保育士の家賃補助。住宅手当や寮・社宅・宿舎借り上げ制度について詳しく解説

保育士の労働条件

今までは「保育士は一人暮らしができない」と言われてきました。理由は給料の低さです。

現在保育士として働いている人も感じているかもしれません。

しかし保育園によっては住宅手当などの手当が充実しているところも多くなってきています。

1人暮らしをする上で最大の負担が「家賃」です。それに対して手当がでるなら、保育士の一人暮らしも実現可能ですよね。

本記事では保育士の家賃補助について詳しく紹介します。

家賃補助とは?

家賃補助とは、保育士の住宅費用の全額または一部を保育園(事業主)が負担するというものです。

他業種であっても住宅手当を福利厚生として導入している会社や企業がありますよね。

住宅手当や寮・社宅に関しては福利厚生として以前から導入している保育園もあり、保育園独自で資金を出しているところ、また国や地位から補助金がでているところもあります。

そして保育士に関しては「保育士の待遇をもっとよくしよう」ということから、家賃補助に関して国が主体となって進めている政策です。

政策の正式名称は、保育士宿舎借り上げ支援事業と言います。

近年、待機児童の問題が深刻であると随分話題になっていますよね。

待機児童の問題を解決するにはまずは保育士の確保そして定着、離職を食い止めなければなりません。

「処遇改善」や「家賃補助」など様々な政策が進められているのは、そういった目的があるからなのです。

住宅手当

住宅手当とは、住宅費用を全額または一部を保育園(事業主)が負担するという福利厚生の一つです。

あくまでそれぞれの保育園の福利厚生の一環の為。

持ち家や貸家、配偶者の年収や子どもの数などの条件によって保育園が支給する金額が変わってきます。

他にも、実家暮らしで保育園に通っている人は住宅手当の対象外であることが多いです。

寮・社宅

寮や社宅というのは保育園(事業主)が保有しているアパートやマンションに、職員が住むというものです。

管理会社が管理している住宅ではないので、住宅の掃除やその他の管理などが住んでいる職員で当番制のようになっていることもあります。

共同キッチンであったり、古い建物の場合もありますが、最近は新しくて綺麗な寮や社宅もあります。

借り上げ社宅

借り上げ社宅とは、保育園(事業主)が不動産事業主や業者から賃貸住宅を借りて、それを職員に貸し出す住宅。

保育士が保育園に勤めるときに一人暮らしをしなくてはいけない状況の時に、保育園がこの借り上げ社宅の福利厚生を導入していると家を探す手間が省けます。

気に入った物件を選ぶことが一人暮らしの楽しみとしている人にはつまらないかもしれませんが、金銭面ではかなり助かるのではないでしょうか。

保育士宿舎借り上げ制度について

保育士業界の宿舎借り上げ制度は、平成28年頃から施行されている新しい制度です。

宿舎借り上げ制度とは、住宅手当と同じく保育園(事業主)が家賃に対する負担をしてくれる制度、これも福利厚生の一つです。

ただし住宅手当は給与として保育士に支払われますが、宿舎借り上げ制度は保育園(事業主)がアパートやマンションと契約し、保育士を通さずに家賃を払ってくれるものになります。

宿舎借り上げ制度を導入している保育園

そして宿舎借り上げ制度を導入している保育園の場合、以下の2種類があります。

宿舎借り上げ制度

  1. 社宅のように保育園(事業主)がマンションを購入している場合、そこに勤めこの福利厚生を利用している保育士は皆、そこに入居しなければいけない
  2. 自分で住みたい物件を指定して、保育園(事業主)に契約してもらい、そこへ入居する

※上記1の場合、実質自己負担ゼロの場合が殆ど

※上記2の場合、自分が選ぶ物件によっては自己負担が有り

宿舎借り上げ制度は国の政策なので国が保育園に支給し、保育園から保育士に支給されるという流れになっています。

保育士に給与としては1円も手元に入ってきませんが、最近ではこれを利用して転職している人が、実は沢山いるのです。

宿舎借り上げ制度の初期費用はいくら?

