保育士や幼稚園教諭を目指す人は「子どもに関われる仕事であればどちらでも良い」と感じている人も沢山いるでしょう。
しかし、どうせなら選ぶなら自分合う方が良い、一般的にも良いと言われる方で働きたいと思いますよね。
本記事では、保育士と幼稚園違いを比較、紹介します。
どちらに就職するべきか悩んでいる人は参考にしてみてくださいね。
幼稚園の先生と保育士って何が違うの?
幼稚園の先生になるには、国家資格である幼稚園教諭免許が必要です。
ちなみに、一般的には「幼稚園の先生」と呼びますが、正式名称は「幼稚園教諭」と言います。
幼稚園教諭と保育士の違いが以下の図の通りです。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
管轄 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
根拠法令 | 児童福祉法 | 学校教育法 |
免許 | 保育士資格証明書 | 幼稚園教諭免許状 |
保育の対象年齢 | 0歳2か月~小学校入学前の幼児 | 3歳~小学校入学前の幼児 |
保育時間 | 7時30分~18時頃(延長19:30まで) | 9時~14時頃(延長17時まで) |
目的 | 保育・養護 | 教育 |
上記の表の通り、幼稚園教諭と保育士では管轄が違います。
幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省です。
簡単にいうと、幼稚園は学校のようなものですが、保育園は福祉施設になります。
以下、さらに詳しく紹介していきます。
幼稚園教諭の概要
幼稚園の役割について平成29年3月文部科学省幼稚園教育要領によると、教育基本法第1条で以下の通りです。
学校教育の始まりとして,こうした教育の目的及び目標の達成を目指しつつ,一人一人の幼児が,将来,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるようにするための基礎を培うことが求められる。
幼児期は人格形成の基礎を培う重要な時期。
保育士同様、幼稚園教諭には専門的知識を身に付け、子どもの発達を理解したうえで関わらなければいけません。
幼稚園は教育施設で、幼稚園の目的は「教育」がメインとなります。
幼稚園を利用する子どもの年齢は3~小学校入学前の幼児、標準保育時間は4時間です。
施設によって異なりますが、9時~14時までが通常保育時間、希望によって延長預かりをする幼稚園があります。
幼稚園教諭の仕事内容
子どもの食事の介助、排泄、清潔さ、身の回りのことをお世話することもありますが、入所する年齢が3歳なので食事も自分で食べられる、衣服の着脱も一人でできるためお世話というよりはお手伝い程度ですね。
幼稚園によっては、前中の活動時間を利用して英語に力をいれている幼稚園、ピアノなど音楽に力をいれている幼稚園、他にも運動やリトミックに力を入れている幼稚園もあり、それぞれの幼稚園の特色を活かして活動します。
子ども達と運動をしたり、ピアノを弾いて歌ったり、それは保育士と同じです。
幼稚園教諭に求められている知識及び技術
文部科学省幼稚園教育要領から引用した幼稚園教諭に求められる知識、技術は以下の通りです。
- 幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮することにより発達に必要な体験を得ていくものであることを考慮して,幼児の主体的な活動を促し,幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすること。
- 幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮して,遊びを通しての指導を中心として第2章に示すねらい※が総合的に達成されるようにすること。
- 幼児の発達は,心身の諸側面が相互に関連し合い,多様な経過をたどって成し遂げられていくものであること,また,幼児の生活経験がそれぞれ異なることなどを考慮して,幼児一人一人の特性に応じ,発達の課題に即した指導を行うようにすること。
【引用】文部科学省幼稚園教育要領
子どもの発達に関する知識を身に付ること、そして遊びを通して5領域のねらい(たとえば社会的なルールを身に付ける・友達との関わり方を習得するなど)達成すること、子ども一人一人の特性に合わせて指導するということになります。
保育士の概要
保育士になるには保育士免許証明書が必要です。
保育所の役割について平成30年2月厚生労働省の保育所保育指針解説からの引用が以下の通りです。
