保育士をしていると「保育士をしていてよかったな」と感じる瞬間が沢山あります。
仕事をしていてやりがいを感じるというのは、意外と難しいものです。
当たり前に過ごしている仕事の間にも、あなたがいたからこそ子どもが安心して保育園に過ごすことができているという場面があるでしょう。
子どもにとっては大好きな保育士が保育園に当然のようにいてくれることが、日々の支えになっているのです。
本記事では保育士のやりがいについて、筆者の体験を交えて紹介していきます。
保育士の7割は満足と回答。仕事にやりがいを感じている
平成26年3月東京都保育士実態調査によると、7割強の保育士が保育士の仕事にやりがいを感じると答えています。
半数以上の人が仕事に対してやりがいを感じる仕事というのは、珍しいのではないでしょうか。
たしかに「給料が低い」「残業がある」「休憩時間が確保されていない」などの不満はあります。
不満を抱えながらも保育士を続けていくという支えなっているのが、やりがいなのです。
極端な話かもしれませんが、もし保育士の仕事にやりがいがなければ保育士として働き続けることはとても難しいでしょう。
それくらい保育士の働く原動力となっているのです。
保育士仕事、どこに魅力がある?
「保育士はやりがいのある仕事」というのはわかりますが、「皆何にやりがいを感じているんだ」とふと疑問に思うことがありますよね。
保育士の仕事のやりがいとはどんな時、どんなことに対して思うのでしょうか。
現在保育士として働く人も「確かにこれって他の仕事では経験できないな」と気づくことがあるかもしれません。
他にもこれから保育士を目指す人は保育士の仕事のどういったところにやりがいがあるのか知っておくと働くのが楽しみになったり、面接で活かしてくださいね。
以下、保育士の仕事のやりがいについて紹介します。
大変なこともあるけど子どもの関わりの中で感じるやりがい
1人の子育てだけでも大変なのに、20人近い子どもと毎日関わるってどんだけ体力使うんだろう!
たしかに。毎日身体を動かし続けているから、保育士って若々しくいられるのかな。
子ども一人ひとりの成長に合わせて個人記録を作成したり、毎日の設定保育を考えるのは大変です。
一週間前から考え、前日は時間をかけて念入りに保育の準備します。
金曜土曜とやっと一週間が終わっても、また月曜日がきたら仕事に追われる日々です。
それが毎日、そして1年中その仕事の繰り返しなので上手に息抜きができない人にとっては「仕事辞めたい」と思う日もあるでしょう。
そして時には保育の準備や子どもに関わることさえ苦痛に感じることもあります。
しかしこちらが頑張った分だけ子どもは答えてくれますよね。
盛り上がった時の子どもから伝わる高揚感、笑顔いっぱいの表情を見ると「準備に時間をかけて良かった~」と思えるのです。
子どもの成長を見守られる、寄り添うことができる
特に行事では子どもの成長を感じることができますよね。
練習中は沢山注意してしまったとしても、本番は親に良いところを見せようと頑張る姿はどの子も格好良いです。
子どもの一生懸命な姿に涙してしまう職員もいます。
それは日々の子どもの練習する姿を見ている保育士だからこそ、また出合った時からその子の成長を見守ってきたからこそ感動するものです。
仕事で感動するという体験は、なかなかできるものではありません。
ちなみに筆者も関わったことのないクラスであっても、行事になると頑張っている子どもの姿に涙してしまうのですから自分でも驚きです。
子どもには大人の心を動かす力があるのかもしれませんね。
日々の子どもの成長に関われる大人は親や家族、そして保育士だけなのです。
保育士は関わった子どもの数だけその成長が楽しみになりますし、日々の関わりの中から成長が見られた時は親のような気持ちで嬉しいのです。
子どもの大好きな先生になれたとき
子どもは素直に気持ちを表現してくれます。
「先生大好き」と口で言ってくれること、口では言わないけど、いつも近くにきて遊んでくれる子、それは自分がその子にとって特別な存在になれたということです。
純粋に子どもに好かれることは嬉しいですよね。
子どもの素直な表現に、こちらも笑顔になってしまうのです。
可愛い子どもに囲まれて「先生大好き」と言われるだけで、日頃の努力が報われたと思えます。
人格形成の時期の関わる大人の重要性。保育士の役割
