2019年10月1日より「幼児教育・保育の無償化」が施行され、3~5歳児クラスの保育所、幼稚園、認定子ども園などが対象になっています。
今回はこの無償化で何が無償になり何がならないのか、無償化以前とは何が違うのか、さらに認可の保育施設と認可外の保育施設の差などを紹介します。
保育園や幼稚園などに通う子どもやこれから通う子どもがいる方は、参考にしてみてください。
幼児教育・保育の無償化とは
今まで保育所や子ども園の費用は「応能負担」という世帯収入によって段階的に定められていましたが、2019年の10月から大きく変更されました。
3~5歳児クラスの子供たちが通う、幼稚園、保育所、認定子ども園などの利用料が無償化されたのです。
ではこの「幼児教育・保育の無償化」がどのようなものなのでしょうか。
無償化の対象となる年齢
対象の年齢については内閣府のホームページにも「3~5歳児クラス」と書かれています。
「6歳は無償にならないの?」と思われるかもしれませんが、これは3歳から5歳ではないので注意が必要です。
実際の対象期間は小学校に入学するまでの3年間
無償になるのは「満3歳になった後」の4月1日~小学校入学前までの3年間です。
2020年の4月5日に満3歳の誕生日を迎えたとすると無償化が適用されるのは2021年の4月1日から小学校入学前までの3年間が対象となります。
幼稚園は満3歳から
幼稚園は入園できる時期に合わせて満3歳から無償化となります。(参考:内閣府HP「幼児教育・保育の無償化の概要」)
無償化の対象となる年齢は保育所や認定子ども園では子どもが4月1日時点で3歳の年から卒園まで、幼稚園では満3歳になってから卒園までとなります。
0歳から2歳までの子どもたちの無償化について
住民税非課税世帯なら0~2歳の子どもも無償化の対象になります。
住民税非課税世帯とは
世帯全員の住民税が非課税になっている世帯のことです。
住民税非課税世帯の判断は住民税非課税世帯かどうかで決まります。
年間を4~8月と9~3月の2回に分け、4~8月は前年度の住民税の課税状況が判断材料となり、残りの9~3月まではその年度の住民税の課税状況を判断材料とします。
参考:内閣府「令和元年10月1日から幼児教育・保育の無償化がスタートします。」
従来制度の継続も
保育所などを利用する最年長の子供を第1子とカウントして、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償となります。
また年収が360万円未満相当世帯については第1子の年齢は問われません。
無償化の対象施設
幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育も無償化の対象となります。
幼児教育・保育の無償化により保育園や認定子ども園は満3歳を迎えた次の年の4月から卒園までの3年間、幼稚園では満3歳から卒園までが無償になります。
また住民税非課税世帯なら0~2歳の子どもも無償化の対象になるほか、従来の制度も利用できる部分もあるので、子どもがいる家庭はチェックしてみてください。
今までの制度との違い
2019年10月1日に施行された「幼児教育・保育の無償化」により3~5歳児クラスの幼稚園、保育所、認定子ども園などを利用するすべての子どもが無償になりました。
それまでの「応能負担」とはどのような違いがあるのでしょうか?
応能負担とは
保護者の世帯年収によって支払う金額が変わるシステムです。
そのため共働きなどで所得が多い世帯では支払う金額も高くなり、逆に住民税非課税世帯などの低所得世帯はほぼ無償でした。
認可保育園の場合
月額の保育料平均21,138円で、年間では約25万円の負担でした。
保育料無償化後
保育所、認定こども園などを利用する3~5歳児クラスの全ての子供たちの利用料が無償になります。年間で25~32万円程度が無償です。
月額上限額
幼稚園については月額上限25,700円と定められています。
新しい制度では幼稚園で上限はあるもののすべての子どもたちが利用可能で、以前の応能負担のように世帯収入や地域で違いはありません。そういった意味で平等な制度と言えます。
ただし注意が必要なのは、すべての費用が無償になるわけではないという点です。
今後もかかる費用
「幼児教育・保育の無償化」が施行されましたが完全無償化ではありません。
つまり3~5歳児クラスでも保護者が負担しなければならない費用があるのです。では何が無償になりどの費用が発生するのでしょうか?
無償になるのは保育の利用料のみ
今回の制度改正で無償になったのはあくまで保育の利用料のみです。
そのため基本的には以下の費用が今後も発生します。
負担1. 給食費
主食費と副食費の負担が必要です。
負担2. 入園の際に購入が必要となる物の代金
制服、体操服、通園かばんなどを購入しなければなりません。
負担3. 通園送迎費
送迎バスなどがある場合、その費用も発生します。
負担4. 行事参加費
遠足、クリスマス会などの費用が発生します。
負担5. 日用品/文房具代
保育園で昼寝の時間に使うパジャマやお絵かきに使うクレヨンなどが考えられます。
上記のような負担が保護者には発生しますが、給食費に含まれる副食費については免除される場合があります。
副食の免除
年収360万円未満相当世帯の子供たちと全ての世帯の第3子以降の子供たちについては、副食(おかず・おやつ等)の費用が免除されます。
無償化の対象外になる費用を紹介しましたが、地方自治体により差があるので必ず確認してください。
また今回の幼児教育・保育の無償化により逆に費用負担が増えるケースもあるのです。
費用負担が増えるケースの例
2019年10月23日の朝日新聞電子版では大阪府堺市、千葉県市川市、山梨県甲府市で負担増の逆転現象が起きたと報じています。
なぜ負担が増えてしまったのでしょうか?