保育所は、児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)第 39 条の規定に基づき、保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。
教育の場というよりは生活の場、保育所では乳幼児期にふさわしい生活の場を豊かにつくり上げていくことが重要です。
保育園は児童福祉施設で、保育園の目的は乳幼児の「保育」がメインとなります。
保育園を利用する子どもの年齢は0歳~小学校入学前の幼児、標準保育時間は8時間です。
施設によって若干異なりますが、基本的には7時に開園して19時に閉園します。
保育士の仕事内容
乳幼児へ食事の介助、睡眠、排泄、清潔さ、衣類の着脱など、身の回りのことをお世話します。
他にも家庭や地域との連携、保護者への支援なども仕事です。
園だよりを通して、日頃の用紙を保護者に提示する業務もあります。
保育士に求められるもの
保育所保育指針解説から引用した保育士に求められる知識、技術以下の通りです。
- これからの社会に求められる資質を踏まえながら、乳幼児期の子どもの発達に関する専門的知識を基に子どもの育ちを見通し、一人一人の子どもの発達を援助する知識及び技術
- 子どもの発達過程や意欲を踏まえ、子ども自らが生活していく力を細やかに助ける生活援助の知識及び技術
- 保育所内外の空間や様々な設備、遊具、素材等の物的環境、自然環境や人的環境を生かし、保育の環
境を構成していく知識及び技術- 子どもの経験や興味や関心に応じて、様々な遊びを豊かに展開していくための知識及び技術
- 子ども同士の関わりや子どもと保護者の関わりなどを見守り、その気持ちに寄り添いながら適宜必要な援助をしていく関係構築の知識及び技術
- 保護者等への相談、助言に関する知識及び技術
【引用】保育所保育指針解説
以上の6つが保育士に求められているものです。
子どもの成長については、子どもの発達に関する知識を身に付け適切に接する、また子どもが自分のことを自分でできるようになるために取りくんでいる姿があれば見守り、できないことがあれば「どうやったらできるようになるのか」など教えて実際に援助もします。
子どもの遊びについては、子どもが何かに興味をもったり、遊びが深まるために保育士が子どもの発達段階に応じた遊びや玩具などを提示していく必要があるのです。
そして保護者への支援も保育士の仕事になります。
保育園と幼稚園が複合した認定こども園
最近新設される保育園の中に「認定こども園」という施設もよく見かけますよね。
認定こども園とは保育園と幼稚園が複合した施設です。
保育園と幼稚園の良いところを取ったようなもので、認定こども園は教育と保育を一体的に行います。
働く職員も保育士資格と幼稚園教諭の免許、その2つの資格を持っている人が働くことが1番望ましいとされているのです。
こども園は4つのタイプがあり、内閣府認定子ども園の概要を参考にしたものが以下の通りです。
幼保連携型
認定こども園として独立している
幼稚園型
可幼稚園が保育所のように預かり保育を実施している
保育園型
認可保育園の入所規定に満たなくても子どもが入所することができ、幼稚園のような教育をする
地方裁量型
幼稚園・保育園どちらの認可もない地域の教育・保育施設が認定こども園として必要な機能を果たす
今後は待機児童の問題を解決するために幼稚園と保育園を分けるのではなく、こども園のように両方の役割を果たす施設の方が多くなると言われています。
幼稚園教諭と保育士の休みと給料、働き方を比較
「子どもに関わる仕事」という中では同じですが、働く条件は全く違います。
以下、幼稚園教諭と保育士の休みや給料を比較してみましょう。
保育士の休みと幼稚園教諭の休み
保育士の場合、公立保育園や小規模保育園など、保育施設によっても休みが異なります。
大体は週休2日で、土曜日が隔週出勤。毎週日曜日休み、平日に1日休みがある、といった勤務が多いでしょう。
認可外保育園の場合は、日曜祝日も開園している場合があります。
幼稚園の場合、土日休みとなっている施設が多いです。
土日祝休みの場合、令和元年で計算すると年間休日数121日。
保育士と幼稚園教諭を比較した場合、保育士の平均年間休日数は100~110日程度なので、幼稚園教諭の方が休みは多いでしょう。
また、幼稚園教諭の場合は夏休み(子どもは休みだけど職員は出勤している)があるので、保育士よりも有給が使いやすい環境とも言えます。
幼稚園の先生の平均年収、平均月収はいくら?保育士よりも給料が高いのか表で比較
保育士の給料と幼稚園教諭の給料
以下、厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査を参考にした、保育士の給料の幼稚園教諭の給料の比較表です。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
