「シュタイナー教育」という言葉を聞いたことがありますか。
シュタイナーとは、オーストリア出身の哲学者、ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)が、自身の人間観に基づいて提唱した教育理念のことです。
本記事では「シュタイナー教育」について、詳しく紹介します。
シュタイナー教育とは
冒頭でも述べた通り、シュタイナー教育とは、オーストリア出身の哲学者、ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)が、自身の人間観に基づいて提唱した教育理念のことです。
日本シュタイナー学校協会のサイトを参考にすると、1919年、ドイツで最初のシュタイナー学校「自由ヴァルドルフ学校」が設立され、「人間形成」を目標として掲げたことから、当時としては革新的な学校として迎え入れられました。
日本では、1980年代からシュタイナー教育がスタートし、現在では小中高一貫4校を含む7校と50の幼稚園・保育園が教育を実践しています。
この教育理念は世界各地に広がっていき、世界60カ国以上に約1,000の学校やフリースクール、約1,500園の幼稚園があるのです(2018年現在)。
シュタイナー教育の目的、内容について
以下、シュタイナー教育の目的や内容について紹介します。
シュタイナー教育の目的
シュタイナーは、子どもを偏見にとらわれない自由な人間に育てることが学校の役割だとしています。
自由とは気まぐれで自己中心的ではなく、自分の意志によって行動するという意味です。
また、自由な人間を育成するには、教育が芸術行為「教育芸術」であるべきと述べています。
芸術に触れて得た感情の高まりと知識は、子供の記憶に残りやすいと考えたからです。
そのため幼児期は、知的な教育を優先するのではなく、全身を動かした芸術作業を行うことに重点を置いています。
学校では、子供の個性を尊重しながら能力を最大限に引き出す教育を行うため、年齢に応じた授業カリキュラムが組まれています。
この中で子供たちは感情豊かな心を養い、自分の能力を伸ばしていくのです。
そして、子供が自身の能力を高められるようなきっかけ作りをすることが、教育者の責任であるとしています。
シュタイナー教育の内容
シュタイナー教育は、人間の成長期を7年単位で捉え、段階に応じた教育を実践しています。
成長期の段階は以下の通りです。
- 0~7歳:体を育てる期間「健康な体を作りながら意志の力を育む」
- 7~14歳:心を育てる期間「心を育てる期間」
- 14~21歳:頭を育てる期間「頭を育てる期間」
体・心・頭の順に育てることを重要視しており、バランスの取れた人間の形成を目指しています。
近年では早期教育が注目されていますが、シュタイナー教育では健康な体を作るための活動を行い、その中から意志を育むことを大切にしているのが特徴です。
シュタイナー教育で実際に行われること
シュタイナー教育で実際に行われることについて紹介します。
0~7歳まで
この時期は体作りをメインにしているため、7歳までは読み書きや計算などの知育授業を行いません。
自分の思った通りに体を動かすことで、意志の力を育んでいます。
他にも、クラスは縦割り制。
年齢差のある子供達はお互いを思いやる心や社会性を養っていきます。
また、出来るだけ刺激のない、穏やかな環境で過ごすことに重点が置かれており、キャラクターもの、テレビ、ビデオなど子供を刺激するものはありません。
幼稚園の環境は、ピンク色のカーテンを使用し、木製・綿・羊毛素材のおもちゃが揃えられ、子供が安心して活動できるような環境作りが行われています。
テーブルや椅子は木製、衣類は天然素材、オーガニックの食事など徹底している幼稚園があるのも、シュタイナー教育の特徴と言えるでしょう。
7歳以降のカリキュラム
シュタイナー教育では、 7歳からの12年間を通して一貫教育を行っています。
心を育てるためのカリキュラムが組まれており、子供達は工芸・手作業・自然体験を通して、様々な経験を積んでいくのです。
1~8年生の期間は同じ教師が担任を受け持つことで、子供の個性を理解し成長を見守りながら教育しています。
シュタイナー教育「エポック授業」とは
一般的な授業の他に「エポック授業」が7歳からスタートします。
これは、頭が最も活動的になる午前中の2時間に、1つの教科を数週間に渡って学習するという授業です。
1つの教科をじっくり学ぶことで理解を深めることを目的としています。
シュタイナー教育では教科書を使わない?