堺市で費用負担が増えた原因
これまで堺市は子どもの多い世帯に対して、認可保育園などに通う第3子以降の子どもと、第2子以降の4、5歳児の利用料を保護者の年収や上の子どもの年齢に関係なく無償にしていました。
さらにおかず代もこの利用料の中に含まれていたのですが「保育の無償化」ではおかず代は保護者の負担になります。
つまり第3子以降、第2子についても4、5歳児を保育園などに預ける場合、おかず代の分費用が今までより高くなるのです。
堺市は制度改革に伴い国の方針に従うことにしていたため本来負担を減らすための政策にも関わらず、負担が増える世帯が発生してしまいました。
子どもの多い世帯向けに行なっていたおかず代の免除制度の変更が負担増の原因となっています。
住民税非課税枠拡大の影響
以前は年収260万円未満で住民税非課税となっているひとり親世帯や生活保護世帯、そして一部の子どもの多い世帯はおかず代の免除制度が適用されていました。
保育の無償化以降は対象を年収360万円未満の世帯まで拡大し、収入が360万円以上の子どもの多い世帯向けの免除制度には、上の兄弟姉妹の年齢に制限があるのです。
「保育の無償化」以降の負担増加現象は、皮肉にも手厚い利用料減免政策を独自に施行していた自治体で起きています。
例をあげると、千葉県市川市では3人以上18歳未満の子どもがいる世帯について、3人目以降の保育園利用料を月25,000円の減額してきました。
保育の無償化の内容に従いおかず代を保護者が実費で支払うことになり、約5千人いる3~5歳の園児のうち約280人が負担増になってしまったのです。
内閣府はこの事態について、「無償化にあわせた免除対象の拡大で、すべての逆転現象が解消されるか、調査や検討は行わなかった」と発表しています。
「保育の無償化」といっても完全無償化ではなく、給食費や制服、カバンなど費用を負担しなければならない物があるのでその点はしっかり確認しておきましょう。
また、中にはこの制度により負担が増えるケースもあるのでこちらも注意が必要です。
幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育以外の保育施設は?
今回の保育無償化は認可外の保育施設を利用している子どもも、条件を満たせば上限はありますが無償になります。
まず認可保育施設と認可外保育施設の違いを確認しておきましょう。
認可保育施設とは
認可保育施設には、認可保育園、認定子ども園、そして地域型保育事業があります。
さらに保育園と子ども園は公立と私立があり、地域型保育事業は、小規模保育事業、事務所内保育事業、改定的保育事業、そして居宅訪問型保育事業の4つからなるのです。
認可保育は厚生労働省管轄の児童福祉施設で、保護者が何らかの理由のため我が子に保育を充分にできない場合、小学校に入学するまで預かります。
国や自治体から補助金が出るのも特徴です。自治体が子どもの年齢などにより入る園を割り振りします。
幼稚園は保育施設に含まれない
認定保育施設に幼稚園の名前が出てこないのは、幼稚園は就学前の子どもに学習をさせるための施設のため保育施設に含まれないからです。
管轄も文部科学省で、保育園の厚生労働省とは異なります。ただし今まで解説してきたとおり「保育の無償化」の対象にはなっています(月額上限25,700円)
認可外保育施設とは
一般的に「認定外保育園」と呼ばれ、大きく二つに分かれます。
地方自治体が独自の認証・認定を与えた保育施設と、民間が行なう企業主導型保育事業・幼稚園の預かり保育・一時預かり事業などです。
地方自治体が認定を与えた施設は自治体から補助金が出ますが、民間の施設には国と自治体からの補助は基本的にありません。
ただし、企業主導型保育事業などの条件を満たすことによって助成金が出る場合もあり、認定保育施設と認定外保育施設の大きな違いは国から認定を受けているかどうかです。
それでは認定外保育施設にはどのような事業があるのでしょうか?
