男性保育士の実態とは?男性保育士が抱える悩みや年齢別年収早見表

保育士の悩み

保育士は女性の仕事というイメージが強いですが、中には男性保育士もいます。

とはいえ比率で言えば女性の方が断然多いのが保育士の職場。

本記事では女性に囲まれて保育士として働く男性保育士の悩みについて紹介していきます。

男性保育士の実態とは

最近では子どもの父親が育児をすると「イクメン」と呼ばれ、男性が育児に積極的に参加することが良い、むしろ「男性はもっと育児に参加した方が良い」という風潮があります。

しかしそれが保育士という仕事になった途端、男性が保育士業界で働くこと又、働き続けることが難しい環境という矛盾があるのです。

令和元年5月の東洋経済新聞「男性保育士が直面する現実の何とも厳しい現実」では男性保育士の実体験を語っています。

  • 保育園自体(施設の作り)女性の職場使用になっており男性保育士用の更衣室がない
  • 男性保育士が担任になっただけで保護者から「担任を変えて欲しい」と言われる
  • なぜうちの子のオムツを男性保育士が変えるのかなど言われる
  • 高いところに登って電球を変えて欲しいと頼まれる(保育園)
  • 外遊びをするのは男性保育士の仕事という空気を作られる

男性保育士として働く人の中には上記に挙げた項目に共感するものもあるでしょう。

男性保育士は「同僚や保護者からの視線があり仕事がしづらい」「職場に居場所がない」など感じてしまうのかもしれません。

男性保育士の割合、男女比率

以下、平成26年3月東京都保育士実態調査のアンケート結果による保育士の男女比率です。

上記の図から見てもわかる通り、平成26年時点で男性保育士の比率は全体の4.6%です。

無回答もありますが、保育士の9割以上は女性ということになります。

他業種では男性同士が「この後飲みに行こう」と先輩や同期と飲みに行くことがありますが、男性が保育士として働いていると男性の同僚と仕事終わりに飲みに行くなどはなかなか出来ないでしょう。

周りに女性しかいない職場なので男性保育士が働くと「気が合う相手がいない」「話す相手がいない」状況を考えると少し切ないですね。

筆者も実習の際に公立保育園で男性保育士を見かけましたが、実際の保育士になってから勤めた園には一人しか男性保育士はいませんでした。

他にも地域で開かれる保育士セミナーの際に市内で勤める保育士が集まる機会にも、男性保育士の数は100人程いる保育士の中に1人か2人しかいなかったのです。

男性保育士の平均年収

平成30年厚生労働省の賃金構造基本統計調査を参考にします。

男性保育士の平均年齢32.0歳、勤続年数5.9年の月給は26万300円。

月給26万300円と年間賞与額約70万3千円を計算すると、男性保育士の年収約382万7千円です。

女性保育士の場合、平均年齢37.1歳、勤続年数8.2年の月給は23万8千円。

年間賞与額は約70万8千円なので、月給と計算すると年収約356万4千円です。

平均で見た場合は女性保育士よりも男性保育士の方が収入が高いということになります。

男性保育士の年収と他業種の年収比較

次に他業種の男性の給料と比較してみましょう。

先ほどの平成30年厚生労働省の賃金構造統計調査によると男性32.5歳(30~34歳統計平均年齢)、勤続年数7.4年の月給は33万5,200円。

月給33万5,200円と年間賞与額約92万円を計算すると、32歳男性の平均年収は約494万2千円です。

男性保育士の平均と30代前半の男性の平均がちょうど32歳なので比較しやすいですね。

先ほどの男性保育士の収入と比較した場合、以下の図と通りです。

月給 ボーナス 年収
男性保育士 260,300円 703,000円 3,827,000円
30代前半男性 335,200円 920,000円 4,942,000円
74,900円 217,000円 1,115,000円

男性保育士と他業種を比較すると図の通り、30代前半男性の平均月給との差は約7万5千円。

平均年齢32歳の男性保育士と32歳男性の平均月給の差は111万5千円です。

100万円以上の差があるのは、かなりショックな結果ですね。

実際に平成36年東京都保育士実態調査にも退職理由の2位が「給料が安い」です。(1位は妊娠・出産)