保育園に通う子ども達の年齢は、子どもの生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な時期です。
保育園時代の人間関係や大人との関わりが、子ども一人ひとりの性格や人生にまで関わってくるということになります。
そんな時期に家庭以外で密にかかる大人は保育士しかいません。
たとえば街中や店の中で、子どもが悪いことをしていたら叱る人もいるかもしれませんが、日頃関わりがない大人から叱られてもただの恐怖です。
しかし保育士と保育園に通う子どもの間には日頃から積み重ねている信頼関係があります。
だからこそ子どもは「普段優しい先生がこうして真剣な顔で怒るのだからこれはいけないことなんだ」「人を悲しませることなんだ」とわかるのです。
子どもに人との関わり方などを教える重要な役割を担うのが保育士、社会のルールを学ぶ場所が保育園なのです。
保護者と良い関係が築くことで感じるやりがい
保育士にとって保護者って不思議な感じ。仲良い友達ではないし、かといってお客さんでもないし。でもなんでも話すみたいな・・・。
子どもと関わるだけで家庭のこととか結構丸わかりだよね。
近年では核家族化が進み、近くにおじいちゃん・おばあちゃんがいない子も多いです。
子どもにとって関わりある大人はお母さん、お父さん、もしかするとお父さんより保育士という存在かもしれません。
時には同じ子育て世代だとお父さんより保育士の方が、お母さんの気持ちを理解できるということもあるでしょう。
筆者が保育士をしている頃は、友人から「変な親沢山いるんでしょ」「保護者の対応大変そうだねぇ」など言われましたが、世間でいうモンスターペアレントの出逢ったことはありませんでした。
保護者の中には変わった人もたまにいますが、大体の人は「いつもありがとうございます」「遅くまで残ってお疲れ様です」など保育士に労いの言葉をかけてくれます。
おそらく保育園の雰囲気によって保護者も変わると思いますが、保護者との良い関係を築くことによって、子どものことをより深く知ることができるのです。
担任と保護者はある意味一緒に子どもを育てるパートナー?
たとえば「最近〇〇ちゃん、以前より保育士の気を引こうとする行動が見られるんですが何かお家で変わったことはありますか」と保育士が言うと、お母さんが「実はおなかに赤ちゃんがいて・・・」ということ、結構ありますよね。
普段からその子のことをよく知っている保育士ですから、今まで違った子どもの反応で「何かあったかな」と感じるのです。
同じ状況でも全く今までと変わらないという子も勿論いますが、親が自分より違うものに関心があることなどに子どもは敏感なようで、お母さんの弟や妹ができると「自分のことちゃんと見てよ」と何かしらのサインを出してきます。
特に2歳や3歳の子どもは幼児のように「私お姉ちゃんになる」などという気持ちはまだ難しくてわかりません。
赤ちゃんが生まれてからは特に寂しさからなのかいじけてみたり、大声を出してみたり、急に甘えて抱っこから離れなくなったりなど急に手がかかるようになることがあるのです。
そういう時はお母さんも保育士も困ってしまいますが、家庭と保育園が連携してその子の情緒が安定するように試行錯誤をしていきます。
それ以外でも子どものことで困っている時は保育士が相談にのること、保育園でも対応に気をつけていくことなど協力して子どもに関わるのである意味、子どもを育てるパートナーと言えるでしょう。
先生でよかったと言ってもらえるとき
新年度が始まる頃はよそよそしかった保護者も、年度末になると「先生じゃなかったらうちの子心配」「1年感間ありがとうございました」「先生が担任で良かった」など優しい言葉をかけてくれる保護者もいます。
ただ毎日仕事していただけですが、保護者は「自分に変わって子どもを見てくれて、子どもの状態を細かなに教えてくれる保育士の存在が有難い」と思ってくれているそうです。
子どもに大好きと言われる時も勿論嬉しいですが、保護者からの信頼や感謝もまた嬉しいものですよね。
そんな言葉をもらった時には「保育士していてよかったな」と思える瞬間でもあり、やりがいを感じる時でもあります。
一緒に働く仲間も大切!保育士同士の助け合いで仕事を円滑にする
子どもが関わる仕事を一緒にしていると、保育士同士なんだか親近感がわくのか自然と距離が近くなる気がする。
子どものおかげかな?