これから利用して転職を考えている人は、以下の初期費用は自己負担となる場合があることを覚えておきましょう。

初期費用

  • 敷金
  • 礼金
  • 仲介手数料
  • 保証金
  • 火災保険料

※礼金を含めてもOKという保育園もある

実質家賃の自己負担はないかもしれませんが「全てタダで住める」というわけではない、と思っておいた方が良いですね。

都道府県によって導入しているところ・していないところがあるので「自分がここで保育士をやりたい」と思っている地域のホームページで確認してみましょう。

家賃補助はどれくらい?いくらが相場なの?

家賃補助が出る場合「いくらだと多いのか」「いくらだと少ないのか」気になりますよね。

求人を見ても、家賃補助の相場を知らないと損をしてしまうかもしれません。

住宅手当と宿舎借り上げ制度の場合の相場をそれぞれ紹介します。

住宅手当

住宅手当の相場は5,000~20,000円程。

住宅手当は「家賃の〇%まで」「給与の△%」と支給額は保育園によって様々です。

条件にもよりますが、住宅手当として2万円も出す保育園はなかなか珍しいのではないでしょうか。

住宅手当は給与と合算されて、保育士に支給されるので収入とみなされ課税対象となります。

そして保育園によって独自のルールがあり、同棲していたり既婚者の場合は「世帯主の場合に限る」という条件の保育園も多いので注意が必要ですね。

住宅手当は保育士にとっては有難いものですが、保育園側にしてみると負担でしかないので、制限があります。

寮・社宅・借り上げ社宅の場合

寮や社宅の場合、家賃もタダ同然で借りられる可能性が高いです。

しかし場合によっては、多少の管理費などはかかることもあるでしょう。

一般的には個人で賃貸住宅を借りるよりも安く借りられることが多いので、出費が抑えられて一人暮らしをする人はかなり助かります。

宿舎借り上げ制度の場合

東京都や他の県でも8万程度が相場。

最近では、上限額が下がっている傾向にあります。

東京都内の一部の地域を抜粋した家賃補助の金額は以下の通りです。

東京都(区) 宿舎買い上げ制度の上限額
千代田区 13万円
渋谷区 10万円
江戸川区 8万2千円
港区 11万2千円

他にも埼玉県(月額上限8万円)、大阪府(8万2千円)など宿舎借り上げ制度を導入している保育園があります。

それぞれの家賃補助を比較してみよう

住宅手当と宿舎借り上げ制度とかどれがいいんだろう。お金の負担が減るならどれでもいいかなとも思うんだけど。

その考え、甘いよ。5年後、10年後の自分を考えなくちゃ。

「お金の負担が減る方が良い」というのは皆さんが望むことでしょう。

しかしお金のことだけで考えると、違うことで悩まされることがあるかもしれません。

住宅手当、借り上げ制度それぞれの特徴をあげながら、どちらが良いのか考えてみましょう。

住宅手当の場合

住宅手当のメリット・デメリットは以下の通りです。

住宅手当のメリット

メリットは以下の通りです。

  • 1、2割でも給与が増えるため生活が楽になる
  • 比較的に安定して支給され続ける可能性が高い
  • 土地も含め、自分の好きな物件を選べる

長期的に支給してもらえるというのは、かなり助かりますよね。

住宅手当のデメリット

デメリットは以下の通りです。

  • 金額が少ない
  • 結婚するともらえない可能性が高い
  • 敷金・礼金は自分で支払い

住宅手当は先ほども触れたように課税対象になってしまうので、手元に入る金額が少なくなってしまいます。

平均月収で支出を計算すると

東京都杉並区で保育士として働きながら一人暮らしをすると仮定します。

厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査から算出した保育士20~24歳の平均月収で支出を計算してみましょう。

住宅手当(支給額1万円)の場合、以下の通りです。

家賃補助あり 家賃補助なし
月収 20万6千円 20万6千円
家賃 9万円 9万円
家賃補助 1万円 0円
手元に残る残高 12万6千円 11万6千円

「1万円あっても差ほど変わりないじゃん」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、年間にした場合12万円。