そして離職した人に対して職場の改善希望点を聞いたところ、希望する割合が最も高いのも「給料の改善」となっています。

貴重な男性保育士のためにも早急に改善して欲しいですね。

男性保育士の年齢別の年収推移早見表

悲報か朗報か。

なんとなく予想はついてる。

現在保育士として働く男性に最も重要ともいえる今後の年収について紹介します。

先ほどの平成30年厚生労働省の賃金構造統計調査によると男性保育士の年齢別年収推移は以下の通りです。(100円単位は四捨五入)

年齢 平均月収 平均ボーナス 平均年収
20~24歳 21万4千円 41万5千円 298万3千円
25~29歳 23万3千円 64万5千円 344万千円
30~34歳 27万6千円 70万3千円 401万5千円
35~39歳 30万9千円 97万8千円 468万6千円
40~44歳 33万5千円 121万5千円 523万5千円
45~49歳 28万9千円 85万円 431万8千円
50~54歳 28万3千円 91万4千円 431万円
55~59歳 24万7千円 56万9千円 353万3千円
60~64歳 21万3千円 71万3千円 326万9千円
65~69歳 29万円 44万円 392万円
70歳~ 38万3千円 148万5千円 608万千円

20代前半では、まだ他業種との差をあまり感じないかもしれません。

しかし、たとえば40歳前半男性の平均月収は40万千円に対して、男性保育士の40代前半の平均月収は33万5千円。

男性保育士の場合、70歳の時点でようやく月収が38万円の月収になりますが、それでも上記の40歳前半の男性の月収には及びません。

他にも他業種の場合、30歳前半から定年までボーナスは100万円を超えています。

しかし保育士の場合、100万円超えのボーナスをもらっているのは「40歳前半」と「70歳」の時だけです。

そして上記の表から「70歳を過ぎて保育士をしている人は園長クラスかな」と思う方もいるでしょう。

上記の調査は「園長を含んだ保育士男性への調査」なので、実際の園長の年収とは少し異なります。

気になる方は以下の参考リンクで園長の年収等をチェックしてみてくださいね。

【参考】保育園の園長の年収を他業種と比較。園長の役割や仕事内容について

圧倒的に少ない男性保育士の悩みとは?

冒頭でも紹介した通り、女性ばかりの職場なので「働きづらい」と感じている男性保育士は多いでしょう。

ちなみに筆者は保育士の頃「男性保育士がもっと職場にいたら活気があって良いのに」と思っていました。

男性保育士の将来性

このまま保育士として働いていて大丈夫かな・・・。

先ほどの年収の推移を見てもわかる通り、現時点では全体的に一般的な男性の収入よりも男性保育士は収入が低いです。

「給料が少ない」というのは男性にとっては結構辛いものですよね。

たとえば将来結婚して家族を持って、家や車・・・など将来の計画を立てている人もいるでしょう。

「このまま保育士として働いていて、将来の自分の子どもを幸せにできるのか」など、漠然とした不安を抱えて悩んでいるかもしれません。

収入は生活に関わる大きな問題なので、保育士の将来性について悩みを抱えている男性保育士は多いです。

しかし平成27年から処遇改善手当やキャリアアップなどの政策の取り組みもあるため、コツコツと研修に行くことで専門性を高めて今後新たな役職に就き、給料が上がる現在よりも改善する見込みはあるでしょう。

そして「どうしても保育士の仕事を続けたい」「もっと収入も欲しい」と思っている男性保育士は、公務員保育士も視野に入れておくと良いです。

公務員保育士には年齢制限もあるので、早めの決断をおすすめします。

他にもブラック保育園で働き続けた場合は働く環境の改善が難しいかもしれません。

正しい知識をつけて自分が今勤めている保育園を見直すことも大切です。

【参考】ブラック保育園の特徴や見分け方、残業代はしっかり出てる?有給休暇はとれる?