平均月収 | 23万9,300円 | 24万1,300円 |
平均年収 | 約357万9千円 | 約360万2千円 |
平均年齢 | 36.8歳 | 33.7歳 |
勤続年数 | 8.1年 | 8年 |
厚生労働省の平成30年厚生労働省賃金構造基本統計調査では、上記のような統計となっています。
上記の表の通り、給料面を比較した場合、幼稚園教諭の方が高いです。
他にも、令和元年10月10日「幼稚園教諭と保育士の待遇格差実態調査結果(読売新聞)」を参考にすると、公立で働く保育士と公立で働く幼稚園教諭の給料を比較したところ、約7万5千円の差があることが明らかとなりました。(幼稚園教諭の方が約7万5千円給料が高い)
約7万5千円の差というのはかなりの大きな差です。
保育士と幼稚園教諭、仕事内容に若干差はあるものの、ここまで違ってしまうと保育士の仕事へのモチベーションが下がってしまいますし、不満に思う保育士は沢山いるでしょう。
先ほど触れた年間休日数や有給の取得しやすい環境改善、給料等を総合的に考えた場合、幼稚園教諭の方が働く条件は良いと言えます。
【参考】幼稚園の先生の平均年収、平均月収はいくら?保育士よりも給料が高いのか表で比較
【参考】保育士の給料はいくらくらい?平均年収や月収、ボーナスまとめ。
保育士の働き方と幼稚園教諭の働き方を比較
先ほどの表にもある通り、保育園と幼稚園では子どもの預かり時間が異なります。
そのため、働く職員の働き方にも違いが出てくるのです。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
施設開園時間 | 7時30分~18時頃(延長19:30まで) | 9時~14時頃(延長17時まで) |
勤務 | シフト制 | 固定制 |
勤務時間(およそ) | 早番 7:15~16:15
中番 8:30~17:30 遅番 10:00~19:00 |
8:00~17:00 |
保育士は、シフト制で勤務が組まれ「早番」「中番」「遅番」があり、保育園によっては3通りではなく、6~10通りある場合もあります。
幼稚園教諭は、大体8時に出勤して17時まで働くという勤務が一般的です。
たとえば、シフト制で働いた場合。(保育園)
「毎日出勤時間(翌日の)確認する必要がある」「生活リズムが崩れやすい」というデメリットがありますが、時間帯によってプライベートの予定を組めるというメリットがあります。
固定制で働いた場合。(幼稚園)
通勤で電車などの公共機関を利用したり、車で通う際「毎回混む時間帯の通勤しなければならない」他にも「銀行などの公共機関が混んでいる」というデメリットがありますが、「生活リズムが安定している」「予定が立てやすい」というメリットがあります。
これは人によって「合う」「合わない」があるでしょう。
幼稚園教諭と保育士ならどっちが良い?
就職先を考える時に「幼稚園教諭と保育士ならどっちが良いのか」と悩んでしまいますよね。
子どもに関わる仕事ということは変わりませんが、あなたのやりたいことによって「どんなふうに働きたいか」によってどちらが良いのか決める必要があります。
シフト制は大変?保育士と幼稚園教諭、どちらの方が楽?
何を楽とするかによって、答えは異なります。
たとえば、先ほど触れた働き方について、考えてみましょう。
一般的に、体が楽なのは固定制。(幼稚園教諭)
毎日、同じ時間に出勤して、同じ時間に退勤するので、生活リズムが崩れる心配もありません。
保育士の場合、シフト制なので「明日は〇番。〇時出勤で・・・」と毎日シフト表を確認します。(シフトによって仕事内容も若干変わるため確認必須、気持ちの準備も必要)
確認は数秒で終わりますが、毎日「明日何番だっけ。本当に〇番であってるんだっけ」と確認する作業は、面倒くさいのです。
また、出勤時間を間違えてしまうと、周りの保育士に迷惑がかかってしまうという気持ちの負担を感じます。(固定制の場合の心配は寝坊くらい、出勤時間を間違えることはないでしょう)
他にも、保育士の場合、保育の対象年齢が0歳~未就学児。
乳児のクラス担任になった場合は、赤ちゃんを抱っこしたり、おんぶしたり・・・。
赤ちゃんが泣いている時は、立ちながら抱っこを1時間、2時間続けてする事もあるので、腰痛や肩こりに悩む保育士が多いです。(そして通院している人が多い)
決して「幼稚園教諭の方が楽」ということはありませんが、体力的な面を考えても保育士の方が大変なのかもしれません。
【参考】保育士がシフト制勤務で働くことのメリット、デメリット
ピアノの練習をしたくない!どっちの方がピアノは簡単?