5年分で考えると、25万円の負担と考えたら十分な額ですよね。

寮・社宅・借り上げ社宅の場合

借り上げ制度のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

寮・社宅・宿舎借り上げ制度のメリットは、以下の通りです。

  • 家賃補助の金額が大きく、場合によっては自己負担ゼロ
  • 毎月手元に残る給与が多いため生活に余裕がある
  • 税金がかからない
  • 家賃の負担がない間に貯金ができる
  • 保育園にずっと勤めるのならかなりの好条件
  • 入居時に敷金・礼金がかからない

金額の負担が大きい、場合によっては自己負担ゼロで家が借りられるのが最大のメリットですね。

デメリット

寮・社宅・宿舎借り上げ制度のデメリットは、以下の通りです。

  • 場合によっては自分で物件を選べない
  • 同僚に私生活がバレる
  • 周りに同僚ばかりでプライベートがない可能性も・・・
  • 震災や台風、豪雪時早番や遅番を交代する可能性が高い
  • 休日保育も優先的に出勤という可能性もある
  • 辞めた時に家賃どうする問題、退職時の手続きが面倒くさい
  • 家賃補助が減額になった場合の自己負担額の激増などの不安
  • 寮・社宅の場合、管理を任せられて仕事が増える

メリットも大きい分、デメリットも人によっては「ちょっと嫌だな」と感じるようなものがあります。

平均月収で支出を計算すると

住宅手当と同様、東京都杉並区で保育士として働きながら一人暮らしをすると仮定します。

宿舎借り上げ制度(支給額8万2千円)の場合、以下の通りです。

家賃補助あり 家賃補助なし
月収 20万6千円 20万6千円
家賃 9万円 9万円
家賃補助 8万2千円 0円
手元に残る残高 19万8千円 11万6千円

手元に残る残高では一目瞭然ですね。

この場合の家賃補助ありで計算すると手元に残る残高は年間237万6千円。す。

一方家賃補助なしの場合で計算すると手元に残る残高は年間139万2千円なので、その差は約100万円違うことになります。

宿舎借り上げ制度は、上記の表で言うと毎月約29万円の収入があったということになり、年間の収入額約345万円(+ボーナス)としてみなされるので、翌年の税金がかなり高くなるという欠点です。

結局どれが良いの?

個人の状況によってどれが適しているのか、どれが良いのかというのは変わってきます。

金銭面で余裕がある人なら、災害時に勤務交代をする負担やプラべートが守られているという点では住宅手当を選ぶと良いでしょう。

金銭面的に余裕がなく、職場の同僚に私生活を知られることに対して抵抗がないという人なら、寮や社宅を利用するとかなりお金が浮くので良いですよね。

他にも宿舎借り上げ制度の場合は、上記でも触れた通り「ずっとその保育園に勤められる」なら、かなり条件が良いです。

ちなみに、筆者は住宅手当が良いと思います。

理由は先ほど触れた通り、家にいても「隣の部屋に先輩がいる」と思うと気が休まりませんし、たとえ仲が良かったとしても「昨日友達遊びに来てたんだ~」など私生活の干渉をされるのが嫌です。