【参考】保育士がキャリアアップするメリットや、キャリアアップする為に行う具体的なこととは?

【参考】保育士の処遇改善手当とはなに?実際にいくら貰えるの?

保護者からの視線が気になる

保育士に男がいるのが珍しいのはわかるけどさぁ・・・。

冒頭で触れた通り、保護者から男性保育士というだけで視線を感じることがあるでしょう。

真面目に働いていても「この先生、大丈夫なの?」という視線を感じると仕事へのやる気が失せてしまいますよね。

しかし男性保育士に対して厳しい意見を持つ人も中にはいますが、「男性保育士がいてくれることで雰囲気が明るくなる」と好意的に受け入れてくれる保護者も勿論います。

転職しようかな、他にもっと良い仕事があるかも

保育士として働いている自分と他業種で働く友人。

「給料面での違いや生活スタイル、働き方まで友人の方が羨ましく感じる」ことがあるでしょう。

「他にもっと良い仕事があるかも?」という気持ちになるのです。

「子どもが大好きで毎日子どもと過ごせるのは楽しいけど・・・」と悩んでいる場合は一度、転職を考えてみても良いでしょう。

仕事を変えるのは勇気が必要ですし、時間や手間もかかりますが、子どもに関わる仕事は保育士だけではありません。

また保育士資格を活かすことだけにとらわれずに、全く違う仕事に就いて新たに能力や技術を磨くのも良いですよ。

【参考】児童養護施設で働く保育士の仕事。役割や仕事内容、年収・休日数といった待遇面を解説

女ばかりの人間関係、難しい。肩身が狭い。

女の考えていることってわからんな。

男性と女性で差別するのは良くないのですが、男女差を感じる場面は多少ありますよね。

たとえば男性の場合は無駄と思えるような話をするのは苦手という人が多いです。

一方、女性は男性と比べておしゃべりが好きで、全くどうでも良いと思われるような話題を共有してコミュニケーションをとるので、急にその話を振られると、うっとしいと感じることもあるでしょう。

また普段の会話の中でも女性は感情的になり、話にオチもなく内容が支離滅裂です。

それでも基本的にその場は盛り上がりますが、その場にいる男性の場合はそんな時に、どういうリアクションをとって良いのか、わからないかもしれません。

そして「今の話のなにが面白かったんだろう」「女性を相手にするのって難しいな」と思ったり、孤独に感じることもあるでしょう。

男性保育士はいじめられやすい

「いじめられる」というこよりも「いじられる」ことが多いかもしれません。

たとえば同僚の中には純粋に「仲良くなりたい、距離を縮めたい」という気持ちで話しかけてくれる人もいます。

しかし興味本位で「彼女まだできないの?」「男なのに力ないねえ」などの余計なことを言われると腹が立ちますよね。

「絡みが苦手だから」と面倒そうに対応するとやり返しが怖いので、無下にも扱ないのが辛いところです。

そこで上手に返答ができると人気者になるのですが、そういった絡み自体苦手な人もいます。

「不愛想」などの些細なことが原因で省かれて、余計に居場所がないと感じてしまうと「こんな思いをしてまで仕事をしていたくない」と思ってしまうかもしれません。

更衣室がない

男だからってどこでもすっぽんぽんになれるわけではない。

先ほども触れた通り、保育園の施設自体が男性に適していないこともあります。

更衣室がない場合はトイレで着替えるしかありません。

しかし運動会や発表会、夏の暑い日など着替えたい時に気軽に着替えることができないのは不便です。

「環境が要因で仕事のしづらさ」を感じることもありますが、他にも「男性用トイレがない」「机と机の幅が狭くて体がはみ出る」「給食の量が少ないと感じる」などが理由で「ちょっと働きにくいな・・・」と感じてしまうことのあるでしょう。