シュタイナー教育では、教科書を使わずに、教師独自のカリキュラムに沿って授業を行います。
子供達は授業の内容を自分自身の言葉で「エポックノート」にまとめていき、自分だけの教科書を完成させて創造力を培うのです。
他にも、独自のカリキュラムとして、「フォルメン」「オイリュトミー」があります。
たとえば、幾何学模様・直線・曲線を描く「フォルメン」。
細かい作業を行って指先の訓練や集中力を養います。
「オイリュトミー」では、流れる音楽に合わせて全身を動かし、図形や感情を自分なりに表現するカリキュラムです。
周囲の人との調和、美しい身振りの学習を目的としています。
シュタイナー教育にはテストがない
シュタイナー教育の学校にはテストがなく、点数で評価されることはありません。
ただし、教師が生徒の成長を記しています。
テストがなくても、自ら学びたいという自発性が育つのです。
また、シュタイナー学校には法的な学籍がありません。
そのため小中学校での学籍は、住所地の公立校になります。
高等部では高校卒業資格を得られないので、高校卒業認定試験を受験しなければいけません。
勿論、シュタイナーでは、試験に向けたサポートも行っています。
シュタイナー教育の実績
シュタイナー教育を受けて育った子どもは、大学進学の際、多くの生徒は、偏差値を判断基準にせず、自分が学びたいテーマに重点を置いて学部・大学を選択しています。
そして、シュタイナー教育を受けた生徒達は、AO入試などに強いと言われているのです。
たとえば、上智・駒沢大学などの有名私立大学。
桐朋学園芸術短期大学、クリエイター系専門学校、海外留学など多数の実績があります。
シュタイナー教育を学んだ有名人として、海外ではサンドラ・ブロック、作家ミヒャエル・エンデ、日本では俳優の斎藤工さん、村上虹郎さん、タレントの黒柳徹子さんなどがいます。
シュタイナー教育を行っている幼児教室
関東を中心に0歳から通える5つの幼児教室をご紹介します。
東京賢治シュタイナー学校 幼児部 たんぽぽこどもの園(〒190-0023 東京都立川市柴崎町6-20-37 )
対象年齢:3~6歳
0~3歳親子クラス「おひさまぽかぽかクラス」、2~3歳親子クラス「ネネムクラス」
説明会・見学会有り
上記で紹介した施設は全て、説明会や見学会があるので興味のある人は参加してみると良いでしょう。
自宅で行うシュタイナー教育
シュタイナー教育の理念では幼児期に体を育てることを重視していました。
そこで、この理念に則った教育を自宅で行える教育をご紹介します。
規則正しい生活のリズムを作る
早寝早起きの習慣をつける、毎日決まった時間に散歩するなど生活のリズムをつけましょう。
規則正しい生活が繰り返されることで、子供は安心感を覚えます。
規則正しい生活をリズムを作るのは、簡単ではありませんが、少しずつ取り入れていくことで効果が期待できます。
大人の真似をさせる
記憶する能力が未発達の幼児期は、口頭で教えても忘れてしまいます。
そこで、子供に覚えて欲しいことを大人が目の前でやって見せる、真似をさせるのです。
たとえば、一緒に片づける、歯磨きをする、美味しそうにご飯を食べるなどの行動を見せると、子供が真似をして自然に覚えていきます。
他にも、ゲームやおもちゃ中心の遊びは控えて、自然の中で過ごす楽しさを教えましょう。
花を眺めたり小石や木の実を拾って遊んだりする経験は創造力を育みます。
シュタイナー教育は、子どもを偏見にとらわれない自由な人間に育てる教育法
上記で説明した通り、シュタイナー教育は芸術性や創造性を育てる教育法。
一般的な教育よりも更に、子ども達の個性を尊重している印象を受けますね。
現在は保育園の中でも家庭でも「テレビ」「CD」「キャラクター」「スマホ」を多用しています。
悪いという訳ではありませんが、大人でも情報が多すぎる環境に疲れてしまったり、考える力が衰えていると感じてしまうことがありますよね。
情報過多である現在、シュタイナー教育のように、情報から離れていた方が、子どもの考える力、想像力が育つのかもしれません。
まだ日本では馴染みのないシュタイナー教育ですが、これからさらに日本で広がっていくと良いですね。
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