保育士はチームプレーで仕事をする場面が多く、たとえば年長クラス担任が「今日〇〇公園行きます」というと3歳クラスの担任が「うちのクラスも行ってもいい?」と話しかけます。
20人近くいる子どもを保育士2人、3人で引率しながら公園に向かうのは結構大変なので、年長の子ども達が3歳の子ども達と手を繋いで歩いてくれると引率する保育士の数も増えて助かるのです。
たとえば落ちているごみを触る時も保育士から「それは触っちゃだめだよ」と言われるよりもお兄さんお姉さんに言われた方がなんとなく、受け入れられるということもあるのでしょう。
他にもホールを使う時は「10時から10時20分までうさぎ組が使うね」「20分からぞう組が使うわ」など活動場所を話しあったり、異年齢保育で設定を組む時も打ち合わせをすることがあったり、行事準備では困っている保育士がいれば「私いまやることないから手伝うよ」など他の保育士の身になって声をかけます。
保育士は日頃からやりとりをしてお互いの保育を助け合うので、保育士同士のコミュニケーションも自然増え、仲が深まるのです。
社会貢献
近年は待機児童問題や保育士不足で働く親は子どもを保育園に預けられなくて困っています。
平成29年6月厚生労働省「子育て安心プランについて」によると、平成29年4月1日時点で全国の待機児童の数は合計で約23,700人もいるのです。
その待機児童の数だけ困っている人がいるということになります。
保育士として働くことで困っている人達を助けてことができる、そして自分が社会の役に立っていると実感できるのが保育士の仕事です。
そして関わっている子ども達はこれから大きくなって社会にでて活躍するのですから、その先を考えると保育士の仕事というのは重要ですよね。
やりがいを感じる瞬間、エピソード紹介
上記だけでも保育士がやりがいのある仕事だということがわかりますが、やりがいと言っても様々です。
ここではもう少し具体的な場面の説明を加えて、保育士をしていたら誰もが感じたことがあるかもしれない瞬間を紹介します。
乳児クラス
乳児クラスでやりがいを感じる瞬間は以下のような場面です。
- ハイハイから立つことができた、歩くことができたなど成長の過程に立ち会えた
- 今まで泣いていたのに、自分を見て笑ってくれるようになった
- 良いものを見つけた時に共感を求めにきてくれる
- 自分の言葉を真似してくれる
- 赤ちゃんが何を伝えたいのかわかるようになってきた
上記の他にも沢山あるとは思いますが、乳児クラスの特徴は、子どもがまだ上手に自分の気持ちを言葉で表現することができないということです。
そのため大人側が何を伝えたいのか少ない情報の中から子どもの気持ちを汲みとって、子どもの要求に答えなければいけません。
赤ちゃんの時は子どもによって表現の仕方も様々なので、赤ちゃんの気持ちがわかるようになった時は自分の成長も感じることができ、やりがいを感じる瞬間です。
また乳児クラスは成長が著しく、ハイハイしていた子が立った時、歩くことができた時、自分の名前でお返事ができるようになった時など、それに対してやりがいを感じるというよりは子どもの成長の過程を見守ることができた喜びがありますよね。
ちなみに筆者が乳児クラスでやいがいを感じた瞬間は、朝の子どもの受け入れです。
お母さんから離れたくなくて泣く毎朝泣く子どもがいたのですが、筆者が早番などでいる時はニコニコと膝の上に座ってきてくれます。
そしてお母さんからも「先生いると助かるわ~」と言っていただいた時は嬉しさ、そしてやりがいを感じました。
幼児クラス
幼児クラスでやりがいを感じる瞬間は以下のような場面です。
- 子どもの笑顔が見られた時
- 子どもの発見を一緒にわかちあう時
- 自分の手遊びを気に入って真似してくれた時
- 行事で子ども達の立派な姿をみた時
幼児クラスの子どもは自分の気持ちを言葉で表現できることもあり乳児より複雑になるので、やりがいを感じる瞬間を簡易化するのが難しいですね。