結論から言うと、保育士と幼稚園教諭、どちらもピアノの練習は必要。
たとえば、リズム遊び、歌、挨拶等、保育士も幼稚園教諭も毎日ピアノを弾きます。
そのため、保育士の場合も幼稚園教諭の場合も、ピアノの練習はしなければならないのです。
しかし「ピアノが苦手」という人、多いですよね。(実際の現場にも沢山いますよ)
保育士、幼稚園教諭という業種を選ぶからには「ピアノの練習はしなければならない」という現実を受け入れる必要があるようです。
ちなみに、筆者もピアノは得意な方ではありませんでしたが、CDを利用させてもらったり、保育士2人で行事を担当する際の仕事分担では、ピアノ以外は全力でやる変わりにピアノを一緒に組む先生に頼んだり・・・。
現場では、助け合って仕事をするので、意外と何とかなるものです。
保育士と幼稚園教諭、どっちの方が残業多い?
残業は、保育士・幼稚園教諭に関わらず、職場の雰囲気に左右されやすいものです。
たとえば「先輩が残っている時は後輩も残って仕事をしなくてはいけない」という雰囲気が職場内にあったり、「壁面なども完成度が高いものが求められるため自宅に帰って制作する」等。
上記のような話は保育園で働く人、幼稚園で働く人に関わらず、よく聞く話です。
最近では「施錠をするので残業を禁止」する保育園や幼稚園もあるようなので、そういったところを探すと良いでしょう。
【参考】ブラック保育園の特徴や見分け方、残業代はしっかり出てる?有給休暇はとれる?
保育士と幼稚園教諭、子どもと過ごす時間が長いのはどっち?
たとえば保育園なら朝7時~夕方閉園の7時まで子どもがいます。
その時間の中でシフトを組まれているのですから、当然、保育士の勤務中は施設内にずっと子どもがいるのです。
また、保育士の場合、休憩や事務時間中であっても何かと保育に入ることが多いです。
「子どもは好きだけど長い時間子どもと一緒にいるのは無理かも」と思う人にとって、保育士の仕事はちょっとしんどいかもしれません。
一方、先ほど触れた通り、幼稚園教諭の勤務の8時間のうち5時間が保育時間、3時間が事務時間。
14時頃に子どもが帰った後、基本的には事務に集中できる時間です。
「子どもといる時間」「事務時間」がハッキリ分かれているので、メリハリをつけて仕事に集中したい人は幼稚園教諭の方が向いているかもしれませんね。
赤ちゃんが好き。小さな子どもと触れ合いたいならどっち?
上記でも触れた通り、幼稚園の子どもの対象年齢は3~5歳、保育園の子どもの対象年齢は0(0歳2か月から)~5歳が入所できます。
幼稚園には3歳以上の子どもしかいないので、幼稚園教諭になっても赤ちゃんのお世話をすることはできません。
そのため「赤ちゃんのお世話がしてみたい」「乳児期の子どもと関わりたい」と思っている方は保育園を選びましょう。
子どもの成長を長く見守りたい、密に関わりたいと思うなら・・・
子どもの成長を長く見守りたい場合は保育士です。
先ほど触れた通り、保育士の場合、子どもが0歳の時から成長を見守るため「長く成長を見守りたい」と思う人は保育士を選ぶと良いでしょう。
また「子どもに密に関わりたい」という人は、保育士・幼稚園教諭どちらを選んでも大丈夫です。
子どもの気持ちに寄り添うという意味では保育園でも幼稚園でも自分次第で子どもと密に関わることはできます。
まとめ
幼稚園教諭も保育士も子どもに関わる仕事には変わりないのです。
どちらの職業も激務というイメージはありますが、子どもに関わる仕事はやりがいがあります。
そして上記でも触れましたが、今後は認定こども園のような施設が増えると言われているため、これからは保育士と幼稚園教諭をわけて考える時代ではなくなるのかもしれません。
時代とともにニーズも変わるため保育士、そして幼稚園教諭も働き方が変わってくるでしょう。
働く職員にとっても働きやすい環境が整えば良いですね。
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