企業主導型保育事業
2016年に始まった事業で、認可外保育施設でありながら国から保育所の運営費・整備費の助成金が出ます。
どのような特徴があるのか確認してみましょう。
無償化の対象者
3~5歳までの保育の必要性のある子供と住民税非課税世帯の0~2歳までで保育の必要のある子供が対象になります。
保育の必要のある子供たちとは
①と②に該当するのが「保育の必要な子ども」です。
①「従業員枠」を利用している子供:全ての子供が保育の必要性のある子供です。
②「地域枠」を利用している子供:市町村の保育認定(2号・3号)を取得している子供になります。
利用料については標準的な利用料が無償化されます。
参照サイト:企業主導型保育事業「【別添】無償化に関する利用者向け案内資料(PDF)」
無償化の対象になるため必要なこと
利用している企業主導型保育施設に必要書類を提出しなければなりません。
預ける施設に必要書類を提出すれば、企業主導型保育事業でも認可保育園と同じ年齢の子どもが無償化の対象になります。
幼稚園の預かり保育
幼稚園は教育機関であり保育園とは異なり「保育」ではなく「教育」を受けるための施設です。
その幼稚園で行われる「預かり保育」とはどういうものでしょうか?
預かり保育とは
幼稚園の本来の教育の時間が終わった後も、仕事など諸事情で迎えに来られない保護者の子どもを預かる仕組みです。
幼稚園は保育園とは異なり教育のための施設なので、預かり保育は「保育」という名前がついていても幼稚園の「課外活動」であり「教育活動」の一環と位置づけられます。
無償の対象
幼稚園の利用に加え、月内の預かり保育利用日数に450円を乗じた額と、預かり保育の利用料を比較し、小さい方が月額11,300円まで無償になります。
無償化の対象になるためには
住んでいる市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。
原則として通っている幼稚園を経由して申請をしなければなりません。
正規の時間である9〜14時に加え、預かり保育では夕方17時頃まで預かってくれる幼稚園が多いようですが、中には19時頃まで預けられるところもあります。
また園児の数が少なくなるため、他のクラスと一緒に保育を行う場合もあり、普段は接しない園児と関わり新しい友達ができるのも預かり保育の特徴と言えます。
その他の認定外保育施設
企業主導型保育事業と幼稚園の預かり保育意外にも様々な認定外保育施設があります。
ここでは「一時預かり事業」と「病児保育事業」、そして「ファミリー・サポート・センター事業」について簡単に紹介します。
一時預かり事業
「一時預かり」とは、何らかの事情により子どもを一時的に預けることのできる施設です。
「一時保育」や「短期保育」とも呼ばれます。
病児保育事業
「病児保育」とは、子どもが風邪や発熱などの症状があり保育園で預かってもらえず保護者も諸事情により看病できない場合、保護者に変わって子どもの世話をする施設です。
ファミリー・サポート・センター事業
「ファミリー・サポート・センター事業」は「子育て援助活動支援事業」とも呼ばれる、自治体主体の子育てを助け合う活動です。
地域で育児などの援助を受けたい人と支援を行いたい人が、それぞれ会員となり構成され、子どもの送迎や預かりなどの依頼に対応します。
一言でいえば、支援を受けたい人と支援をしたい人をマッチングするのがファミリー・サポート・センターの仕事です。
3つの事業を紹介してきましたが、無償の対象条件はどうなっているのでしょう?
無償の対象
3~5歳の子どもが対象となり上限は月額35,000円までです。
また0~2歳の住民税非課税世帯の子どもも対象となり月額42,000円までの利用料が無料になります。
このように「保育の無償化」により認可外の様々な保育施設や保育事業も対象となっています。
ただし上限があることや申請が必要など注意点もあるので子どもを預ける場合は保護者自ら利用できるか調べておく必要があります。
認可が降りている保育施設と認可外の保育施設による無償化の違い
「幼児教育・保育の無償化」がどのような施設で誰が対象となり何が無償になるのかを確認してきました。
そのなかでもやはり大きな違いとなるのが認可を受けた施設か認可外かということです。
今回の無償化は認可外も含まれ幅広い施設が対象になっていますが無償化の内容は一律ではありません。その違いをまとめます。
無償化の対象まとめ
認可保育園と認可外保育園、そして幼稚園も含めて比較します。
対象 | 無償化対象の条件 |
認可保育園 | すべての施設利用費が無償化の対象 |
幼稚園 | 額25,700円までが無償化の対象 |
認可外保育園 | 月37,000円までが無償化の対象 |
今回の国により行なわれた無償化で対象となるのはあくまで「利用料」のみです。認可保育園でも食費や行事費などが発生します。
しかし、それは認可外保育園と幼稚園も同様ですし、この2つには上限が設定されているのに対して認可保育園は上限がないので負担を少なくできると考えられます。
ただし地方自治体によって支援され認可と認可外の差がないところもありますし、設備や教育システムが充実している園を選べば費用も高くなるので一概には言えません。
今回の無償化を前進ととらえて
「幼児教育・保育の無償化」はあくまで利用料だけで、幼稚園や認可外の保育施設は上限があります。
それでも幅広い施設が対象になっていますし、一部の方を除けばおおむね保護者の負担を減らしました。
まだまだ完全無償化には程遠いですが、次の世代にはもっと保育が支援される制度になっていることを期待したいです。
そして今はこの制度をしっかりと活用しましょう。
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