ちなみに冒頭でも触れた「保育園の施設の作り自体が女性使用になっている」という点ですが、筆者の元職場である築30年程の保育園には男性用トイレがありませんでした。

トイレ内は個室になって分かれていますが、トイレに行く際、男性も女性も一緒のトイレに入ることになるので、外部から来た男性職員や実習生は入りづらかったでしょう。

筆者の元職場だけでなく、男性用のトイレがない保育園は意外とあり、そこで困っている男性保育士もいるかもしれませんね。

恋愛で苦労することも多い

一般的に子ども好きな男子はモテるのですが、実際にそれを仕事にした保育士の場合は、「子どもが好きで優しそう」という前に「保育士の男って給料低いよね?」と女性側が勝手に「給料で男性のことを評価する」こともあるでしょう。

女性は「彼氏の給料事情」に対してシビアですよね。

世間的にも「保育士の給料は低い」というのが定着しているので、マイナスのイメージや先入観があるのかもしれません。

次に、保育士の働き方はシフト制。

そのため「朝が早い日もあれば、帰りが遅い日もある」「毎日出勤時間や退勤時間が異なる」ので遊ぶ約束等をする時も少し面倒です。

彼女ができた時も遊ぶ日や時間帯が毎回異なるので、約束が立てづらいかもしれませんね。

男性保育士のメリット・デメリット

「保育士として働いていてメリットがあるのか、それとも自分にとってデメリットが多いのかわからなくなってきた」と一人で悩んでいる男性保育士がいるかもしれません。

一度、男性保育士のメリットデメリットに支店を置いてみましょう。

以下男性保育士として働くメリット、デメリットについて紹介します。

男性保育士として働くメリット

メリットいいね、どんどんいこう。

以下、男性保育士として働くメリットです。

  • 恋愛面ではイクメンと期待される
  • 職業が保育士だなだけで好印象
  • 育児に対しての知識が増える
  • 職場で上手くいけば人気者になれる

最大のメリットは「育児に対する知識が増える」ことです。

近年は女性も結婚後、働き続けたいという人も多いですよね。

そのため「子育てに積極的に参加してくれる旦那さんが欲しい」と思っている女性は沢山います。

たとえば子どもが泣いた時、怪我をした時、泣いて対応に困った時にスムーズに子どもを相手にできる能力を持っているのは男性保育士の特権です。

男性保育士以外でも子育てに積極的な人であれば、子どものあやし方などは子どもが産まれてから身につく能力かもしれません。

しかし「父親になる前から既に子どもに慣れている、世話ができる」パートナーがいるのは、母親からするとかなり頼もしいでしょう。

母親にとって殆ど一人で子どもの面倒をみるというのはかなりのストレスです。

「保育士の旦那さん」というのは、何かと協力してくれそうなイメージを持たれるでしょう。

男性保育士が保育士として働くデメリット

デメリット知りたくないわぁ~。

以下、男性保育士として働くデメリットです。

  • 一般的な男性よりも収入が低い
  • 職場に女性しかいないので孤独
  • 偏見がある人に傷つく言葉を言われる
  • 重たい物を持たされる

先ほど紹介した通り、収入面のことを考えると大きなデメリットとなります。

他にも「職場に女性しかいない」「重たい物を持たされる」というデメリットは上手くやっていける人にとっては弊害に感じないかもしれません。

しかし「なかなか断れない」など、人によっては大きなデメリットとなる部分が多いですね。

また保育士の職業病である肩こりや腰痛に若いうちから悩まされる可能性も高く、私生活にも支障がでることもあるでしょう。

男性保育士が好きなタイプと答える人もいる!前向きに仕事しよう

どんな職業についていてもある意味「安定」ということはありません。

収入がかなり良くても仕事がしんどくて体調が悪くなり辞めてしまったり、精神的に辛くなってしまう人も沢山います。

それなら収入は高くなくても、好きな仕事をしている方が幸せかもしれません。

とはいえ保育士の仕事自体、もっと働き手にとって良い環境にならないといつまでも待機児童や保育士不足も問題は解決しないのですから、今後は「保育士の仕事は女性がするもの」という印象すらも打破すべく、保育士業界の中でも改革が進んでいくと良いですね。

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