家が近いからといって勤務を交代しなければならないかもしれない、というのも自分の予定が狂ってしまうのが負担になります。

必ずしも上記のようなデメリットがあるとは限りませんが、自己負担の額は上がっても家では仕事の事を考えず、のんびりしたいと思う派ですね。

お金の部分を重要視するのも当然のことなのですが、条件と自分を照らし合わせ、将来をよく考えてかしこく選びましょう。

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同棲や既婚者の場合はどうなる?もらえる条件Q&A

「住宅手当 いくら」って調べても「〇万円」って出てくるわけじゃないし、「同棲おっけー」とか書いてないから色々わからない。

国でさえ財源を確保して一定額を支給するの難しいんだから、保育園となるとさらに難しいんだろうね。

あいまいなことが多いこの家賃補助については、明確な回答をすることが難しいです。

ピンポイントで「〇〇県の△保育園のことが知りたい」などはっきりとした答えが知りたいのであれば、保育園や自治体に直接確認してみてください。

ここでは全体的な傾向から、質問に答えていきます。

非正社員やパートは家賃補助をもらえないのですか

常勤保育士と規定しているところがほとんどなので、パートの場合はもらえないと思っていた方が良いでしょう。

そして住宅手当、宿舎借り上げ制度共に常勤保育士の中でも正社員保育士が対象とされている場合が多いです。

たとえば、宿舎借り上げ制度は国・保育園で資金を出していますが、東京都内を例に挙げるとその額は8万2千円。

これを毎月支給しなくてはいけないので、国も保育園もかなりの負担になっています。

非正社員やパートの分まで支給するのは現実的に無理なのです。

とはいえ非正社員であっても常勤保育士と変わりない働きをしているのですから、ここは改善してほしい点でもありますよね。

同棲、既婚者の場合の家賃補助はどうなりますか

住宅手当は、保育園によって独自のルールがあり、同棲していたり既婚者の場合は必ず支給されると言い切ることができません。

理由としては「世帯主である場合に限る」という条件がある場合も多く、夫婦の場合は夫の年収によって支給額が減額されたり、支給されないことも珍しくないからです。

同棲していても保育士である本人が正社員保育士で世帯主の場合なら、支給される可能性は高くなります。

宿舎借り上げ制度なら、自治体によって条件が異なりますが同棲や既婚者であっても家賃補助が適応される場合が多いです。

他にもルームシェアなどでも「保育士が住んでいれば」家賃補助を出してくれる保育園もあります。

認可保育園でも認可外保育園でも家賃補助はありますか

住宅手当や社宅。寮の有無はそれぞれの保育園次第なので、認可保育園か認可外保育園かは関係ありません。

しかし宿舎借り上げ制度に関しては自治体の多くが対象施設を認可保育園と定めているので、保育園を選ぶ際には認可保育園をチェックした方が良いですね。

※東京都が独自の制度で定めている認証保育園では家賃補助がある

勤続年数は家賃補助に関係ありますか

住宅手当の場合、正社員保育士なら「1年目から支給」という保育園もあるでしょう。

寮や社宅の場合、「○歳まで」「○年まで」と制限があるので、求人や面接の際に詳しいことを質問しておいた方が良いですね。

宿舎借り上げ制度の場合採用されてから10年以内の常勤保育士と平成29年に条件が緩和されています。

しかし自治体や保育園によって独自のルールがあるので、注意しなくてはいけません。

宿舎借り上げ制度はいつまで続きますか、なくなるのですか

宿舎借り上げ制度の負担金額は、永久的に変わらないという訳ではありません。

保育園の経営状況によっては財源が確保できなくなれば、なくなってしまうでしょう。

宿舎借り上げ制度は、たとえば世田谷区は2021年3月までと時限的に実施。

他にも、埼玉県さいたま市では、同一人の継続利用は5年までと定めています。

そして、さいたま市でも、この政策については「令和2年に見直す場合がある」と市のホームページにも記載されているのです。

全く補助がなくなるということはないかもしれませんが、補助額の下げることは可能性としてかなり高いでしょう。

たとえば今は8万円程負担がしてもらえますが、いずれその半額になることなどもあるかもしれません。

そのため様々なケースを想定して無理のない範囲で家を借り、最新の情報にアンテナを張りつつ補助の金額が大きいうちは堅実に貯金をしておく方が良いですね。

まとめ

一人暮らしをしていると、家賃補助があると助かりますよね。

もともと保育士の給与が高ければ、なくても良い福利厚生ですが、まだまだ地域によっても格差が激しいのも事実です。

最近では「正社員」で雇ってもらえることも難しいので、この住宅手当などの恩恵を受ける人も限られています。

また上記でも紹介した「宿舎借り上げ制度」ですが、先々のことはわかりませんから補助を極端にあてにせず「補助がなくなった場合の自分の生活」というのも、考えておかなくてはいけません。

日頃から貯金をしたり、先々のことを考えた選択を心がけましょう。

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