先ほども触れた通り「先生大好き」と言ってくれる子がいると、嬉しく思いますし、自分を求めてくれる存在がいるというだけでやりがいを感じることができます。
筆者の幼児クラスでやりがいを感じた瞬間は、子どもと信頼関係を築くことができた時です。
年長クラスに乱暴で怒ると保育士のお腹をパンチするような子がいました。
その子は6歳にして40㎏もあり、体も大きいため担任以外の先生はあまり関わりたくないような、いかにも対応が難しそうな子だったので筆者も関わりを避けていたのです。
ある日、その子が友達とのトラブルがあり相手を蹴っている場面に遭遇してしまい、さすがに注意しなければいけなかったので、真剣に向き合いました。
普段乳児クラスにいる先生に注意されるのは子どもにとっても納得いかないようでしたが、かなり本気で向き合い、筆者も内心は緊張していましたが最後は納得してくれたのです。
その日から仲良くなり、なついてくれるようになって夕方ホールで遊ぶ時には声をかけてくれるようになり、一緒遊ぶようにました。
大人と子どもという関係なのに「この子にタックルされたら自分が吹き飛びそうで怖い」と思いながらも、子どもに対応し信頼関係を築くことができ、当時保育士歴1年目の筆者も達成感を感じたものです。
一方で全くやりがいを感じないという人も・・・
「保育士はやりがいのある仕事だって皆言うけど私は全く感じない」という人も保育士の中にはいるでしょう。
冒頭で紹介した厚生労働省のアンケートでも保育士の3割の人はやりがいを感じていないということになります。
ではやりがいを感じない理由はなんでしょうか。
アンケート内の自由供述を参考にすると「やりがいを感じる前に疲弊してしまう」とありました。
確かに保育士の仕事は先ほど触れた通り「給料が低い」「休憩時間がない」「子どもの命を預かるという責任感から仕事中はひと時も気をぬけない」と現場の保育士の誰もが一度は感じたことがあると思います。
保育士は仕事中、常に身体を動かしているにも関わらず子どもがいるので仕事中に少し休憩という暇もありません。
保育室内で子どもと一緒に座って遊んでいる時は身体を動かしていないかもしれませんが「子どもが怪我をしないように」神経を使っています。
そういった状況に「疲れない」というのはあり得ないのです。
疲れていると仕事もきついし、子どもが肝心な時にわがままを言って説得できても「やりがい」ではなく「疲れ」が先にくるかもしれません。
上記で説明したやりがいは一人の保育士を周りが支えているから感じられることです。
そのため保育士同士が助け合わない、保護者との関係も最悪などの状況ではなかなかやりがいを感じる心境にはなれないでしょう。
他にも人間関係が良好でも仕事量が多く、毎日サービス残業に持ち帰りの仕事ばかりしている状況でもやりがいは感じられないですよね。
保育士は子どもと関わる素敵な仕事、人と関わるのですから本来やりがいを感じやすい仕事なはずなのに、それを感じることができない保育園というのはブラック保育園の可能性が高いです。
たとえば1年目、2年目の新人であっても働きやすい条件が揃っていればやりがいは感じます。
もし「夢の保育士になったのにギャップがありすぎて辛い」「自分の保育園はブラック保育園なのかも」と思うのであれば転職を考えた方が良いのかもしれません。
やりがい多い保育士の仕事、自分でもあらためて振り返ってみては?
保育士のやりがいについて紹介しましたが、保育士の仕事は本当に素敵な仕事です。
子どもとの関わりの中で子ども達の素直な心、発言にこちらの心も癒されます。
保育士として子どもに色々なことを教えてあげる立場ですが、子どもから気づかされることも沢山ありますよね。
子どもに関わるだけで元気がもらえ、毎日大変でも仕事中心から笑えるというのも凄いことです。
現在保育士をしている方は、そんなやりがいを日々感じているから仕事を続けられるのでしょう。
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