることができます。
2日目の流れは以下の通りです。
時間 | 流れ | |
6:00 | 起床・身支度 | |
6:30 | ラジオ体操 | |
7:00 | 朝食 | |
8:00 | お片付け | |
9:00 | 閉会式 | |
9:30 | 解散 |
2日目は子どもも保育士も疲れているので、ゲームなどはせず比較的ゆっくり過ごす保育園が多いようです。
保育士は夜中交代で見回りがあるので、まともに眠れません。
2日目に保育で何かしようとすると保育士にもかなり負担にもなるので、無理のないスケジュールを組むと良いですね。
お泊り保育中のイベント・レクレーションアイデア
保育士としては「なにをしたら子ども達が喜ぶかな」と1泊2日をどう過ごすか、かなり悩みますよね。
保育園によってできること、できないことがあるのでその範囲で楽しい時間を過ごせるように様々なアイデアを出します。
筆者の経験、保育園で人気なお泊り会のイベントは以下の通りです。
宝探し
宝探しはあまり制限がないこと、比較的に安全であり準備にも時間がかかりません。
普段の保育でゲームをするなら、一部屋で出来るゲームです。
お泊り会では特別感を演出するためにホールにしたり、職員に協力してもらって園全体でやってみるなど応用がきくゲームです。
お化け屋敷・肝試し
お泊り会といえば、肝試しが定番ですね。
真っ暗な園内を子どもに探検してもらいます。
筆者の元職場の保育園を例にすると自分達のクラスがスタート地点で、1番離れている部屋がゴールです。
ゴールまでの各部屋に職員がいて、5人1組で子ども達が部屋を周り、スタンプラリーをしていくという流れでした。
もちろん職員は怖いお化けに変装して待ち構えています。
スタンプをもらうにはお化けのお題に答えたり、ゲームにクリアしなくてはいけません。
筆者が部屋に来た子ども達に出したお題は「一人ひとりものまねをしてください」と「一人2つ積み木をもって高く積み上げてください※」でした。
※積み上げた後、10秒数えて倒れなかったら成功
作品作り
子ども達に何を作りたいか、考えてもらうと良いよね。
自分達で決めたとなれば、張り切るよね。
写真立てやビーズを使ってブレスレットを作るというのが、子ども達に人気です。
ビーズでブレスレットは女の子が喜びますよね。
ビーズでブレスレット作りだとビーズを選んだり、せっかく通したものが散らばってしまってなかなか完成しないのです。
普段の保育なら時間の制限の関係でゆっくりできませんが、お泊り保育だと比較的子ども達に無理のないペースで作品作りができます。
普段はできないような手の込んだ作品作りをすることで、子ども達にとって思い出に残る作品が出来上がるでしょう。
キャンプファイヤー
園庭がない保育園、住宅街の中にある保育園の場合はこれは難しいですね。
季節的にも、夜に手持ち花火をするという保育園もあります。
子ども達が夜に期待感が持てて、夜がくるのを怖がっている子にとっても気がまぎれるので夜のお楽しみがあるのは良いのでしょう。
スイカ割り
スイカ割かぁ。ちょっと大変そ~。
意外と盛り上がって、例年やることになるんだよね。
筆者の元職場で実際に行ったイベントです。
このために子ども達がスイカを買いに行ったので、結構大変だったようですね。
クラスを2つに分けて、定番のスイカ割のスタイルでゲームを楽しみます。
そして子どもが割ってくれたスイカですが、衛生管理の都合上子どもに食べさせることができません。
子ども達には内緒で、調理員の方が切ってくれたものを出すという形でした。
ホールに新聞紙を大きな丸になるように敷いて、皆で向かい合わせになって食べます。
新聞紙を敷いているのでホールも大して汚れません。
自宅ではなかなかしない昔ならではのゲームを楽しむのも良いですね。
お泊まり会時の保育士の勤務時間や残業代、深夜勤務手当について
子どもにとってはお泊り会は楽しい行事の一つですが、保育士の方は結構大変です。
子どもや保護者へのサポートも大切ですが、保育士の勤務内容を把握しておかないと当日の準備ができませんよね。
お泊り保育は毎年担任によって内容が異なりますが、基本的に時間帯などの日程は変更はないでしょう。
お泊り保育の前の月になると職員会議で打ち合わせがあります。
勤務時間と休憩時間
先ほども触れた通り、お泊り保育は土日で行われることが多いので、土曜出勤だった場合はかなりしんどいでしょう。
お泊り保育は1泊2日、ずっと保育園で過ごすので「どの時間が勤務時間に該当するんだろう」と疑問に思われる方もいるでしょう。
子どもの保育に入っている時間は勤務時間となります。
たとえば子どもと一緒に夕ご飯を食べる、寝る身支度をするという時間も勤務時間です。
他にも休憩時間についても気になりますよね。
お泊り保育中は園長や主任、担任以外職員も出勤します。
そして21時になり子どもが寝るまで、場合によっては休憩に入ることができるかもしれません。
基本的には子どもが寝るまで1日中通しで保育に入ります。
たとえば先ほどのお泊り保育の1日の流れを参考にすると、子ども達が登園してから15時~21時は休憩はありません。
21時以降に職員が交代で仮眠をとります。仮眠時間が休憩時間に該当します。
深夜勤務手当
先ほども触れましたが、21時以降交代で保育に入ります。
子ども達がしっかり眠れているか、夜トイレに行きたくなった子がいたら連れていくなどの業務があるのです。
22時から翌5時までは深夜勤務手当として0.25倍の割増賃金がつきます。
まとめ
年長の担任になった保育士の方は、お泊り会のことを考えるとプレッシャーに感じますよね。
しかし早いうちから内容や段取りを決めておくと、時期が近づいたときに慌てなくて済みます。
年長の担任ではない保育士の方でも、自分が年長の担任になったときのために毎年のお泊り会の流れに目を通しておくと良いでしょう。
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